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さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

福田くんってさ。【11】

ジャニーズ 妄想 長編


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『これで全部かな?』


家具が付いてくるマンスリーアパートの一室で、
姐さんがそう言った。


『とりあえず、こんなもんですかね』


空になった段ボールを片付けながら
言う私に姐さんがぎゅっと抱きついた。


『さ、お蕎麦食べよう!お蕎麦!
引っ越しといえばお蕎麦!!』

『姐さんまだ荷物片付いてないですよ(笑)』

『んなの住んでるうちに片してけばいいのよ!
そんな事よりご飯よ!
人間食べなきゃ生きてけないんだから』


私から離れた姐さんは、一直線にキッチン向かい
ここに来る途中に寄ったドンキで買った
買い物袋を漁って、
緑のパッケージのカップ麺を2つ出した。

鼻歌交じりにお湯を沸かし始める姐さんに
小さくため息をついてから、
私も食事の準備を始めた。







福田くんと同じ職場の同期と
名乗る女の人が現れたあと、
私は真っ白になった頭でなんとか家まで帰った。


家について、ずっと握り締めていた
ケータイを起動すると
福田くんから着信が2件来ていた。

仕事中に1回と、
さっきの1回。


仕事、人の何倍もやってるんでしょ?
会社で悪者扱いされてたんでしょ?


私なんかのために何やってんの?
私なんかのために…


今福田くんと話したら
きっと彼を不快にさせる言葉しか出てこない。

福田くんとどうやって話せばいいか分かんない。

消えてと言われた私は
福田くんの電話を取ることができなかった。




毎日かかってくる電話を何回無視しても、
福田くんからの着信が無くなることはなかった。

毎日毎日、夜には電話が鳴った。

彼の声を聞きたい気持ちを殺して
鳴り続ける電話が切れるのをひたすらに待った。


『…も、かけてこないでよ…』


嘘。
本当はどんなに無視しても
毎日鳴る電話が嬉しかった。
福田くんが私に電話をかけてきてくれる。

あの女の人が近くにいても
彼が電話をかけてきてくれている。

電話には出ないくせに
そんなことを考えて勝手に1人で喜んでた。



あんなに毎日電話してたのに
急に電話に出なくなった私を不思議に思ったのか

ある日家に帰ろうと電車を降りて
ホームを歩いて行くと、
改札の向こう側にポケットに手を突っ込んで
柱に背もたれて立っている福田くんが見えた。


福田くんの姿を見た瞬間に、
もう一度電車の方へ走り出して
目の前に来た電車に急いで飛び乗った。


『…ハァ…ッハァ…』


走った距離は全然短いのに
息が切れる。
胸が苦しい。


乱れる呼吸に胸を押さえながら
ズルズルとその場にしゃがみ込んだ。


待っていたのは私じゃない。
私のことなんて待ってるわけない。

そう思っても福田くんに
会うことなんて出来なくて、
私は次の駅で降りて遠回りをして歩いて帰った。


次の日も、また次の日も、
期待しているわけではないけど
いつもの駅で降りられなかった。


毎日毎日見えない何かと戦っていた。
毎日夜に鳴る電話に耳を塞ぎながら泣いた。


知らないところで人の人生めちゃくちゃに
していた自分なんて、
本当に消えちゃえばいいのに。
そう思った。





そんな日々が続いたある日、
アキラさんから販売員のヘルプの話を聞かされた。


『いい経験になると思うんだけど…』

『行きたいです』


渡された書類に目も通さずに返事をした。


『無理しなくていいんだよ?』


あまりに速攻で返事した私に
ビックリしたのか、
アキラさんが聞き返してくる。


『もっと勉強したいんです』


ハッキリ言った私に分かったよって返事して
自分のデスクに戻るアキラさんを横目に
書類をパラパラめくってみると
ここからだいぶ離れた地方の店舗名が書いてあった。


『…遠、』


他人事のようにつぶやいて
書類を放り投げた。







『まさか○○ちゃんと同棲なんてね♡』


姐さんがインスタントのお蕎麦を
すすりながら言ってきた。


『同棲って…』


笑いながら答えるけど素直に嬉しい。
大好きな姐さんと一緒に住めるなんて。


『でもなんで姐さんもこっちに?』


最初は私だけと聞いていたから
引越し前日に、


アタシも行くわよ!!!


