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さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

福田くんってさ。【9】

ジャニーズ 妄想 長編


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世の中っていうのは何が起こるか分からない。


男からの性の対象に無縁だと思っていた私が
金持ちのクソ野郎に好まれ
公園で無理やり犯されそうになるんだから。

そしてムカつくくらい嫌いだった人に助けられて、
その人に恋をしたというのだから。


本当に世の中というのは何が起こるか分からない。





『……ッんぬぁ!!!』

『うわぁぁあッッッ!!!!』


休憩室でいきなり叫んだ私の声に
後輩くんも叫ぶ。


『…なんすかもぉ〜
ビックリさせないで下さいよぉ…』

『ああ。ゴメンゴメン…』


心がこもってない謝罪を後輩くんにする。

最近の私はどうもおかしい。
ふとした瞬間にあの時の福田くんの顔が
フラッシュバックして叫んでしまうのだ。

ケーキの箱を手にした私の髪にかかった大きな手。
見上げた先にあった綺麗な瞳。
まっすぐ私に向けられた視線。


『…ッびゃぁあッ!!!』

『うわぁぁあッッッ!!!』


また叫んだ私に、また叫ぶ後輩くん。


『ちょっと!!○○さん!!!』


ここんとこずっとこんな感じ。
完全におかしい奴なんだけど
本当にあの時の福田くんが頭から離れない。

私はプリプリ怒る後輩くんにもう一度
ごめんね、と言いながらもなお、

やっぱりずっと福田くんのことを思い出してた。

吸い込まれそうだった。
いつも目尻しわくちゃにして笑ってるくせに
芯がしっかりした目してて、


福田くんって…よく見ると
瞳ちょっと茶色いんだなぁ…


『…ッぴょぉお!!!』

『うるせぇぇ!!!!』


後輩くんの怒鳴り声が部屋中に響いた。





『てんちょー。』

『ハイハイ、どうしたの?』


キッチンに入って中で仕込みをする店長に声をかける。

ちょっと言いにくいけど
見えない世界を見るために、飛び込むんだ。


『…急で申し訳ないんですけど、
今月いっぱいでバイト辞めさせて欲しいんです』


店長が目を見開いて私を見る。


『嘘、でしょ?』

『嘘じゃないです…』

『○○ちゃん辞めちゃったらお店回んないよ』

『大袈裟ですよ…』

『…そっかぁぁ〜』


残念そうにそう言ってくれる店長。
自分がここまで必要とされていた事実に嬉しくなる。


『就職決まったんです』

『ついに!』

『はい』

『おめでとう!』

『ありがとうございます。
本当に…急になってしまってすみません…』


ペコリと頭を下げた私の肩を一度だけ叩いて。


しっかりやれよ


と言ってくれた店長の顔は
お父さんのような柔らかさを感じさせた。


来月のシフト作る前に言えてよかった〜
そう思いながら振り返ると、


『…ッッ…』


口元を両手で押さえながら
内股に立ってブルブル震える後輩くんがいた。
なんだかオネエみたい。


『あれ?いたんだ。』


まだ休憩室にいると思ってたのに。
いつの間にこっちに来てたんだか。


『え、嘘っすよね?辞めるとか…ッ
え、え、いやだ!』


みんなして嘘だ嘘だって。
私はそんなに軽々しく嘘なんてつかないぞ。


『嘘じゃないよ』

『なんで?なんで?え?
俺がさっき怒鳴っちゃったからですか?』

『そんなわけないじゃん(笑)』

『いやだ!!!絶対いやだ!!!!』


大きな声を出したかと思ったら肩を掴まれた。


『やだよう!やだよう!俺、○○さんの事
女としては見れないけど大好きだったよう!!
離れ離れはやだよう!!!』


喜んでいいのかどうなのか微妙な言葉を
叫んだ後輩くんはなぜかガチで泣き始めた。

後輩くんを弟のように思っていた私も
彼と一緒にバイトするのはもちろん楽しかったし
“離れ離れ”という言葉に悲しくなる。

まぁ、それでも彼の言う通り私も彼の事を
男しては見れないんだけど。


『可愛いなぁ、お前は』


後輩くんの素直すぎる言葉に
ほっこりした気持ちになっていると


『○○さんいないとか古株俺しかいなくなる…
俺若い子と話せない…若さが怖い…』


と、あ。これが本音か。
的なことをぼそりと言った。


『君がこれからこの店のトップに立って
みんなを引っ張ってる行くんだぞ』


ウケ狙いでそう言ったのに


『…はい』


力強く答えられて逆に何も言えなくなった。


その後も出勤してくる人たちみんなに
今月いっぱいで辞めることを伝えて
みんなにお仕事頑張ってね、
って言ってもらえてここにもちゃんと
自分の居場所があったんだなぁって実感した。






『あら〜○○ちゃん辞めちゃうの?
じゃあお得意様寂しがるわねぇ!』


パートのおばちゃんにそう言われた時に
ピタッと動きが止まった。


『…はい?』

『お得意様いるじゃない!○○ちゃんのこと
すごい気に入ってるお金持ちの!』


そんな説明いらない。
分かっている。シャアの事だ。
でもなんでこのおばちゃんがそんな事を…?


