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さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

不器用なアイツ。【14】


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『……んぅ…』


眩しさに目を開けると、
カーテンの隙間から
真夏の太陽の光が
俺の顔を照らしていた。


見慣れない天井に、
見慣れないベッド…


ベッタリと汗ばむ体を起こして、

目をこすりながら
寝ぼけ眼で時計を見ると

7時をちょうどまわったあたりで


『…んで、いねぇんだよ…』


空になった腕の中に目線を落とす。


周りを見渡してみるけど、

シャワーを浴びに行ってるとか
トイレに行ってるとか

そういうことはないみたいで
彼女が部屋にいない。



いや、なんでいねぇの?

本当にありえない。


朝起きたらちゃんと今までのこと
彼女の口から聞こうと思ってたのに。


それでいて
俺の気持ちも伝えようと思ってたのに。


ベッドから飛び起きて

バッグから携帯を取り出して


『………』


ケータイを起動して
気づく。


…番号聞き忘れた…


祭りで俺の隣に座った時から
聞かなきゃって思ってた。

新しい番号教えてって。


なのに、夢中になってて忘れた。

2人っきりになった瞬間に
すっかり頭の中から飛んでった。


もう後悔するのは嫌だって思っていたのに
早速後悔した俺に襲いかかるのは
半端ない情けなさで。


…こんなことならあいつが寝てる間に

手でも足でも
ベッドに縛り付けとけば良かった。


そんな馬鹿らしい
犯罪まがいなことすら思う。


『…はぁ…』


すっぽんぽんでベッドに腰掛けて
項垂れる俺から大きなため息が出た。


ベッドに仰向けに倒れて
天井を見つめる。


ゴロンと寝返りを打ってみれば
サイドテーブルに
綺麗に畳まれた俺の着てた服がある。

ハンガーにはスーツがかけられてて…


その光景に胸が苦しくなる。


これだけ身の回りを綺麗に整えて、
この場から離れたということは


朝目が覚めて、
服を着てない自分にビックリ。
怖くて横にいる男の顔なんて見れない。


なんていう漫画とかドラマでよくある
あーゆうシーンみたいに
衝動的に逃げたというよりは、


昨日のこともしっかり覚えてて
横で寝てる俺の事もしっかり見て。

それでいて、
意識的にホテルを出てったことに違いなくて


『…放置プレイ…』


部屋に俺の独り言が虚しく響いた。



ふと、昨日泣いていた彼女を思い出す。



昨日の夜までは
奪うとか返してもらうとか…

そんな強気なことばっかり
考えていたけれど


この状況で胸に残るのは
たまらなく大きな不安。



昨日もしかしたらって…

彼女も俺と同じ気持ちなのかなって…


そう思った。

でも俺が期待してた通りだったなら

彼女がこの場にいないことはあり得ない。


つまり彼女の答えは
そういうこと。


多分彼女は分かっていない。

彼女が俺への優しさだけで
起こした昨日の行動で、

男の俺がどれだけ期待してしまうか。

どれだけ舞い上がってしまうか。



本気でムカつく女。


俺が彼女に刻んだ
赤いしるしに苦しめばいいとさえ思った。


あんなに赤く咲かせてれば
他の男のところになんて行けるわけ無い。


マーキングしといて良かった。

俺犬じゃないけど。




とりあえずサイドテーブルに手を伸ばして
パンツだけ履く。

ここにいても虚しいだけだから
服を着て早く出ようと思うけど

動く気が起きない。


パンイチでシーツにくるまって
ゴロゴロ転がっては

昨日の俺の腕の中で
甘く染まっていた彼女を思い出して、

また虚しくなって…


情けなくなって…


でも彼女が好きな気持ちは
なによりもデカくて…


『カッコ悪すぎて笑える…』



ベッドに顔を埋めた。






