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さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

福田くんってさ。【10】

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福田くんに告白しようと決めて2週間が経った。

相変わらず福田くんからの電話は
毎日かかってくるんだけど


『…ねむい…』

『大丈夫…?』


最近の福田くんはなんだかとてもお疲れ。


『…寝ます』

『うん、おやすみ』

『おやすみ〜』


こんな感じで二言くらい話して
すぐ電話は切れる。

なら最初から電話して来なくていいのに
って思うんだけどそれを言えないのは
私が福田くんの声を毎日聞きたいから。


福田くんがこんなに仕事で疲れているところを
初めて目の当たりにして、


“話があるから会いたい”


とはなんとなく言いにくかった。


『…早く言いたいのになぁ』


通話終了を伝えるケータイ画面を見つめながら
1人でつぶやく。

今まで彼氏がいたことはあるけど
どこかで冷めてるところがある私は
向こうから告白されて付き合う事が多かった。

だからこんなに人に想いを伝えたがってる
自分に本人の私が1番驚いていた。








“今日○○の会社の近くに仕事で行くから
昼飯一緒に食わない?”


あんなに忙しそうにしていた
福田くんから朝一そんなメッセージが来た。


いつも電話だったから
メッセージに表示された福田くんが打った文は
なんだか新鮮だった。


“食べたい!”


意気揚々と返事をする。


“じゃああのファミレスで待ち合わせね”


了解の返事をして口元を抑える。
ニヤニヤが止まらない。


“あのファミレス”だって…


きっと福田くんが言っているのは
福田くんが私を気遣って
一緒に時間つぶししてくれたファミレスの事。


…なんか、お昼休みに待ち合わせるとか
本物の恋人同士みたいじゃない…?


テンションがブチ上がった私は
スキップ気味にオフィスまで歩いて行った。






『○○ちゃん!』


デスクに着くと、正社員になっても
可愛がってくれている姐さんに声をかけられた。


『今日、お昼外行かない?』

『おお!ランチですか?』

『そうそう!どう?』

『…すごく行きたいんですけどごめんなさい…』

『あれ?先約?珍しいわね』

『はい、ちょっと』

『そう……楽しんでおいでね♡』


勘の鋭い姐さんだから
何かを感じ取られたかもしれない。
最後のハートが意味深…


『は、はい…(笑)』

『女は笑顔よ♡』


あ、こりゃ完全にバレてるな。

曖昧に笑って誤魔化す。

ちょっと恥ずかしい気持ちになるけれど
福田くんに久しぶりに会える嬉しさに
口元はまたニヤけるだけだった。





迎えたお昼休み。

姐さんが気を利かせて
早めにお昼に入らせてくれた。

後でちゃんと姐さんには
福田くんのこと話さなきゃな…。

心の中で姐さんに深くお礼をして
化粧室に向かった。


化粧室の鏡に自分を映して
普段全く塗らないグロスを唇に乗せた。

今はもうすっかり治った左頬に触れる。


『真っ昼間にファミレスで告白って…
アリなのかな?』


素朴な疑問が頭をよぎったけど
まぁ私らしいかな、と
意味不明な言葉で無理やり納得して
私は“あのファミレス”へと向かった。



お昼真っ只中のファミレスは混んでいて
お店の中に入って少しキョロキョロしていると
ふとこっちへ向けられる視線を感じた。

目が合うとその人は
眉毛を垂らしながら笑って、手を振った。


『お待たせ福田くん!』


小走りに駆け寄って向かいのソファに腰掛けた。


『お疲れさん』

『福田くんもお疲れさん』


福田くんがメニューを渡してくる。


『福田くんもう決まったの?』

『決まった〜』

『早いねぇ』


目の前に座る福田くんを
メニューを見てるフリしてチラチラ盗み見する。


…ヤバい…
めっちゃカッコいい…


恋は盲目。
と、人はよく言うけれど本当にそうだと思った。

だって目の前で水飲んでるだけで
カッコいいと思うんだもん。

よく分かんない歌うたい出しても
カッコいいと思うんだもん。

これはもう完全に盲目。


『わ、私オムライス…ッ』

『なんでメニュー決めるだけなのに
声裏返ってんの?(笑)』


私からメニューを受け取って元の位置に
戻す福田くんに笑われる。


…私こんなんで本当に告白なんて出来るの…?