って張り切っている姐さんを見て驚いた。
それと同時に心強さも感じたのだけれど。


『アタシ役職付き狙ってるから』

『…わお!』

『その内あの部署もアタシの物にしてやるわ』


握りこぶしを作って
力強く宣言する姐さんに
一生この人に付いて行こうと心に決めた。


『ねぇ、ずっと気になってたんだけど
○○ちゃんケータイ変えたの?』

『へ?』

『ケータイ』


姐さんが私のスマホを指差しながら言う。

そう。変えた。
ちょうど2年経ちそうだったし、
早めに変えちゃおうと思って
こっちに来る前にケータイショップに行って
そのまま番号もアドレスも全部変えた。

まっさらになった私のスマホには
仕事場と家族の番号しか入ってない。


着信履歴もまっさら。


『ちょっと、水没させちゃって』


普通水没させたらもっと悲しむはずなのに
へっちゃらな顔で笑う私を
ちょっと不思議そうに眺めながら


『新しい番号教えて?』


優しくそう言った。





…姐さんは絶対気づいてる。

私がなんでここにいるのかも。
ケータイを急に変えたのかも。

でもその事実を口にしたくない。
誰かに言ったりなんて出来ない。

何回着信無視しても降りる駅を変えても
ヘルプの話を受けて遠くに来ても

毎日頭に思い浮かぶあの人の事を
人に話すなんてまだ出来なかった。








***





『○○ちゃん!
これ持って脚立登って声出して!!!』


“全品30%オフタイムセール”

そう書かれた手作りのボードと
脚立をほとんど押し付けるように渡された。


5月の連休。人がごった返す店内。
もう地獄だった。

居酒屋の花金なんて可愛いもんだ。
ここが本当の地獄。

女のパワーってやっぱすごい。
欲しい洋服を強奪し合う女の怖さ。

鬼の形相で洋服を引っ張る彼女たちを横目に
脚立に登ってボードを掲げて
大きく息を吸い込む。


『ただいまの時間からぁ!!!!
店内商品全品30パーセントオフの
タイムセールでーーーす!!!』


洋服にしか見ていなかった彼女たちの視線が
一気に自分の方へ向く。


『赤タグのセール価格からぁ!!!
レジにてさらに30パーセントオフでーーす!!!』


そんな顔、絶対彼氏に見せんなよ…
ってくらいの顔で
洋服を引っ張る手を加速させる彼女たちに
笑いをこらえながら、
私はずっと声張り上げ続けた。






『連休終了ーー!!!!』


最後のお客様を見送って、
閉店時間を迎えた瞬間に
スタッフ全員でそう叫んだ。


『長かった…長かったぁぁ…』


この店舗の店長さんがそう言いながら
おばあちゃんのように歩く。

出勤の時は綺麗にまとめられていた
お団子ヘアーがヨレヨレになっている。


『にしても、○○ちゃん
オフィスの方にいたのにいい声出るわね〜』


店内の洋服を畳む私に話しかけてくる店長さん。


『私、居酒屋でバイトしてた事あるんで
結構声出してたんですよ』

『納得!でも本当にヘルプ来てくれて助かった!
明日○○ちゃん休みだよね?
ゆっくり休んでね!』


店長さんは優しく微笑んで私の肩を1度叩くと、
疲れすぎてテンションがおかしくなったのか
スキップしながらレジ締めへと向かって行った。






片付けを終わらせて荷物を持って外に出ると、
姐さんと見知らぬ男の人がお店の前に立っていた。


『…姐さん?』


私の声に反応してこちらを振り返る姐さん。


『連勤お疲れ!』


手を上げた姐さんの後ろでペコっと
頭を下げる男性にこっちも小さく会釈する。


『アタシも明日休みだから
このまま飲みに行こうと思って』

『…はぁ』

『迎えに来ちゃった!』


姐さんが迎えに来てくれたことは嬉しいし
ご飯食べに行くのもすごい楽しみ。

でも気になる。
姐さんの一歩後ろにいる人。

ダウンボタンシャツの上に青のボーダーニット。
スキニーデニムを履いて
ワンショルダーリュックを肩から下げる人。

茶色いふわっとしたパーマが
にこにこした雰囲気に似合ってる人。


姐さん…その人は誰ですかい?


