さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

不器用なアイツ。【13】

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タクシーの運転手に
彼女と俺の家がある方向とは、
全く別の場所に向かうように頼んだ。


そんな俺の顔を隣で
何が起こったんだか分からなそうに
見つめていた彼女だったけれど

もう静かに座っている。



…彼女は一体いま何を考えてるんだろう



俺のことを考えてて欲しいな…

そう思いながら
握っていた手に指を絡めて
握りなおした。


強く握り返してくる彼女の手が
少しだけ震えているような気がした。



俺がタクシーの運転手に
伝えた場所に着いても、
お金を払って車から降りても


彼女はどこか遠くを見つめたまま
ずっとボーッとしていた。


…こんな事していいんだろうか…


彼女の手を引きながら
そんな事を思うあたり、

さっきまでの勢い任せに行動した時よりは
冷静さを取り戻してるらしい
俺の頭に浮かぶのは


…アパートの下で見たあの男、彼氏なのかな…


やっぱりあの男のことで。


もし彼氏じゃなくても
彼女が良く想ってる相手なら

いま俺がしてる事は
彼女の邪魔をすることでしかない。

彼女を傷つけることでしかない。



だから、少しでも嫌がれば…

少しでも抵抗すれば…


手を離そう。



彼女のことを好きな男として…


自分の気持ちよりも、彼女の気持ちが大切。





あの男のせいで嫌でも取り戻した冷静さに、
彼女の気持ちを優先することを
決意した俺だけれど


『……あ、…』


声を漏らして、
立ち止まりそうになった彼女を無視して

水たまりに対称形に映る
幻想的なライトを横目に

その建物に躊躇なく入った俺には
冷静さどころか
理性さえも無いようなもんだった。




俺に掴まれてるその白い腕も

かすかに香る彼女のにおいも

黙ってついてくるその姿も



全部愛しくて、
全部好きだと思った。



彼女が何を考えてるのか。

なんでこんな場所に
大人しく俺についてきてるのか、

考えても分からないけれど

彼女のことで頭がいっぱいで、


もう全てがどうだってよかった。








部屋に入ってすぐに
俺は彼女を壁に押し付けた。


左手で肩を掴んで、
繋いでいた右手を解いて
うつむいている彼女の頬に触れる。

顎を掴んで
彼女の顔を上に向かせて

前に逃げられたその唇に
そっと触れた。



彼女と一緒にいると、
マジで俺どうした?って自分自身に
問いかけたくなる事ばっかりで、

今までの俺とは違った俺が顔を出す。


今だって…

こんなにも後先考えずに
本能だけで行動することなんて
今まで無かったのに。




彼女の足の間に
無理やり膝をねじ込ませて
逃げられない状況を作る。



彼女の鞄が音を立てて落ちた。

鞄の中身が床に広がる。

散乱した財布や服と共に
ケータイも見えて、


また思い出してしまう
あの男の存在。


そこはオレの場所だったのに。

彼女に夜電話するのも。

彼女に相談持ちかけられるのも。

彼女に触っていいのも。


いくら男にムカついても、
その苛立ちをぶつけられる対象は
やはり彼女しかいなくて

もっと強く彼女の唇に
自分の唇を押し付けた。


本当はもっと丁寧に、
優しくキスしてやりたい。

でもそんな余裕なんてなくて
本能のままにキスを繰り返す。



俺の背中に回させた
彼女の両手にどんどん力が入って行く。



ほんの少しでも離れるのが嫌で
開いた口に強引に舌を入れた。


『…んっ、…ッ…』


彼女の甘い声に、
どんどん気持ちが加速する。

唇を重ねるたびに
吐き出す息がどんどん熱を帯びる。

身体も熱を帯びてくる。


キスの息苦しさからなのか、
はたまたキスの快感からなのか、

俺の舌に翻弄されてズルズルと
力が抜けていく彼女の身体を
力強く抱きしめた。