気づいたら寝てた。


パンイチで大の字になって
爆睡してた。


どんだけ寝るんだよ俺って
思ったけど

寝て少しスッキリしたのか
気持ちが前向きになってた。


彼女がどんな気持ちだろうが、
俺のこの自分の気持ちを伝えよう。

別にいい。

彼女が手に入らなくても。


彼女がもう他の誰かのものでも。


自分の気持ちを言えたら
それでいい。


彼女が綺麗に畳んでくれた
服を着ていると、
テーブルの上に置いた
りんご飴がなくなってることに気づいた。


りんご飴が置いてあったところに
代わりに置いてあるのは

一万円札で。


『りんご飴は一万もしねーよ』


諭吉を睨みつけた。



外に出ると、
ムカつくくらいに綺麗に晴れた夏空と
蝉の鳴く声が耳に入る。


暑さに顔をしかめながら
電車に乗って家路に着く。


彼女、無事に家に帰れたかな。


俺が起きた時間より、
もっと早くホテルを出ていったような
雰囲気だったから

電車動いてたかな。


自分のすべきことが
明確になった反動なのか、
彼女を心配する余裕さえ出てきていた。


家に着いて、
もう一回シャワーを浴びて

服を着替えて、

ヒゲもきれいに剃って


髪もしっかり整えて


鏡に映った自分をまじまじと見る。



『なんだかんだちゃんとした告白って
人生で初めてかもしんない…』


もうやってやるって気持ちと
ちょっとの不安を持って

勢いよく家を出て、
彼女の家へと向かった。













前に来た時と同様に
彼女は家にいなかった。

でも、何故か
ここで待ってれば会えると思った。

だから彼女の家のドアに背をもたれて
しゃがみこんで、
彼女が帰ってくるのを待つことにした。


黙ってしゃがんでいるだけでも、
額に汗がじっとりと滲んでくる。

それでもこの場から離れないのは
もう腹を括ったからで

男として、一度決めたことを曲げたくない。


しかもあんなに悔しい思いを
2回も味わったなら尚更。


やらないでする後悔より
やってする後悔の方がいい。


よく聞く言葉だけど、
この言葉をこんなにも身に染みる日が
来るなんて思いもしなかった。





どれだけの時間が経っただろう。


東向きの彼女のアパート。

俺のしゃがんでいた場所は
最初は太陽がジリジリと当たっていたのに
段々と日陰になっていって

今ではもう空が真っ暗。

昼間の太陽の姿はどこにもなく、
それでも暑さだけはしっかりと
残していった。

昼前からずーっと家の前で
待ち伏せしてる俺へ
隣近所の人が不審な目を向けた事が
懐かしくさえ思える。


ケータイを開いて時間を確認すると、
もう日付が変わる直前。


『……はぁ……』


深くてやるせないため息がもれる。


何してんだろ、俺。

そんな気持ちにさえなってくる。


ケータイ画面の右上に表示される
充電の残りはほんのわずかで
その表示に、

もう諦めて家に帰れ。

と、言われてるような気がした。


でも会いたい。

気持ちだけでも伝えたい。




目をつぶって俯く俺の耳に、
車が止まる音と


『ありがとうございました』


小さな声が聞こえた。


一瞬幻聴かとも思ったけど、

聞き間違える訳がない。
あの声。

車のドアが閉まる音と、
発進するエンジンの音。


そして尋常じゃないスピードで
脈打つ俺の心臓。

コンコンと響く階段を上る音。


その音が止まったと同時に、

階段を上がりきった彼女が
俺の目の前に現れた。


『……ッ、』


ふと顔を上げて、
俺の姿を視界に捉えた彼女は

一瞬固まってから
ものすごい勢いで
俺とは反対方向に走り出した。


弾かれるようにその場から立ち上がって
瞬時に彼女の腕を掴んだ。


『…逃げんな』

『……』

『逃げんなよ』


頼むから。

今だけでいいから。

今だけ。

俺の前にいてほしい。


言いたいことだけ伝えたら
もう俺の方から消えるから。


そんな俺の気持ちが少し伝わったのか
彼女の強張っていた体から力が抜けて、