私があまりにもジトッと見つめるから
姐さんが慌てて紹介し始める。


『ごめんね!ビックリしたよね!
こいつね、前にウチの課にいた奴なの』


姐さんに背中をグイグイと押されながら
私の目の前まで来たその人は
名前を名乗りながら少し恥ずかしそうに頭を下げた。


『さ。早く行こう!
もぉ〜お腹すいたっ!ガッツリ食べたいっ』


本当にお腹が空いているみたいで
早くお店に行きたくて仕方ないのか
姐さんは私たち2人を残して


『クマー!○○ちゃーん!
置いてくわよーー!!!』


その場からダッシュで走り出した。


『あの人、いつもあんな感じなんですか?』


ポカンとする私に、
その人が吹き出しながら問いかける。


『はい。』


ちょっと戸惑いながら答えると


『変わってな過ぎて笑える』


昔を懐かしみながら笑うその人の雰囲気に
究極に人見知りを発動していた私の緊張が
一気にほぐれた。


『とりあえず、歩きましょうか』


そう言って歩き出したその人の隣に並びながら
姐さんが走って行った道を追う。


『あ、あの…』

『はい。なんでしょう?』

『クマ…って?』


さっき姐さんが叫んだ名前。
“クマ”

明らかに姐さんはこの人のことをそう呼んでた。
でもさっき彼本人が名乗っていた名前に
全然あやかっていないあだ名だったから
なんでクマって呼ぶのか謎で仕方ない。


『ああ、クマ呼びの事ですか?』

『はい』


私の質問に彼は前を見ながら
ちょっと恥ずかしい話なんですけど…
と、言いながら話し始めた。


『昔、入社したての頃
俺すっごい太ってたんですよ』

『え?』


今の細身な彼の体をまじまじと見てしまう。


『入社したてで緊張してる俺の腹つまんで
何これー!クマのプーさんみたいな腹ぁ!
って叫んだ先輩がいましてねぇ…』


彼の表情で分かる。
その叫んだ先輩…きっと姐さんだろうな(笑)


『その人の発言のせいで
俺は入社早々にクマってあだ名が付いたんですよ』

『プーさんじゃなかったんですね』

『俺はプーさん推しだったんですけど
プーさんじゃ可愛すぎるからって
却下されました』

『姐さん…(笑)』

『まぁでもそのあだ名のおかげで
すぐに他の先輩たちにも馴染めたんですけどね』


昔から姐さんは周りをきちんと見れて
後輩には優しくしてくれる人なんだな…

昔の姐さんの話を聞けてほっこりしていると
ひょこっと顔を覗かれた。


『…ッ?』


少しビックリして身を引く。


『て事なんで、○○さんもクマって
呼んでくださいね!』


優しく笑うその顔に、思わず


『クマさん』


そう呼んでみた。


『なんですか?』


目を細めて笑うクマさんから
柔軟剤のいい匂いがした。







『おっそい!何チンタラ歩いてんのよ!』


お店に着くと、
すでに一杯やっている姐さんがいた。


『先輩が早すぎるんじゃないすか?』


笑いながら椅子に座るクマさん。
その向かいに私も座る。
隣にいる姐さんが笑いながら


『ホラ、アタシ足長いから!』


って言いながら私にメニューを渡してきた。


『○○ちゃん好きなの頼みな〜
今日はクマの奢りだから〜』


もう好き放題の姐さんに笑いが止まらなかった。


そのあともお酒がグイグイ進む姐さんは

あんたが成長してて感動したわぁ〜
とか、

あんたが上司から仕事任せられるとか感動だわ〜
とか、

ずっとクマさんのことを褒めてて。


クマさんもうるさいっすよ、とか言いながらも
嬉しそうに笑ってて。

2人の素敵な先輩後輩関係になぜか自分まで
幸せな気持ちになった。


あの日から、
あのピンクのネイルした女が
私の目の前に現れて消えてと言われた日から
ずっと張り詰めてた気持ちが
少しずつほぐれていった気がした。



結局クマさんの奢りだと言っていたけれど、
全額姐さんが支払ってくれた。


『姐さん、お金…』


カバンから財布を出しながら駆け寄ろうとすると、
クマさんに財布ごと手を掴まれて


『あの人後輩がお金出そうとすると
ガチでキレるから、
ここは奢られときましょう』


って小さな声で囁かれて、


姐さん…一体どこまでいい女なんだ…!


って感動した。


駅前でクマさんと別れて、
ホロ酔い気分の姐さんとなぜか手を繋いで
マンスリーアパートまで歩いて帰った。


『くはぁ〜〜。飲んだぁ〜〜。』


部屋に入るなり、
床に大の字に寝っ転がる姐さん。


水、飲むかな…?