『で、仕事の調子はどうですか?』


優しく訪ねてくる福田くんに自然と笑顔になる。


『楽しい!』

『おぉ、』

『大変だけどすごい楽しい!』

『そりゃ良かった』

『でも今まで働きまくってたから
家帰ってから時間が有り余って意外と暇(笑)』


私の言葉に福田くんが盛大に笑う。


『暇なら呼んでよ』


サラッと言ってくる福田くんに
またキュンキュンする。


やめてー!!!
これ以上好きにさせないでー!!!


心で叫んでみるけど
そんなの福田くんに伝わるわけもなく


『飯くらい連れてくのに』


もう私は福田くんに殺されるんじゃないかと
思うくらい心臓がうるさかった。


運ばれてきた料理を食べながらも
福田くんがずっと話しかけてきてくれた。

ここ最近電話でも全然話せなかったから
福田くんと話すのが楽しくて楽しくて
夢中になりながら福田くんに色んなことを話した。


『ていうかさ、
掛け持ちしてたバイトって3つだよね?』

『うん、3つ』

『今の職場と居酒屋と、何?』

『え、言ってなかったっけ?』

『ウン』

『お花屋さん』

『花屋!?』

『臨時だったんだけどね。
イベントとか式典とかの会場に
お花飾ったり運んだりするときだけ。
人手が足りないからって』

『なるほどね』

『だからたまにしか行ってない』

『ほぉ』


人に聞いといて
あんまり興味なさそうな福田くんは
何故かまた、


『社員証見せてよ』


と、半笑いで言い出したので
オフィスビルを出る際に首から外して
ポケットに入れていた社員証を
そこから取り出して彼に渡した。


『やっぱり詐欺だなぁ(笑)』


この間と同じように私と
その写真に写る私を見比べて笑う。

福田くんのその笑顔を見ながら
改めて私の今日の目的を思い出す。

本当に話したい事があるのに、なかなか話せない。
ずっとその話の周辺をウロウロしているだけ。


今ここで
“あなたが好きです”
と伝えたら、彼はどんな顔をするのだろう。


そう思っていた時、
いきなり高い声が聞こえた。


『悠太!やっと見つけた!』


声がした方を向くと、そこには
とんでもない美人が立っていた。


『おお、ビックリした』


驚く福田くんをよそに、
彼女はなんのためらいもなく
福田くんの隣に腰を下ろした。

美人というのは髪の毛の先まで
美人に出来ているもの。
綺麗に巻かれた髪がふわりと揺れた。


『課長に聞いたの。外出かけたって。
一緒にご飯食べようと思ってたのに。
あちこち探しちゃったじゃない!』

『いや、俺今日外で食べるって
最初から言ってたじゃん』

『あら、そうだっけ?
聞いてなかったから知らない』

『いや、言ったから』

『聞いてないわよ』


彼女は口を尖らせながらそう応えて、
私の方を見た。


『…誰?』


100歩譲っても完全に感じが悪い。

どんなに綺麗に繕っても、
目は1番人の感情を表すもの。
彼女の私に向ける目は
どう見ても敵意むき出しだった。


『ケータイ誘拐犯』


福田くんがクッソ懐かしいワードを口にするから
思わず吹き出した。
そして吹き出した私を見て
福田くんが満足そうに笑う。


それがつまらなかったのか、
彼女はグッと福田くんに体を寄せた。


『ねぇ、悠太。何食べてるの?』


そう言って彼女はお皿を覗き込みながら
福田くんの飲み物を手にすると、
当たり前かのようにそれを飲んだ。


『人の飲むなよ』


それを見た福田くんはそう言うけれど
決して怒っている訳ではない。
今更そういうことを気にしてない雰囲気だった。

彼女は福田くんに飲み物を返すと、
私に視線を戻しゆっくりと微笑んだ。


『なんの話ししてたの?どうぞ続けて』


当たり前のように福田くんに身を寄せて、
