さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

不器用なアイツ。

------------





『ねぇ〜〜俺のケータイ知らなーい??』


ジーパンのポケット全てに
手を突っ込んで確認しながら
前を歩く3人に声をかける。


『え?無いの?』

『うん、無い〜』

『しっかりしろよ酔っ払い(笑)』


周りにやんや言われても無いものはない。


『どっかのお店に置いてきた?
でも今日何軒もはしごしたから
どこのお店か分かんないよ』


一緒に飲んでたうちの1人の辰巳がそう言った。


今日は昔から仲がいい4人で集まって、
仕事が終わった時間からずーっと飲んでた。


“全員誕生日が近いから、4人まとめてそのお祝い”


なんてのはただの口実で
とりあえず集まって酒が飲みたかっただけで、

結構な量を飲んだ。


何軒もはしごして、
何かあれば“誕生日だから”って言葉を
免罪符にしてボトルワイン開けちゃったりなんかして

しまいに酔っ払いまくった俺は
椅子から転げ落ちたりした。


ゲラゲラ笑ったり真剣な話をしたり
すげぇ楽しくてケータイをどこに忘れたかさえも
思い出せないくらいだった。


『とりあえず今日行ったお店もう一回
行ってみようよ、』


コッシーがそう言ってみんなで歩き出す。


『見つかるといいね』


俺の隣でボソッと言ったマツに言葉に
コクリと頷いた。

本当に無いと困るから見つかって欲しかったのに
しらみ潰しに一軒ずつ確認しても
ケータイは見つからなかった。


『まじかぁ』


まだ新しく買い換えてそんなに経っていない
ケータイがまじでなくなったっぽい。


『ドンマイ(笑)』


半笑いで言うコッシーに少しムカついたけど
一緒に探してくれた手前、何も言えなかった。








『…分割払いにしたから
まだ全然払い終わってなかったのに』

『あれ?』

風呂上がりに上半身裸で髪の毛を拭いている
辰巳が俺の言葉に反応した。

何故かちゃっかりウチに泊まりに来た辰巳は
人の家の冷蔵庫を漁って
ビールまで飲み始めてる。


…まぁ別にいいけど。


『新しいの買うの?』

『ウン』

『買い換えたばっかだったのにね』


少し楽しそうに笑う辰巳。

コッシーといい、なんでそんなに楽しそうなんだ
新品同様のケータイが無くなったっていうのに!

プリプリしながら辰巳を睨んで、
奴が飲んでいたビールを奪って一気に飲み干した。

そんな俺を見てもっと楽しそうに笑ってた辰巳が


『ああ!!!そうだ!!!』


と急にでかい声を出した。


『どうした?』


いきなりの大声にビビった俺の方に
満面の笑みで振り返る。


『福ちゃんのケータイにかけてみようよ!』

『俺のケータイ?』

『そう!繋がるかも!!』


自分の閃きに感動してるのか
キラキラした顔のまま
ケータイをいじり始める辰巳。


『なんで思いつかなかったんだろ!
俺天才かも!』


感動しながらケータイを耳に当てている
辰巳の顔が少しずつ曇る。


『…出た?』

『出ない』

『まぁ、そうだろうね』

『もう一回!!!』


ムキになってもう一度かけ直してる
辰巳に反してもう諦めモードの俺。


『辰巳〜もういいよ〜』

『待ってて福ちゃん!』

『多分もう見つからないよ〜』

『ちょっと静かに…ッ』


いつまでもブツブツ言う俺に
辰巳の視線が向いたかと思ったら、


『おおおお!!出た!!!』


まさかの展開が起こった。


『あー良かった!!良かったぁぁ!!
マジ良かったぁ〜焦ったぁ〜〜』


え、繋がったの?嘘。

ケータイを耳に当てながら
胸をなでおろしている辰巳を
ポカンとした顔で見つめる。


『ああ、ごめんなさいごめんなさい!
そのケータイの持ち主の友達っす!