そう思ってキッチンに行こうとしたら、


『そろそろ話して欲しいな』


後ろから姐さんの柔らかい声が聞こえた。


『○○ちゃん、アタシ結構待ったよ?』

『……』

『そろそろ姐さんに話してよ』

『……』


冷蔵庫から水のペットボトルを取り出して
床に寝っ転がる姐さんのところまで歩く。


『ありがとっ』


私からそれを起き上がりながら受け取って
勢いよく喉に流し込む姐さんの前に座った。


『…姐さん…』

『うん、なあに?』

『私の話…聞いてもらえますか?』


俯きながら小さく声を出す私の手を
姐さんがギュッと握る。


『うん、聞く。』


その手を握り返しながら、
深呼吸を1つしてから私は話し始めた。


『姐さん…私、大好きな人がいたんです』

『うん』

『本当に大好きだったんです…』

『うん』


姐さんの優しい声に
我慢していた涙が溢れてくる。


『大好きだったんです……
その人の声が聞けるだけで嬉しくて…
その人が関わるとどんな事でも楽しくて…


でも私、その人に迷惑しかかけられなくて…


東京に来て、仕事辞めてから
ずーっとフラフラしてた私が
こうやって仕事に就けたのも…
人との繋がりの大切さに気付けたのも…


全部全部その人のおかげだったんです…ッ


でも、私…ッ
迷惑しか、かけ…られなくって…ッ』


もう聞いてもらうっていうか
一方的に嗚咽交じりに話す私を
姐さんがギュッと抱きしめた。


『私…卑怯なやつなんです…ッ
迷惑かけるだけかけて…逃げて来て…ッ

馬鹿みたいだと思いますよね…?
たかが失恋でこんな…』

『そんな事ないよ』


被せ気味に姐さんが言う。


『そんな事ない』

『……ッ…』

『アタシ、ずっと気になってたのよね』


姐さんが私の背中を、
子供をなだめるようにトントンしながら
話し始める。


『あんなに人前であまり表情変えなかった
○○ちゃんが、大口開けて笑ったり、
こんなにボロボロ泣いたり…』

『…』

『今までアタシでも出来なかったのに
いとも簡単に本当の○○ちゃん引っ張り出して
ここまで可愛くした男。
気になってたのよ。』


ふと、少し前に姐さんに
“よく笑うようになったわね”
って言われた事を思い出した。


『すごい、素敵な人だったんだね』

『…はい……』

『大好きだったんだね』

『…はい…ッ』


姐さんは一度強くギュッと抱きしめ直してから
私を離した。


『○○ちゃん』


真っ直ぐ私を見つめる姐さんと目が合う。


『綺麗になっちゃおっか!』

『…へ?』


したり顔で笑う姐さんに呆然とする私。


『これから姐さんが
嫌ってほど相手してあげるから!!』

『…』

『休んでる暇なんてないわよ!
仕事に遊びに!オッケー?』

『…』

『まずは明日!美容室行くわよ!
バッサリ行っちゃおうバッサリ!!!』


私の目の前で楽しげに笑う姐さんに


『オッケーです!姐さん!!!』


涙で濡れた顔をくしゃくしゃにさせながら
精一杯笑って見せた。


その日は泣き腫らした顔のまま、
姐さんと一緒の布団で寝た。
姐さんはお酒が入るといびきがすごくなるらしく
それもまた少し面白かった。



次の日の朝、
ちょっと二日酔い気味の姐さんに
叩き起こされて美容室に連れてかれた。


『男がむしゃぶりつきたくなるような
女の子にしてやって下さい』


とか姐さんがカットしてくれるお兄さんに
言うもんだから、
カットされながらも
ずっと恥ずかしい思いをする羽目になった。


でも随分と敏腕の美容師さんだったみたいで
カットし終わった鏡に映る私は
なんだか別人のようだった。


伸ばしっぱなしで胸辺りまで伸びていた髪は
肩で綺麗に切り揃えられていて、
髪色も随分と明るくなった。


『俗に言うキャラメルカスタードって色です』


って美容師さんに笑顔で言われて
なんだか美味しそうだなぁ…って思った。



今までパソコン相手だったけど
販売員はそうはいかない。

多少人目を気にするようになった私は
メイクだって変えた。

服装だって、
お客様に真似されたくなるように
頑張って可愛いコーディネートの勉強をした。

少しずつだけど、
前に進んでいった。



私は、もう泣かない。



3ヶ月間のヘルプ期間が終わりに近づき、
それと同時に私と姐さんは東京へと
戻る日も近づいていた。






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タイトル詐欺…(笑)
すいません(笑)


クマさんはきっと千葉雄大くんみたいな
感じの男の人だろうと信じてる。

いや、そうであって欲しい。