『…部屋、上がっていい?』


そう尋ねた俺の言葉にも
頷いてくれた。


『○○…』


部屋に入ってすぐに、
彼女の腕をまた掴んで自分の方に向かせた。

少しだけ合った視線に
単純に嬉しくなる。


『昨日のことなんだけど…
会えて嬉しかった。』


俺の掴んでいる彼女の腕が
少しだけ震えている。

下唇をギュッと噛んで俯く彼女に
手が伸びる。


『言いたいことあるなら言って』

『……』

『俺、エスパーじゃないから
言ってくれなきゃ分からない』


せめて、最後くらい。
彼女が我慢してるところなんて見たくない。

彼女が言いたがってることを聞きたい。


そう思って彼女の頬に触れると、

掴んでいた腕とともに、
その手も振りほどかれた。

いきなりの彼女のその行動に
驚いた俺の耳に届くのは


『…彼女、いるんでしょ?』


信じられない言葉。


衝撃的とも言えるその言葉に
しばらくフリーズして


『……は?』


やっと一言発することが出来たけれど

俺はもう完全にブチキレ。


『お前、何言ってんの?』


いつまでもこっちを見ない彼女。

同期が社内だけで言いふらしてた
俺と付き合ってるだの何だの。

そんな話がどうやって
彼女の耳に入って、
こんな勘違いをしてるのかなんて
知らないけれど、

彼女いるのに
他の女をホテルに連れ込むような
男だと思われた事に腹が立った。


『お前がいなかったこの3ヶ月間
俺がどんな気持ちだったか分かるか』

『……』

『好きな奴が急にいなくなった俺の気持ちが分かるか』


俺のその言葉に、彼女が顔を上げた。


こんなつもりじゃなかった。

もっと優しく。
紳士的に告白して。

笑顔で終わるつもりだった。

全てがうまくいかない。

でももう頭の中ぐっちゃぐちゃで、
動く口は止まらない。


『電話しても出ない。駅で待っててもこない。
しまいには家にもいない。』

『……』

『しかもやっと会えたと思ったら
俺のこと残して帰りやがって』

『……』

『なんでそんな勘違いしてるか知らないけど
彼女なんていない』

『……』

『俺は好きでもない奴とホテルなんて行かない』


勢い任せにそう言うと、
彼女の目から大粒の涙が溢れた。

ボロボロと止まらないその涙は、
彼女の頬に触れていた
俺の手をどんどんぬらしていく。

その涙の理由は
彼女の顔を見れば
すぐに分かった。


なんだよ。

なんでもっと早くその顔しなかったんだよ。


『○○だってそうじゃん。
好きでもない奴と行くような奴じゃないじゃん。』


ホテルで何度も思ったこと。

あの時はただの俺の期待だった。


でも、今は違う。


『俺とだから行ったんじゃん』


本気でそう思える。


彼女が俺を置いてホテルから出て行ったのも
きっと、その勘違いのせい。



止まらない涙を拭う彼女は、
フラフラと俺に手を伸ばしてくる。

ゆっくりと伸びてくる手が待てなくて、
自分からその手を握って
力強く引っ張った。




俺の腕の中に収まるのは、
好きで好きでたまらない子。




彼女がどんな気持ちだろうが、
俺のこの自分の気持ちを伝えよう。

別にいい。

彼女が手に入らなくても。


彼女がもう他の誰かのものでも。


自分の気持ちを言えたら
それでいい。


そう言い聞かせてたけど
やっぱり欲しかった。

自分のものにして
独り占めにしたかった。


彼女の存在を確かめるように
抱き締める俺の中から


『…福田くん』


彼女の鼻に詰まった声が聞こえる。


『…ん?』

『…好き』


その言葉に、
俺の目から一粒だけ涙が流れた。


大の男が。

もう歳もそれなりにとった男が。

泣くなんて気持ち悪いと
自分でも思うけど、

その言葉に情けないくらいに幸せになって
涙が溢れた。


『…うん』

『好き…ッ』

『うん。俺も好き』

『福田くん…』

『なに?』

『…好きッ…』

『聞いたってば』


もうこんなに嬉しい事はないかもしれない。
ってそのくらいに思った。


彼女に肩に触れて、
