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さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

ヤンキー岩本くん 〜雨の日編〜



ヤンキー岩本くんの作中での
とある日のお話ってことで。


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口にくわえてるだけの歯ブラシは、
もはや意味を成してない気がする。


歯ブラシというのは
歯を磨いて綺麗にするために
あるものなのに

口にくわえただけで
あたしの手は左右ともブラシを握って
歯を磨こうとはせずに

せわしなく鞄にあれこれと
詰めるために動いている。



お弁当を入れて。

小腹がすいたとき用のチョコも入れて。

ペットボトルのお茶も入れて。

昨日面倒くさがりながらも
やり終えた課題も入れて。




ーー今日は全国的に朝から雨が降るでしょう



テレビから漏れるそんな声を聞きながら、
窓の外に目を向けて、

今にも雨が降りそうな黒い雲と、
まだ雨に濡れていない地面を確認して

折りたたみ傘も鞄に詰め込んだ。



くわえてた歯ブラシを吐き出して
何度もうがいをして、


『いってきまーす!』


ローファーを履いて外に出て、

雨の匂いがする空気を感じながら
学校へ向かって歩き出した。












教室に着いてすぐに、
机に突っ伏して寝てる奴が目に入る。


『おはよ』


その頭をポンと叩けば、
むくりと起き上がるヤンキー。


『なんだ、お前か』

『おはよーん』

『はよ』


今日もブレずに周りから
少し距離を置かれている
強面のヤンキー岩本くんは
だるそうに頬杖をつきながら
身体を机から起こした。


ついこの前やった席替えで
あたしは1番前の真ん中の席の
番号が書かれたクジを引き当てた。

教卓目の前の超特等席。


…最悪…


げんなりした気分で
机を移動しようとしていたら、
半泣きになったクラスメイトの女の子が
ものすごい勢いでやってきて、


『○○ちゃんッ!お願いッ!
席交換してッ!!』


あたしに掴み掛かりながら
懇願してきた。


特に仲良しって訳でもない
彼女からの言葉に


なんであたし?