『この間お店に来た時自慢してたのよぉ
○○ちゃんと昨日ご飯行ったんですって!』


あ、福田くんが妙にピリピリしてて
気をつけてって言ってきたあの日か。


『2人でご飯行くなんて!やるわねぇ!』


何が楽しいのか肘で私を突っついてくる。


しかも2人じゃねぇし…
店長もいたから3人だし…


『仕事の時とは違って彼の前では
駄々っ子なんだって?
それも可愛いって言ってたわよ!』


心底寒気がする…


『いやぁ、あのですね…』

『て言うか○○ちゃん!
誕生日祝ってもらえたんでしょう?
祝いたいから最寄りの駅教えて欲しいって
言われたのよ〜〜も〜愛されてるわねぇ!』


否定の言葉を口にしようとした瞬間に
食い気味にとんでもない事を言われた。


『…は?』

『いいわねぇ、誕生日祝ってもらえるなんて!
おばちゃん○○ちゃんの恋応援するからね!』


…てめぇかコラ。


それだけ言ってスッキリしたのか
ルンルンで裏にはけてくおばちゃん。


お前のせいでこっちはどれだけ
怖い思いしたと思ったんだ。
まじふざけんな。何勘違いしてんだよババア。


メラメラ怒りに燃えていると、
後ろから後輩くんが


『顔コワーーーイwww』


って言いながら駆け抜けていって
自分の熱量が一気に冷めてなんだか
アホらしくなったから少し感謝した。

今さらどうすることもできないし、
福田くんが助けてくれたし。






『店長、お得意様にまた何か言われてたりします?』


っていうかあれから何日が経つけど
シャアの野郎一回もお店来ないな…
私からしたら有難いけど、
お店に来たらけちょんけちょんに
してやろうと思ってたから少し拍子抜け。


あいつのしたことは絶対に許せないし
許す気もないけれど、
あの日からあまりに何もないから
気になって店長に聞いてみた。


『ん?いや、特には…』

『そうですかー』

『噂によればベトナム?とかその辺に
飛ばされたって話だけど…』

『え!?ベトナム!?』

『この間お得意様の後輩くんたちが
お店に来ててさ〜話してるの聞こえたんだよね』

『ほぇ…』

『まぁ、あくまで噂の話だけどね』


あいつが遠くに飛ばされるのは
すごく嬉しい話だけど…

確かあの人って仕事はめっちゃ出来るって
聞いたことがある。
異例のスピード出世した高学歴エリートだって。

それはあの人本人が自慢してたのはもちろんだけど
本当にそうらしくて人は見かけによらないな
と思ったことも覚えてる。
こんな人間が会社からは
めちゃくちゃ頼りにされてるんだって。


なのになんでそんな急に海外転勤?


なんだか私はいろんな事が
引っかかる気がしてならなかった。





***





『じゃあ明日から、よろしくね』


たくさんの拍手の音の真ん中に私は立っていた。
手にはあの、正社員だけが首から掛けられる社員証。


アキラさんから渡されたそれを両手で受け取り
まじまじと見つめた。
本格的に明日から正社員として
この会社に出勤するのだ。


『明日から…改めてお世話になります!』


深々と頭を下げると、
拍手の音がより一層大きくなった。
頭を上げると、姐さんが誰よりも1番
大きく拍手してくれているのが見えた。









家に帰ってきてぼーっとテレビを見てると、
ケータイが鳴った。


『もしもし』

『お疲れ様〜』

『福田くんもお疲れさま』


最近は毎日かかってくる福田くんからの電話。

福田くんが誕生日をやり直してくれたあの日、
自分の気持ちを認めてどんな風に
福田くんと話せばいいんだろって
一瞬悩んだけど、
次の日の夜に福田くんからかかってきた電話で
そんな悩みは吹っ飛んだ。

