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さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

ヤンキー岩本くん 〜ライバル編〜 【上】

ジャニーズ 妄想



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あたしの好きな人は、

超が付くほどのヤンキーだ。














…はて。

ここはどこだろう。


まぶたを開けた視界に広がるのは
見覚えのないコンクリートの天井。



最悪の事態を想像して
自分の体に目を向けるけど

着衣に乱れは無く、
制服のスカーフもきっちり結ばれている。



ただ、ここがどこだか分からない。



確か今日は、
ふっかと2人で放課後にカフェに来てた。

秋晴れがすごく気持ちよくて
外のあったかい空気に誘われて
テラス席で紅茶と一緒に
ワッフルを食べていた。

…はず。


ワッフルの上にあまーいシロップと
ホイップクリームを乗せて
頬張っていたところまで覚えてる。

あとふっかがトイレに
立ったところまで覚えてる。



…そこからの記憶がない。



寝かされていたソファから
むくりと体を起こすと、

少し離れたところで
バイクをいじってる人が見える。




…どっかで見たことあるその髪型。


じーーーっと目を凝らして
バイクに夢中になるその後ろ姿を
眺めていると、


『…ん?』


振り返ったその顔に、


『あ!』


思わず声が出た。


『んだよ、起きてたのかよ』


バイクをいじる工具を、
カランと床に投げると
のっそり立ち上がってあたしに近づいてくる。



どっかで見たことのある
爽やかなツーブロックのショートヘア。

優秀な人しか着ることの出来ない
カッコいい校章が左胸についたブレザー。

それはどう見ても東高の制服。


つまりこいつは…


『カラオケ屋以来だな』


いつぞやのツーブロ野郎だった。


口をぽかんと開けたままのあたしに
ツーブロ野郎が片眉を少し上げる。


『どうした』

『…何が何だか』

『とりあえず静かにしろ、人質なんだから』


サラッととんでもない言葉を発した
ツーブロ野郎に目ん玉が飛び出た。


『あたし人質?』

『そうだよ』

『え?あたし人質?』

『そうだっつってんだろ』

『えー!人質ー!?』

『っだよ!うるせーな!!』


目の前まで来ていたツーブロ野郎は
あたしの頭をパシンと叩いた。


『どんだけ危機感ねぇんだよお前!
この状況下で人質って言われてんだぞ!!』

『ごめんごめん。
ちょっと興奮しちゃって…』

『お前なぁ…』

『ありがとん』

『褒めてねぇよ』


盛大にため息をつかれる。


て言うかずっと気になってた。

説明しにくいけど…

なんだか違和感を感じる。


なんだろう…

なんだろう…

なんか…


『あんたってそんな感じだったっけ?』


今まで呆れ顔だったのに、
その言葉を言った瞬間

ニヤリと笑って前かがみになって
あたしに目線を合わせてきた。


『あんなに俺のこと嫌がっておきながら
実はしっかり覚えてんじゃん』


少し嬉しそうに見えるその微笑みは
絶えることなくあたしに向けられる。


『あれは外面用』

『そとづら?』

『そ。あんだけ愛想よく爽やかに振舞ってれば
大体の人間は味方についてくれんだよ』


確かにあのカラオケに来てた女の子達で
1人の子はこいつに連絡先聞いたり
していたのを思い出した。


あたしも爽やかな印象を受けてたし…


それを全て計算でやってたかと思うと
…只者じゃねーぞ、こいつ。


ポケットに手を突っ込んで
あたしから離れた彼は

舌打ちをしながら手元のケータイを
眺め出した。

でもそのケータイはどう見てもあたしので、


『は!?
なんであたしのケータイ持ってんの!?』


自分のスカートのポッケの中を
探りながら問いただす。


『お前のケータイのロック番号教えろよ』


ただでさえ意味不明なのに
あたしの質問丸無視で、
そう言うから余計に腹が立ってくる。


『嫌だわ!』

『お前のケータイロックかかってたから
岩本に脅迫電話出来なかったんだよ』

『…ッきょ…!?』


脅迫電話とはなんとも恐ろしい…


『Siriに言っても反応しねぇし』

『な、んて言ったの?』

『“いわもとひかるにでんわ”』

『それなら無理だわ』

『なんで』

『ひーくんで登録してるから』

『は?お前岩本のこと
ひーくんって呼んでんの?』

『呼んでない』

『は?』

『呼んでないけど
あえてひーくんで登録してんの』

『意味分かんねぇ』


眉間にしわを寄せて
そう言い捨てたツーブロ野郎は
またバイクの前にしゃがんで
いろいろいじり始めた。


自分もソファから立ち上がって
バイクの前にしゃがむ彼の隣に
一緒になってしゃがみ込む。