良い席でもないのに。


って不思議だったけど、
彼女に渡されたクジの番号を見て

納得した。



『…んだよ。お前の後ろかよ。』


後ろから聞こえた声に振り返ると、
ヤンキーの岩本くん。


『ヨッスヨッス』

『お前の顔見飽きたわ』


嫌味ぶっこいてくる岩本くんだけど、
こっちは面白くて仕方ない。


『何ニヤニヤしてんだよ』

『別にぃ〜』

『馬鹿だな』


ニヤニヤした顔を戻せないまま、
身体を前に向き直すと

教卓目の前の席に座る彼女が
心配そうにあたしを見ていた。


ヒラヒラと手を振ると、
少しだけ彼女の顔がほころんだ。


『岩本くんの前の席なんて
怖すぎて無理ッ!!!』


って言っていた彼女の言葉を思い出す。


昼休みを一緒に過ごすようになって
麻痺してたけど

やっぱりヤンキーの岩本くんは
怖がられてる存在みたいで
岩本くんと仲の良いあたしなら…
って事で交換を申してきたらしい。

あたしからしたら
教卓前の特等席から逃れられただけじゃなく、
1番窓際の後ろから2番目の席なんて、

良い事だらけで不満なんて何もない。




…にしても。
岩本くんを怖がっている
クラスメイト達に、

いや、学年中…
学校中のみんなに教えてあげたい。


本当はチョコレートを心から愛する
男だということを。

ヤンキーの皮を被った、
ただの女子だということを。


『お前なんか失礼なこと考えてるだろ』

『ん?』


少し不満そうな顔をして
あたしを睨む岩本くん。


『岩本くんって可愛いよね』

『…は?』

『実は岩本くん、中身女の子だもんね』

『……』

『チョコがないと生きていけないんだもんね』

『……』

『可愛い可愛い』

『……』

『とぉーっても可愛い』

『…てめぇ』


今のこの状況を
見ている周りの人は

あたしが岩本くんに何かしらを言って
岩本くんを怒らせた…
って思うんだろうけど。


あたしには分かる。


これは少し恥ずかしがってる顔。

それを隠すために睨んじゃってる顔。


どんなに睨まれても怖くない。


ニヤニヤし続けるあたしの頭を
岩本くんがペシンと叩いた瞬間、
教卓目の前の席に座る彼女が
白目になったのが見えた。




…そんなこんながあって、
あたしは岩本くんの前の席になった。


カバンを机の脇にあるフックにかけて、
椅子に座ったら

岩本くんがあたしの髪に
いきなり触れて来た。


『わぁぁッ!!なにッ!?』


ビックリして大声を出したあたしが
弾かれるように後ろに振り返る。


『お前なんでそんなに髪濡れて…』


岩本くんは何か言ったかと思ったら、
今度はジロジロ全身を見てくる。


『…ん?』


あたしの髪に触れた右手を
宙ぶらりんにしたままの岩本くんは
上から下までじっくりあたしを眺めた後に


『なんでお前そんな全身ずぶ濡れなんだよ』


眉間にしわを寄せながら
そう言ってきた。


『あたし?』

『お前以外誰がいんだよ』

『あたしが何?』

『だからなんでそんなに濡れてんだよ』


岩本くんのいう通り、
“全身ずぶ濡れ”のあたしは
タオルを取り出そうと
カバンの中をごそごそと漁る。


『朝から雨って予報だっただろーが』

『降ってなかったもん』

『は?』

『家出てくる時は降ってなかったの!』

『お前なぁ…』

『傘持って歩くの嫌いなの』

『だからって…』

『両手空けて歩きたいの』


傘を持ちながら歩くのは
小学生の頃から嫌いだった。

今日も家を出てくるときは
降ってなかったから
折りたたみ傘をカバンに入れて
雨が降る前に学校に着こうと思ってたのに

ものの見事に
出発した5分後に土砂降り。

折りたたみ傘はやっぱり頼りなくて
強い雨風に負けっぱなし。

あたしは朝からずぶ濡れになった。


『だから折りたたみ傘入れてきたの』

『すぐ使うじゃねーか』

『使わないかもしれないじゃん』

『ずぶ濡れになってんだからただの馬鹿だろ』


カバンを漁るのをやめて
椅子に座り直したあたしの頭に
少し大きめのタオルが
バサっと被さった。


『…お?』

『タオルも持ってきてねーのかよ』

『あは。バレた?』

『使え』

『あざーす』

『女子なんだからそれくらい持ってこいよ』

『持ってこようと思ってたの!
忘れちゃっただけ!』

『何怒ってんだお前』


女子力の低さを馬鹿にされて
ちょっと面白くなくなる。


プリプリしながら椅子に横向きに座って
足を机の外に出して濡れた紺ソを脱ぐ。

どっちかというと濡れると厄介なのは
髪の毛とか服よりも
足元の靴下だったりする。


『よいしょっと』


水分をたくさん含んだ紺ソは
脱ぐのも一苦労。

やっと脱げた紺ソを手にして
ふぅ、と顔を上げると

さっきまで後ろの席に座ってた
岩本くんが目の前に立っていた。


『…へ?』


なんでか怒ってるっぽいその表情に
ちょっと焦るあたし。

いくら岩本くんの中身が
可愛い女子だと分かっていても

本気で怒ったら
見た目通りにヤンキーで怖い。

それは百も承知。


…え?あたしがタオル貸してもらった分際で
ふて腐れた態度とったから怒った?

いや、でもそんなちっちゃい事で?


『…え、なに?…え?』


挙動不審になって
一生懸命問いかけるあたしを
ガン無視した岩本くんは
着ていたカーディガンを脱いで

今度はあたしの膝の上に掛けた。


なんだなんだ?
と、目を丸くして
岩本くんを見上げていると

彼は振り返って、
廊下側の席に集まっていた
2、3人の男子集団を睨んだ。

岩本くんからの視線に
ビクッと身を縮こませている彼ら。


何が何だか分からないあたしの元に
岩本くんの視線が戻ってくる。


『お前あいつらに見られてたぞ』

『何が?』

『スカート気を付けろっつってんだよ』


スカート履いてることなんて気にしないで
豪快に足を上げて紺ソを脱いでたあたしは
男子に見られてたっぽい。

…あたしのなんて見て
得なんてしないのに(笑)


『あー、大丈夫だよ。
下に紺パン履いてるし』

『そういう問題じゃねぇ』

『あたしのスカートの中なんて
見ても良い事ないのにね〜』


そう言いながら脱いだ紺ソを
どこに干そうかなんて考えてたら

いきなり頭をタオルごとガシッと掴まれて
ワシャワシャと髪を拭かれた。

いや、もう拭いてない。
頭を振り回されてるに近い。


『ぎゃぁぁ!!やめてぇぇ!!!』


目が回る気持ち悪さに
岩本くんの腕を掴むけど、

さすがは筋トレ大好きヤンキー…
全くビクともしない。


『…チッ』


小さく聞こえた舌打ちと、
頭を叩かれる感覚と共に
地獄のトルネードは終わりを迎えた。


『靴下乾くまでそれ膝に掛けとけ馬鹿』


あたしの膝に掛けてくれた
自分のカーディガンを指差しながらそう言って

後ろの自分の席に戻った岩本くんは
今度は優しくあたしの頭を拭き出した。


『ちゃんと傘刺せや』

『……』

『生足ホイホイ出しやがって』

『……』

『だいたいこんな濡れて
風邪引いたらどうすんだよ』

『……』

『おい、聞いてんのか馬鹿』


頭に被せられたタオル。

膝に掛けられたカーディガン。


全身から香る、
岩本くんの香水の匂いに
気持ちよくなって


『眠くなってきたぁ…』


思わずそう口にしたあたしの頭が

またガシッと掴まれて…


『反省してねぇみたいだな』

『…あ…』


気付いた時にはもう遅くて、


『ぐぉめんなさぁぁ〜〜いッッ!!!』


朝っぱらから教室内に
頭を振り回されながら
絶叫するあたしの声が響いた。




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ドーモでございます。
さうでございます。

この間、長きに渡って書いていた
“福田くん”を無事に完結する事が出来て
ホッとしている心内でございます。

福田くんを読んでくださっていた皆様。
読んでくださらなかった皆様も(笑)

ありがとうございます。
本当にありがとうございます。


趣味の範囲でヘラヘラしながら
書き始めたお話でしたが、
あんなに反響があって、

もうびっくりしまくりました。


こんな素人がぽちぽちと、細々と
書いていたお話を
楽しみにして下さったり…
感想を伝えて下さったり…
とても嬉しかったです。


さーさてさて、さてはなんきんたますだれ


福田くんを書いていた間
潜伏しまくっていたお話たちの下書きを
久々に開いてみたら
1年近く前に書いていたものまで見つかって
あらまぁびっくり☆

しかも触りだけを
書き殴ったみたいな状態で
保存されていて
こりゃまたびっくり☆


てな訳で、
記憶をほじくり返しながら
またちょろちょろと
お話を書いていきたいと思います。


今回みたいに、番外編とか。
その後のお話とか。
また別の人のお話とか。


お付き合い頂ければと思います。


書きたいお話はいっぱいあるのよ。
国語能力が無いから
文章にするのに時間がかかりまくるのよ。

エヘヘッ

温かい目でお守り頂けると
とても嬉しいです。


ハマタ