苦しがっているのは分かってる。
でもキスは止められなかった。


俺の背中にしがみ付きながら
キスに応えてくれる彼女。

無意識ではなくて、
意識的に俺とキスしている彼女に

嬉しさを感じる反面、
悲しさも感じる。


自分の気持ちよりも
相手に迷惑じゃないかな?とか
そんな事ばかり考える彼女だから


俺に気を遣ってるんじゃないかって。

俺に同情してくれてるんじゃないかって。





でも、今俺といる。


さっき彼女のケータイを鳴らしていたのが
あの男だったとしても、


今俺の目の前にいる。


今一緒にいる相手に、
彼女は俺を選んだ。


だから彼女の身体をもっと強く抱きしめて
吐き出す吐息さえも全部飲み込んだ。



名残惜しく唇を離すと、
彼女は息を切らしながら
俺に身体を預けてきた。


優しく頭をポンポンすると、
俺の背中に回っていた彼女の腕が
ぎゅっとワイシャツを握った。


彼女の熱い吐息が俺の肩に当たる。


『…苦しかった?』


口の中に残る彼女のにおいを
感じながらそう聞いた俺に

彼女は相当苦しかったのか
声を出すのも無理みたいで、

小さくゆっくり頷いた。


ほんの少し、

本当にほんの少しだけ残る自分の良心が
俺に警告する。


『…こっち』


でも、そんなのほんの一瞬で
今更理性を取り戻すことなんて出来ない俺は

彼女の腕を引っ張って
ベッドの上に座らせた。



ベッドに座って、
着崩れた浴衣で俺を上目遣いで
見上げてくる彼女に
煽られる気持ちは相当なもので


その場に肩から下げてたバックを
投げ飛ばした俺は
またすぐに彼女にキスをした。


もう優しさなんてない、
ただ彼女を求めるだけの激しいキスをしながら

彼女の纏っている
帯も髪飾りも、
全てを剥ぎ取っていく。


押し倒した彼女の身体に乗って
首筋に顔を埋めれば、

彼女の匂いに混じる、
汗の匂い。


浴衣の間から手を滑り込ませて、
直接その白い肌に触れる。


ゾクゾクする。


俺の手がブラに触れた瞬間に、


『ふく…っ、あ…』


彼女から甘い声。



あーもう、
たまんねえ…



その声に思わず恍惚気味な笑いを漏らす。


彼女の首筋に舌を這わせながら、
背中に手を回して
プツンとその金具を解く。


その締め付けを解いたブラに
手をかけようとする俺の頭にあるのは
このままもう彼女を抱きたいって気持ちだけで


『…や、だ……』


小さく呟かれたその言葉に
心臓が凍りついた。


勢いよく顔を上げると、
腕をがっちり胸元で固める彼女がいて


もう言い繕う事のできない
この状況に、
血の気が引いて行く俺に届くのは…


『…で、電気…』


まさかの言葉。


その言葉に、

心の底の…
底の底から安心して

彼女にキスをした俺は


手を伸ばしてベッドの近くにある
彼女が“やだ”と言った
スタンドライトの明かりを消した。




そうだよな、
お前だけが脱がされて
恥ずかしいよな…


月明かりにうつる
服を乱された彼女を見ながら

自分も着ていた服を脱ぐ。



服をベッドの下に投げ捨てて
彼女に覆いかぶさると

トロンとした顔で
俺を見上げる彼女がいて

その見た事のない表情に
ゴクリと唾を飲み込んだ。



俺にはまだ見せてない顔とか
あの男には見せてんのかな…



しつこいくらいにまた生まれた
余計な邪念を振り払うように
彼女の胸元から、ブラを引き抜いた。



身体中にキスの雨を降らせながら、
産まれたままの姿にしていく。


『…ぁ、…ッ…』


必死に抑えてるその声を
もっと聞きたくて、
敏感な場所にどんどん触れたくなる。




このままずっとこうして
彼女に触れていたいと思った。




どこにも行かないで
俺の側にだけいて欲しいと。


俺の舌の動きに合わせて付いてくる彼女に
期待がどんどん膨らむ。



俺を求めていると思いたい。

他のどの男でもなくて
俺を求めていると思いたい。



彼女は、
付き合ってる奴とか
好きな奴がいるのに