なんかすいませんね!とりあえずケータイ
あったことに安心しちゃって!
本当に心配だったんすよぉ〜

今日何軒も居酒屋はしごしたから
どこの居酒屋に忘れたか分からなくて〜!
とりあえずしらみつぶしに
確認しまくったんですけどねぇー

あ〜〜でも本当に良かった〜
拾ってくれたんすか?
ありがとうございますマジで!』


電話が繋がった嬉しさなのか
興奮して一気に早口で喋る辰巳。

拾ってくれたっぽい電話の向こうの人が
誰なのかさっぱり分からないけど
辰巳のその喋りっぷりに

向こうの人が困っちゃうだろ…
と思いながらその会話に耳を傾ける。

案の定困らせてしまったのか、
ずっと黙ったままだった辰巳がもう一度、


『もしもーし』


と、問いかける。


『大丈夫大丈夫!どこに落ちてた?』


繋がると思っていなかった
ケータイの行方が気になって、
辰巳が耳に当てているケータイに
自分も身を乗り出して耳を近づけた。


『あれ?その店、行った…けど…』


辰巳の声の後に、
透き通った声がかすかに聞こえたと思ったら…


『ぎゃはははははは!!!!』


辰巳の馬鹿デカい笑い声にかき消された。


『ケータイ連れ去られてんじゃん!!
マジうけんだけど〜〜!!!』


どうやら俺のケータイは
今辰巳が電話してる人に持ち帰られてるらしく…


全くウケないその状況にゲラゲラ笑う辰巳に
ムッとする。


でも、それよりも一瞬聞こえた
透き通る声をかき消されたことの方が
なんかつまらなかった。

…何でか分からないけど…


『大丈夫大丈夫!
とりあえず無事だったみたいだし!

でも持ち帰るなんて面白すぎんだけど!
いいネタになるわ(笑)』


相変わらずのテンションで話す辰巳は


『あ、また黙っちゃった(笑)』


相変わらず電話の向こうの人を困らせていて、


『んー。どうしようねぇ〜…
今どこにいるの?』


でもしっかりとケータイを俺の手元に
返してくれようとしている。


とんでもなく遠いところに
連れて行かれてたらどうしよ…

今日中は無理だったとしても
月曜からは仕事が始まるから
それまでには帰ってきて欲しいな。


そんな俺の願いが通じたのか、


『え!?○○駅!?』


辰巳がウチの最寄駅の名前を叫んだ。

パッと目が合う俺と辰巳。


『了解!じゃあ今すぐ取りに行くから
駅前に公園…あったよね?
そこで待ってて!!』


言い終わると同時に通話を切った
辰巳がキラッキラした顔で
俺にグータッチしてきた。


『って事だから!
今すぐ公園に行って福ちゃん!』


部屋の窓から微妙に見えるくらい
近い場所にある公園を指さしながら言う。


『え、本当にそこに来るの?』


未だに半信半疑の俺に辰巳は


『だぁぁ!!もう早く行かないと来ちゃうよ!』


と言って背中を押して部屋から出した。


『女の子なんだから待たせちゃダメだよ!
わざわざ届けてくれるんだから!!』


いや、そもそも持ち帰ったその女のせいで
俺のケータイ無くなってんじゃん…


とりあえず辰巳のケータイを借りて
それをポケットに突っ込みながら
家を出て公園へ向かった。


外に出るとすごく寒くて、
なんで上着を着てこなかったのか後悔した。


『ていうかいつ来るんだよ』


どのくらいで着く、とか
このくらいかかる、とか

辰巳に聞いておけばよかった。

いや、そもそも辰巳も
すぐ電話切ってたから聞いてなくね?


どのくらい待つのか分からない
待ち時間ほど長く感じるもので


『さっみぃ…』


あまりの寒さに俺はひとりごとを言いながら
寒さを紛らわすためにブランコに乗った。


キィキィと金属の擦れる音が懐かしい。


小さい頃はこの公園でよく遊んでたなー
あの滑り台あんな小さかったっけー


そんな事を考えながらボーッと
ブランコを漕いでいると、

俺が入ってきた入り口とは
反対側の入り口でウロウロしている
人影が見えた。


…あの人かな?


借りてきた辰巳のケータイを使って
自分の番号に電話を掛けたら
案の定ウロウロしていた人影の方から
着信音が聞こえてきた。


やっぱり、と思いながら
その人影の前まで歩いて足を止めた。


俺のケータイを両手で握りしめながら
ゆっくり顔を上げるその人。


『どうも、たちゅみゆだ〜いです』


俺のケータイに登録されている
辰巳の名前を言ったと同時に聞こえた


『あ、こ、こんばんは…』


あの透き通る声と、
月明かりに照らされたその顔に
俺の身体が一瞬にして固まった。





----------------


次のページでまた恐縮ながら
ご挨拶の記事を挟ませて頂きました。

読まなくても何ら支障はありませんが、
覗いて頂けたら嬉しいです(^ ^)