キスをする。

額を合わせて微笑むと、
目線を落とした彼女の顔が
どんどん赤く染まる。


『…顔赤いですよ?』

『…はず、かしい…』

『キスしただけで?』

『……ん…』


目をギュッとつぶりながら
頷く彼女は本当に恥ずかしそうなんだけど…


『僕たち昨日エッチしてますよ?』


なに1つ間違ってない俺の言葉に、
彼女は身体をビクンと震わすと

ただでさえ真っ赤だった顔を
もっと真っ赤にさせながら
俺に抱きついてきた。


初めて見る彼女の行動に
少し驚きながらも
俺の服に容赦なく鼻水をつける彼女に
笑いながら優しく抱きしめる。


『…これからもそうやって
俺の隣で泣いててよ。』


やっと。

やっとカッコいいこと言えたと思ったのに…


『…普通そこッ、笑ってて…とか、
言うもんじゃないの…ッ』


悪態をつく彼女。

でも、そんなところも
可愛くて仕方なくて、


『あなたの場合は泣いててくれた方が安心します』


って言ってあげた。


彼女の泣き顔は本当に不細工。

いつまでも泣き止まないから
どんどん酷くなっていく。


『泣いた顔、ブスだなぁ』


顔を覗き込んでそう言うと、
彼女は頬を膨らまして不貞腐れた。

タコみたいになったその顔に
笑いがこみ上げる。


『…○○』

『…はい』


彼女の髪に指を絡ませながら
口にするのは、


『俺と、付き合ってください』


言えると思っていなかった言葉。


自分の気持ちだけを伝える。

それしか出来ないと思っていたから、
この言葉を彼女に言えると
思ってなかった。


だから彼女が頷いたのを確認して、

彼女の返事の言葉ごと
全部飲み込んでやった。


唇を離すと、
少し怒った彼女に肩パンされた。


『福田くんってさ…』


俺の顔を両手で包む彼女が、
少し意地悪そうな顔をしながら


『私のこと、好きだよね』


って言ってきた。


何言ってんだよ。

こんなに俺のこと振り回しといて。

もうお前になんて振り回されねーかんな。

一生主導権は俺が握ってやる。


変なところで負けず嫌いを
発動させた俺は


『むしろ愛してるけどね』


全力のドヤ顔でそう答えて、
また彼女が溺れるくらいに
深いキスをした。


『…ほんとはね』


唇を離して
首筋にキスを落としていると、

彼女が口を開いた。

ふと動きを止めて、
その先の言葉を待つ。


『本当はもっと早く言いたかった』

『早くって?』


思わず顔を上げると
悲しそうな顔をした彼女がいて、


『私の気持ち』


そう言った。


『……』

『水族館でデートした時から。
ずっと言いたかった。』

『…え?』

『あの時から、ずっと福田くんのことが
好きだったから。』


どこまでも不器用な彼女は、
愛情表現も不器用らしい。


俺のこと好きだなんて、
さっきのさっきまで
全然気づかなかったつーの。


落ち込む彼女にキスをして、


『えっ、わっ、ええっ…!?』


お腹に腕を回して、


『ギャァァァアア!!!!』


肩に担ぐ。


前よりは少し軽くなった
彼女の体を担いで向かうのは寝室で…

思いっきりベッドの上に投げ飛ばす。


最初こそ驚いていたものの、
体験したことのある状況に
ベッドに転がりながら
ケラケラ笑う彼女。

俺もベッドに上がって
彼女の体の上に跨る。


『因みにね、○○ちゃん』

『んー?』


彼女の頬に触れながら
隣に寝転んだ俺の頬にも、
彼女の手が伸びてくる。


『僕はですね』

『うん』

『3年以上前からあなたが好きです』

『…へ?』

『コーヒー、美味かったです』

『…え!?どういう…ッ』

『好きだよ』

『ン…ッ』


もうこれ以上は教えてやんない。

自力で思い出せ。


目を瞑ることもしないで
ビックリした顔のまま
キスされる彼女に笑いながら、

そっと彼女の服に手をかけた。








fin.


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