他の男に黙って抱かれるような
女じゃない

……と、思う。


そんないい加減な奴じゃない

……と、思う。


俺にだから抱かれていいと、
俺を求めてくれているんだと、
俺の手で少しずつ溶けていく彼女に

そんなことを期待してしまう。





彼女の太ももに手をかけると、
少し不安そうに瞳の奥が揺れた。


目の前で笑ってみせると、
不安な瞳こそ変わらなかったけれど
笑顔を向けてくれた。


『…いい?』


髪を撫でながら、
耳元でそう聞いた俺の声に


深く、しっかりと頷いた彼女に

幸せ過ぎて泣くかと思った。




彼女の中に深く沈むと、


『……ッ…、』


さっきまでの甘い声とは違う
苦しそうな声が聞こえる。


もう俺にも彼女を気遣えるような
余裕なんてなくて

彼女の手を握るだけが精一杯だった。





動きをやめた俺が、
彼女の隣に倒れこむと

彼女は俺の頭を苦しいくらいに
抱きしめてきた。


頭が涙で濡れる感覚を覚えて、
何で泣いてるのか彼女に問いただしてみたけど

彼女は首を横に振って
腕の力を強めるだけで

涙の理由を教えてはくれなかった。




息を切らしながら、
俺の頭をぎゅっと抱きしめていた彼女の
呼吸がゆっくりと、落ち着いてくる。

それと一緒に抱きしめられていた
力も弱まってきて…


『…○○?』


名前を呼びながら、
その腕の中から顔を上げると


『嘘ですよね〜?』


爆睡してる彼女がいた。



いやいや、さっきまで普通に
抱かれてたじゃん。
泣いてたじゃん。


呆気にとられるけど
幸せな気持ちいっぱいの俺は
今度は彼女を抱きしめ返す。


汗と涙でボロボロになった顔は
まぶたを閉じていても
やっぱり不細工。

でもどんなに不細工でも
込み上げるのは愛しさで


『…好きだよ』


髪を撫でながらそう言った。


絶対寝てると思ってたのに、
俺のその言葉にうっすら目を開けて


『…ふくだくん…』


と言いながらふにゃあと笑って
擦り寄ってきた。

目の前のどこまでも無防備
好きな女に軽く気絶するかと思った。



とりあえずシャワーでも浴びて
火照る身体を鎮めようと風呂に向かう…
前にもう一度彼女にキスしておいた。



強めに出したシャワーを
頭に勢いよくぶっかける。


『……はぁ…』


俺が無理やり彼女の腕を引っ張って
ここまでまで連れてきたとしても
最終的に彼女は俺を受け入れた。


いい?って聞いた俺に
首を縦に振った。


あのマンションの前で
彼女にキスしてた男が

彼女の恋人でも、好きな奴でも
そんな事どうでもいい。


奪うだけ。


俺の元に彼女を戻してもらうだけ。


だって元から俺のだもん。


…なんて惨めな事を心の中で
呪文のように何度も繰り返した。


風呂から出た俺の視界に
ベットの下に投げ飛ばしたバックが見えた。

その近くには衝撃でバックから
飛び出したらしい
屋台で買ったりんご飴が転がっていた。


拾い上げてまじまじと
見てみた赤くて丸いそれは、

なんだか泣いた時の彼女の顔みたいで
部屋の隅のテーブルの上に
ちょこんと置いておいた


ベッドに近づいて、風呂に入る前よりも
ひどくなっているような気がする
彼女の不細工な顔に笑いながら
隣に寝転ぶ。

彼女の首元に手を滑り込ませて
その身体を引き寄せてギュッと抱きしめる。



スー、と深い呼吸をしながら
また俺にすり寄ってくる彼女。


彼女の身体に夢中になって刻んだ
数えきれないほどの
赤い印に触れながら、


腕の中いっぱいに感じる
彼女の感覚にそっと瞼を閉じた。





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次回「ask結構前から登録してるけど使い方分からない上にインストールしてから全くと言っていいほどいじってなかったから存在自体を今日の今日まで忘れてたよ。ウケる。縁の絵も描きたいけど時間かかるからやる気なくしてしまってるよ。ウケる。スペシャル」やります。