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さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

不器用なアイツ。【9】

ジャニーズ 妄想 長編


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水族館で彼女とデートをしてから、
俺はずっとシャアの今までの事を調べた。


同期に聞いたり、
他の部署の女の子に聞いたり。


女の子に積極的に話しかけてる俺を見て、


『ついに福ちゃんが彼女作る気になった!!』


と、上司は大きな勘違いをして
喜んでいた。


彼女作る気になったっていうか、

彼女にしたい奴の為に頑張ってるんだけどなぁ…


今さら上司に説明するのもめんどくさいから
そのままにしておいたら、


『で、今のところ1番お気に入りはどの子?』


って聞いてきたから、


『体重が意外と重い女っすかねぇ…』


って答えたら、


『福ちゃんってデブ専なの?』


って真顔で聞き返されて
腹が痛くて仕方なかった。





シャアのことを調べていたら、
今までのあいつのクソみてぇな
行いが露わになって、

その被害者の女の子達が
それはもう惜しみなく
俺に情報を与えてくれた。


中には、


『え?あいつにやり返せるの?
いろいろと協力したいんだけど!』


なんて、言い出す女の子もいて

女ってマジで怖ぇなって思って
少し震えた。



でもほとんどが、
月にこのくらいの金額でどう?って言われた。

とか、

飲み会の帰りにお持ち帰りされたけど
その後適当に扱われた。

とか、


その程度の話ばっかで、

これといって決定的な何かが
あればって思ってたところに、

その人が来た。




『すみません』


大体の人は帰って残業組だけ
残ってたところに、

もう私服に着替えて帰ろうとしてる
女の人が扉から顔だけ出して声をかけて来た。


『はい』

『これを福田さんって方に渡して欲しくて』

『福田?』

『はい。この部署にいるってお聞きして…』


その人が渡してきた茶封筒を受け取りながら、


『福田は僕ですが…』


と、答えるとその女の人は目を丸くして


『早く言ってよ!!』


って大声を出した。


『おお…すいません…』

『じゃあいいや、直接話します』


半分俺の手に渡ってた茶封筒を
ひったくったその人は、


『あの人の事について、
調べてるって聞いたんですけど…』


真剣な目をしながら俺を見る。


『…へ?』

『あの人です、あの人。』


誰のことがすぐに理解した俺は
ああ、はい。と、頷く。


『もう辞めちゃったんだけど…
前に勤めてた私の同期に会ってくれませんか?』

『…前に勤めてた?』

『そうなんです。
ぜひ会って欲しくて、話聞いて欲しくて。』

『……』

『福田さんが時間あるときで大丈夫です』

『あ、はい』

『なんか…忙しそうだし…』


目線を俺の後ろにそらしながら
そう言って、


『私の連絡先渡しておくので、
落ち着いたら連絡ください。
残業中に失礼しました。』


ペコリと頭を下げて帰って行った。





そしてその日の夜に連絡して
その“前に勤めてた人”とやらに
週末に会うことが決まって

少し離れたところに住んでるその人に
会いに行った。


指定されたファミレスで
ボーッと待っていると、


『おじさん、おまたせ』


小さな女の子が現れて


『…おじさん!?』


と、ショックを受けてた俺の目の前に


『すみません!この子ったら!!
本当にすみません!!』


慌てた様子で入ってきた母親は
自分より少しだけ年上なんだろうけど、
頬にあるそばかすが幼さを感じさせた。


『福田さん…ですよね?』


息を整えながらそう聞く母親に、


『はい、そうです。
今日はわざわざありがとうございます。』


お辞儀をしながら席に座るように促した。



『この子にお昼だけ食べさせちゃっても
いいですか?』


と、言って頼んだお子様プレートと
ドリンクバー3つ。


全てがテーブルに揃ったところで
母親が子供の頭を撫でながら口を開いた。


『もうすぐ3歳になるんです、この子。』


エビフライを口に頬張りながら、
ハンバーグにも手を伸ばす子供を
愛おしそうに見つめる。


『だから私が勤めてたのも、
もう3年前ですね…』

『同期の方とは今でも…』

『ええ、彼女はあの時の同期の中で
唯一未だに会ってくれるんです。
あんなことあった私に…』

『あんなこと?』

『今日の本題です』


少し困ったように微笑んだ彼女に、
俺も眉毛を垂らしながら応えた。


『私、あの人と恋人同士だったんです。』

『え?』

『大好きでした。』

『……』

『恋も仕事も順風満帆。
この世に私以上に幸せな人なんて
いないと思ってた。』

『……』

『そしてある日ね、私…妊娠したんです。』

『えっと…』


思わずお子様プレートに夢中になってる
女の子に目を向けてしまった。


『彼とはいずれ結婚したいと思ってたし、
いいタイミングだとも思った。』

『……』

『でもね、言われちゃったんです。
結婚する気なんてないって。』

『…え?』

『堕ろせって』

『……』


同じ男として、
その言葉がいかに無責任で…
女性に対して言ってはいけない言葉か。

子供を作ったことなんてない
俺にだって分かる。


固まって動けなくなる俺をよそに


『といれ〜!』


何も分からない子供はピョンと
ソファを飛び降りてトイレへと駈け出す。


『愛されてると思ってたけど、