当たり前のように福田くんの飲み物を口にして、

自分と福田くんの関係性を私に見せつけて
アピールしてきた彼女を目の前に
私は何も出来ずひたすらに口を閉ざすしかなかった。


『…悠太、それ何?』


続けてと言っておきながら結局自分で話し出す彼女が
福田くんの手にある私の社員証を
指差しながら言う。


『ん?これ?これは…』

『か、返して!!』


説明しようとした福田くんの声を
大きな声で制した。

見られたくない。この人に。


福田くんが私の目の前に
社員証を差し出して来る。

それを少し乱暴に取る。


『ごめん!私仕事残してたんだった!
先に行くね!』


いきなりそう言って立ち上がった
私を見つめる福田くんの視線も
彼女の視線も痛いほど感じる。

でもそれ以上にこの場の居心地の悪さに
逃げたくて仕方なかった。


『ごめんね!バタバタしちゃって!』


持ってきた財布から千円札を2枚抜き取って
テーブルに置いた。


『失礼します、』


ペコっと頭を下げる。

後ろから福田くんの声が聞こえたけど
聞こえないふりをして外に飛び出した。

福田くんが追いかけてきてくれないか期待したけど
そんな都合のいい事があるはずもなく、
私は1人で仕事場へと歩き出した。





オフィスのある階に着いてすぐにトイレに入った。

ハンカチで唇をゴシゴシと擦って
グロスを落とした。

今更こんな事したところで
こんなもの塗ったところで
そんなのただの気休めに過ぎない。

でもあの人は違う。
私みたいに今日だけのグロスじゃない。

あんなに綺麗に髪を巻いて
化粧をして爪もピンクのネイルして
すごく細いのに胸は大っきくて


自分は何を勘違いしていたんだろう。

福田くんの周りにはあんなに綺麗な人がいるのに。
自分が1番福田くんに近いとか、
福田くんと仲良くしてるとか、


『…私…ばっかみたい…ッ』


惨めでどうしようもない自分に
心の底から嫌気がさした。





外にお昼を食べに出かけた割には
早く帰ってきた私に
姐さんは少し不思議そうな顔をしていたけど
特に何も言わずにおかえりと声をかけてくれた。


姐さんの優しさに少しだけ
気持ちに明るさを取り戻して
ひたすらに仕事に没頭した。

私に向ける彼女の視線を
思い出さなくていいように。

あの時の2人の距離の近さを
思い出さなくていいように。


パソコンに向かって必死に仕事をこなす私は
チカチカと光るケータイに気づかなかった。






どんな事があったとしても
時間は進むもので、
外を見るとすっかり日が暮れていた。

IDカードで、退勤を押してビルから出る。

駅まで歩き出しながらバックの中に手を突っ込んで
ケータイを手に取ると、後ろから声をかけられた。


『すみません』

『…?』


振り返るとそこには、
昼間ファミレスで会ったあの美人が立っていた。


『昼間はどうも』

『…』

『○○さん、ですよね?』

『…は、い…』

『私、悠太と同じ会社の同期なんですけど…』


そう言って彼女は自分の名前を口にすると
ゆっくりとお辞儀をした。


なんでここにいるの…
もう何も考えたくなかったのに…


目を見開く私の目の前まで
ヒールをカツカツならしながら
歩いてきた彼女に息が詰まりそうになる。


『少しお時間いいですか?』

『……』


いきなりのことに何を言われたのか
全然分からなくて立ちすくむ私に
イライラし出す彼女。


『…ねぇ、聞こえてんの?』


福田くんがいた時とは別人のような
すごく怖い顔をして腕を組みながら聞いてくる。


『…あ、あの…』


口ごもる私に


『私あんたの事嫌い』


ハッキリとそう言った。


カバンを抱きしめて俯く私に
彼女は容赦なく言葉を続ける。


『あんた知ってる?うちの会社で