いつもと変わらず柔らかい声で
たわいもない話。

変わったことといえば私が電話を切った後に
ベッドにダイブして悶絶するようになったことくらい。

電話の向こうの福田くんは
何1つ変わらなかった。


『明日からだね』


何かを飲みながら話し始める福田くん。
まぁ、きっと彼のことだからお酒。


『ちょっと緊張する』

『長年バイトしてたのに?』

『バイトとは訳が違う気がして』

『まぁそうかもね』

『うん』

『そっかーこれからあのお店に飲みに行っても
○○いねーのかぁー』


この間送別会をしてくれた居酒屋。
福田くんがあのお店にケータイ忘れなかったら
今頃の私は何しているんだろう。


『そういう事になりますね』

『それはちょっと寂しいなぁ』


福田くんはそう言ってまたゴクリと喉を鳴らした。


『あ、そうそう!福田くん!』

『んぉ?』

『前に話してた社員証!今日もらったの!』

『おお!おめでとう』


ありがとう、とお礼を返す。


『顔写真が盛れた(笑)』

『見せてみろよ(笑)』


福田くんが吹き出しながらそう言った。


『残念〜電話だもん。見せらんないよ』


勝ち誇ったように言うと、
福田くんは何かを閃いたように話し出した。


『じゃあ今から公園集合!!!』

『え?』

『駅前の!』

『え、いや…ちょっ』

『じゃあなー』


切れる電話。
通話終了の画面を眺めてしばらくしてから
私はやっと爆笑し始めた。


『急すぎ…』


ニヤける口元を押さえながら
準備をして、すぐに家を出た。








公園まで歩いて行くと、
ブランコに乗ってる人影が見えた。

初めてここでケータイを受け渡しした時の事を
思い出しながら公園に足を踏み入れた。


『福田くん!』


声をかけると、ブランコからピョンと飛び降りて


『正社員昇格おめでとーー!!!』


両手を広げてそう叫ぶ福田くんの元に
全力で走って、スピードを緩めずに
そのまま思いっきり抱き付いた。


『ゴフゥッ!!!』


漫画のようなリアクションをしながら
福田くんは私を受け止めた。
飛び込んだ私の体を1度だけ
ギュッとしてから優しく離す。


『加減を知れ、加減を。』


まんざらでも無さそうにそう言った彼は
ベンチに置いてあった缶ビールを1つ私に渡してきた。


『はいおめでと〜カンパーイ〜』


プシュッと缶ビールを開ける音が聞こえたと思ったら
ベンチに座って飲みだす福田くん。


『お祝いだから俺のおごりね』

『福田くんが飲みたいだけじゃん』

『まぁそんなこと言わず飲みなさいな』

『チューハイが良かった』

『そんな可愛いお酒福田家にはありません』


ケタケタ笑いながらビールを喉に流し込む
福田くんの隣に座って自分も飲んでみる。


『苦いっ』

『お子ちゃまだな』

『すぐ酔いそう…』

『ベロンベロンになるくらい飲もう』

『嫌だよ』

『で○○は二日酔いで初日から欠勤!』

『ゲロ吐きながらでも出社するわ』

『俺は嫌だなゲロ吐きながら出社するような女』

『ムカつくなぁ(笑)』


結局最初の一口飲んでから
やっぱりアルコールが強くて飲めなかった
私の缶ビールを自分の分を飲み終わった福田くんが
ヒョイと私の手から強奪して飲み始めた。


…お祝いじゃなかったんかい。


『…あ、そうだ。』


ふと思い出した事を福田くんに聞いてみる。


『あの、お得意様って…』


その名前を口にした瞬間に
福田くんの眉毛がピクッと動いた。


『あいつが、何?』


彼の雰囲気が一変する。


『いや…あの私は全然気にしてないんだけど
店長が最近お店来ないねって言ってて…』


少しだけ嘘をついた。
店長…使ってごめん。


『あの人ならもうとっくに海外飛ばされたよ』


…やっぱり!
店長の言ってたことは本当だった。


『え…なんで?』


初めて聞いた風を装って問いかける。


『さぁ〜〜何でだろうねぇ〜〜』

『福田くん何か知ってるの?』

『うん?』

『知ってるの!?』


理由を知ってそうな福田くんに
思わず前のめりになる。


『まぁいいじゃん、あんな奴』

『良くないよ!』

『うるさい。俺あいつマジ嫌いなの。』


ちょっと本気でキレたから
それ以上聞けなかった。

悶々しながら福田くんの
ビールを飲み込む音だけ聞いた。



微妙な空気が少し流れていたら、


『てか社員証見せてよ』


福田くんが口を開いた。

そうだった。
本来の目的を思い出してポケットからそれを出して
福田くんの前に出した。


『ね?盛れてるでしょ?』


名前の隣にある顔写真を指差しながら言う。

私の手から社員証を取った福田くんの指が
軽く触れてドキッとした。


『…詐欺だな』


そう言いながら私の方を見て笑った福田くんに
少し安心した。

…怒ってる福田くん、怖くて苦手。



社員証を眺めていた福田くんが


『記念写真撮っとこうか』


そう言い出して、

ぱーんぱーんぱぱーんぱーん

授与式で有名なあの歌を口ずさみながら
メダル授与のように私の首にそれを掛けた。


『はい、笑って〜』


何故か写メるのか分からなかったけど
とりあえずドヤ顔でピースしといた。


『俺の会社よりカッケーな社員証…』


なんだかブツブツ言っていた。


手の中にある社員証を見つめる。
これが今私の手にあること、
今の私があるのは紛れもなくこの人の、
福田くんのおかげ。


『福田くん、ありがとうね』

『ん?』

『私、頑張るね』

『おう』

『空から見守っててね、福田くん』

『俺は死んでねぇぞ』


笑いながら私の髪を撫でる福田くん。


『よし、帰るか!』


そう言って当たり前のように
私の家の方向へ歩き出す。

家まで送ってくれる途中でも
写真が詐欺だって何回も言われた。


アパートの前でもう一度
髪を撫でられてから別れた。


部屋に入って、もうこみ上げる気持ちに
どうしていいか分からなくて
部屋の中を無駄にウロウロした。

そして、1つ決意する。



『今度会ったら…好きって言おう…』



福田くんへ、この気持ちを伝えたくて仕方なかった。





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