彼には他にも付き合ってる人がいたみたいで…』

『……』

『私なんてそのうちの1人だったんですよね』

『……』

『そのことに気づいたのも、
ずっと先の事なんですけど…』

『……』

『ちょうど彼はその時に
大きな仕事を任されていて…
仕事の邪魔になるから
そう言われたのかと思ってたけど。』

『…あの子は…』


さっきまで夢中でお子様プレートを
食べていた女の子が
かけて行ったトイレへと目線を移す。


『そうなんです…あの人の子供です。』


ハッキリとした口調でそう答えた。



『本当に、素敵な人だったんですよ?』


昔を思い出すように、
ゆっくりと記憶をたどるように話す。


『最初は、普通に同僚として仲良くしてて…
仕事も出来るしでも気さくに話しかけてくれるし…
人気者の彼に惹かれるのに、
そう時間はかからなかったです…』

『…人気者、だったんですか?』

『むしろ今の彼の嫌われっぷりを聞いて
ビックリしてます。
私が会社にいた頃は
彼のこと悪く言う人なんていなかったから。』


笑いながらそう言う彼女は、
自分の娘である子供がこぼした
オレンジジュースを
紙ナプキンで拭き取りながら続ける。


『福田さん…あの人、
今そんなに酷いんですか?』

『…いやぁ、その…』


俺が死ぬほど嫌いな相手でも、
彼女からしたら“人気者の彼”

今でもそう思って懐かしみながら話す
その姿を目の当たりにして


いろんな女の子と、
金使ってヤリまくってます。


なんて言えなかった。


『まぁ、そうよね。
私もあの子と一緒に彼に捨てられたようなもんだし』

『……』

『昔から彼にはそういう素質があったのかも』


トイレから帰ってきた子供を
視界に入れながらクスクスと笑う。


『ままぁ。といれね、ひといっぱいいたぁ』

『ちゃんと手洗ったの?』

『あらったぁ』


びちょびちょに濡れた手を差し出す子供。


『洗ったなら拭くまでしなきゃ』

『はんかちない〜』


バックからハンカチを取り出して
綺麗に手を拭いてあげながら
彼女は俺の方を見る。


『この子の目元、あの人にそっくりなの』

『目元…』

『最初はね、すごい辛かった。
喜んでくれると思ったから。』

『……』

『“堕ろせ”って言われるなんて、
思いもしなかったから。』

『……』

『社内では有る事無い事たくさん噂された』

『……』

『女って本当に怖いんですよ?
昨日まで仲良くしてたのに
手のひら返したように攻撃してくるんだから』

『それは…ちょっと分かります』


苦笑いした俺に、


『福田さん、何か身に覚えがあるんですか?』


なんて、彼女は笑った。


『会社に行くことなんて出来なくなって、
仕事も辞めて
もう何もかもどうでもよくなったんです。』


まだ言葉の意味が分からない子供は
彼女の言葉を気にもせずに
嬉しそうに手を拭いて貰ってる。


『…すみません…辛い事思い出させちゃって』


テーブルに顔がつくくらいに
頭を下げた俺に、


『やだ、顔あげて下さい…』


慌てる彼女。


申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら
顔を上げると、

笑顔で子供を抱く、
強い母親の姿が目に映る。


『確かに辛かったです…
辛くて辛くて、お腹の子供と一緒に
死んじゃおうかと思った事もあったけど、』

『……』

『福田さん、私ね今無敵なんです。』

『無敵…?』

『…この子がいるから』


目が無くなるくらいに
微笑んだ彼女の言葉を、
俺は一生忘れないと思った。



俺が情報を集めたことをきっかけに
今までずっと我慢していた
女の子達のリミッターが外れたっぽく、

気付いたら面白いほどに
上層部の方まで
奴の今までの行いが筒抜けになっていた。


とんでもない仕事量をこなしてた
エリートな奴を、
咎めることが出来なかったのは
結局は同じ部署の人たちだけで


上が決めたことには
誰1人歯向かうことは出来ない。


奴はすぐに海外転勤を命じられた。



そのことを前に勤めてた、
あの子持ちの人に連絡したら


『ザマァwww』


って連絡が帰ってきて、
ケータイを見ながら爆笑した。





これでもう安心だ。


奴が彼女の前に現れることはない。


そう思うと、たまらなく嬉しかった。


『もしもし?』

『もしもしー?』

『今日も安心安全ですねぇ』

『…福田くん残業のし過ぎで
頭おかしくなってるの?』


何気ないか彼女との電話も、
楽しくて仕方なかった。


『あ、福田くん!
今日正社員の話受けますって言ってきたよ』

『…上司、喜んでたろ?』

『ありがとうって言われちゃった』

『良かったですねぇ』

『お礼言うのはこっちの方なのにね、
私なんか正社員にとってくれて』

『頑張ってください』

『頑張ります』


俺は甘い言葉とか、
女子が喜ぶような
歯の浮くようなセリフは言えない。


でも、彼女が安心できるように
安心して泣けるように

彼女を守ってあげたいとは思う。


彼女は何も知らなくていい。


何も知らないで、
俺の前で泣いていればいい。



『前に話した正社員だけが
持てる社員証の写真ね明日撮るんだって!』

『おー、めーいっぱい化粧してけー』

『素材勝負でいく』

『変な意地はやめとけ』



彼女の声を聞きながら、


“この子がいるから無敵なんです”


と言った、あの母親を思い出して


俺にとって無敵になれる存在は

この電話の向こうにいる
彼女だなって思った。




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