とある部署の先輩が海外に飛ばされた話。』


彼女の口から出たシャアの名前に
思わず目線を上げた。


『悠太がそうしたのよ。
どっかの誰かさんの為に』


どっかの誰かさん。
それが私と分かるのにそう時間はかからなかった。


『なんで悠太があんたのために
あそこまでやらなきゃいけないのよ…』

『…』


彼女の声に力が入る。


『あの時の悠太、見てらんなかった。
色んな人に話聞きまわって、たくさん頭下げて。

海外転勤決まったってなっても、
悠太、周りからいろいろ言われて…
悪者扱いされて…。

なのに悠太、悪者でいいって笑うんだもの…
俺がしたくてした事だからって…ッ』


彼女が私をきつく睨んだ。


『先輩は確かに嫌われてたし、
女の子たくさん引っ掛けてたわよ…!
でもやる事はやってた。
すごい仕事量こなしてた。
だから誰も咎めなかったの…!

なのにあんたなんかのために悠太が嫌な役やって。
会社からの辞令の海外転勤ってなってるけど
みんな知ってる!悠太がした事だって。

悠太、今人の何倍も仕事してる…

そんな悠太見て、やっと周りが
悠太のこと認め始めてるの!
先輩がいた部署の人たちだって
先輩の分埋めようとみんなで頑張ってる…!』


なんで福田くんが最近ずっと
眠いとか疲れたとか言っていたのか、
やっと分かった。

福田くんが話してくれなかった
隠された本当の事実を知って
呆然とする私に彼女の真っ直ぐな目が向けられる。


『本当に悠太の邪魔しないで…ッ』


彼女が涙交じりに言った。


『何も知らないで…悠太に守られて…
悠太の前でヘラヘラ笑って…!

だから私あんたの事嫌いなの!
嫌い!嫌い!大っ嫌い!!』

『……ッ…』


下唇を噛んで涙を必死にこらえる私に
彼女は信じられないくらい低い声で言う。


『あんた…まさかこの後に及んで
悠太が好きとか言わないわよね…!?
言わせないからね!そんな事…!』


彼女が私の肩を掴んだ。
ネイルが食い込んですごく痛い。


『消えてよ…!悠太の前から…!!』


掴んでいた肩を乱暴に押す。


『もう…悠太の前に現れないで…!!』


吐き捨てるようにそう言ってぶつかりながら
私の横を通り過ぎていく。
少しずつ小さくなってから消えるヒールの音。

1人取り残された私は膝から崩れ落ちた。

破れるタイツも汚れる服も気にならなかった。
誰かに見られているわけでもないのに
声を押し殺して涙がこぼれるのを耐える。


『…福田、くん…』


なんでそんな事したの?
なんで教えてくれなかったの?


福田くんがどうやってシャアを
海外転勤まで追い込んだのか。

あの人が言っていた
色んな人に話を聞いて、たくさん頭を下げた。
一口にそう表していたけれど
きっと並大抵の事じゃない。
普通じゃそんな事出来るわけない。

自ら悪者になって、周りからいろいろ言われても
睡眠時間を削って働く福田くんを
近くで見ていたあの人が
私を大嫌いということは間違いじゃない。
私だってそんな奴いたら大嫌いになる。


潰れそうなくらいに握りしめていた
ケータイが震え出す。
この時間に電話かけてくる人なんて
1人しかいない。

いつもなら嬉しい電話。
すぐに出る電話。


『…福田くん…ッ…』


福田くんの事が好き。
福田くんの事が大好き。


でももう私は、


“何も知らないで守られていた”私は、

彼に想いを伝える権利なんてない。




もう私は、
福田くんと会わないほうがいい。





『…福田くん…ッッ…』


何度も何度も消える声で彼の名前を呼ぶ
私の手の中で、
ケータイの震えが止まった。







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