バイクなんて無知なあたしでも分かるくらいに
ピカピカに改造されたバイク。

隣を見ると心なしか
目を輝かせる男が目に入る。


バイク改造すんのって難しい?』

『勉強よりは簡単』

『ケータイ返してよ』

『後でな』

『これなんていうの?』

『マフラー』

『ケータイ返してよ』

『後で』

『ケチ』


ぷぅっと膨らました頰を
変な顔で見てくる。


『マジで岩本の好みが分かんねぇ』

『は?』

『お前無人島でも1人で生きていけそうだよな』

『は?なに?喧嘩売ってんの?』

『お前より俺のが強いからやめとけ』

『ねぇ、ここ寒くない?』


会話をぶった切って自分の体を
縮こめながらそう言うあたしに
盛大なため息をついて、


『お前と話してると頭痛ぇ』


ってボヤいたツーブロ野郎は
本当に頭痛そうな顔をしながら
立ち上がってどっかに歩いて行った。


不意に1人にされて
ぼーっと目の前の分かるわけもない
バイクの部品一つ一つを眺めていると、

パサっと何かが首元にかかった。


『それくらいしかないから我慢しろ』


ぶっきらぼうにそう言った
そいつがあたしにかけてくれたのは
東高の指定マフラーだった。


『ありがとー』


ぬくぬくと首に巻き直しながら
気になっていたことを聞く。


『ねぇ、一つ質問していい?』

『あ?』

『なんであたしここにいるの?』

『なにが?』

『こんな見覚えのないところ』

『あぁ』

『なんで?』

『俺が攫ってきたから』


開いた口が塞がらなかった。


どうやらあたしは、
ふっかがトイレに立った隙を狙って
こいつに攫われたらしい。

一体全体どんな手段を使って
あたしを気絶させたかは教えてくれなかったけど

このご自慢のバイクに乗せて
ここまで来たことは教えてくれた。


マジでそんなのドラマとか漫画の中での
出来事だと思ってた。

攫うとか…

いやマジで…


『犯罪じゃん…』


ボソッと呟いたあたしに
鋭い目が向く。


『これバレたら犯罪になるよ?』

『……』

『少年Aって書かれるんだよ』

『うるせぇな』

『いつもこんなことしてんの?』

『いつもはしてねーよ』

『て事は初めてじゃないのね』

『……』


黙りこくった彼。


『将来不安ねぇ、進学校の生徒が』


そう言うと、少し寂しそうに
瞳が揺らいだ。

その瞳を見ていられなくて
東高の指定マフラーに顔を埋めながら
目をそらした。


『ねぇ、なんであたしなの?』

『……』

『なんであたしのこと攫って
岩本くんに電話しようとしたの?』

『……』

『えーくん、岩本くんと知り合いなの?』

『…えーくん?』

『あたしあんたの名前知らないから、
少年Aのえーくん』


ナイスネーミングセンスだと思ったのに、
えーくんはお気に召さなかったようで
ブツブツと文句を言いながら
また手を動かしてバイクをいじる。


『ちょっと!質問に答えてよ!』

『質問一つじゃなかったのかよ』

『ケチ』


2度目の“ケチ”発言をすると、
えーくんは小さく舌打ちをして

あたしにグッと顔を近づけて


『嫌いだから』


低い声でそう言った。


『嫌い…?』

『そう。嫌い。』

『あたしを?』

『岩本を』

『岩本くんのこと嫌いなの?』

『大嫌い』

『はぁ…』

『だから岩本が気に入ってるお前攫って
焦らせてやろうと思って攫った。』


口調はぶっきら棒ですてばちなんだけど、
えーくんの瞳はなんだか寂しそうで…


『ほんとは?』


思わずそう聞いてしまった。


『…は?』


こっちを見るえーくんは
眉間にシワを寄せまくり。


そんなことは置いといて、
さっきから少し思うことがある。


『何言ってんだ、馬鹿』


なんか口調とか…

雰囲気が…


『似てるよね、岩本くんとえーくん』


そっくりなんだ。



あたしの言葉に
目をまん丸くさせたえーくんは
ピクリとも動かずにあたしを見る。


『本当に嫌いなの?』

『……』

『深く知ってないと』

『……』

『そこまで似ないと思うの』

『……』

『ねぇ、えーくん。』

『……』

『岩本くんのこと、本当に嫌い?』



どうやら彼は
あたしの質問に答えそうもない。

小さくため息をついて
目の前に転がってたドライバーを
手に取ろうとしたあたしの腕が
力強く掴まれた。


『お前、こんな状況で
よく俺の機嫌損ねるようなこと聞けるな』

『こんな状況?』


次の瞬間、工具がコンクリートの上に
投げ飛ばされる音が聞こえて…

背中に冷たくて固い感触が走った。


『すぐヤれる状況』


目の前にある彼の表情には
もう“爽やかさ”なんて一ミリもない。

ただ、その虚無的な瞳に
あたしを映す。


コンクリートの床に
肩を押し付ける腕に力が入って、

覆いかぶさってくるえーくんは

少しずつ、あたしに顔を近づけてくる。


その長い睫毛が少し下を向いて
あたしの唇を捉えたけど、


『でも、ヤらないでしょ?』


あたしの想像通り、
彼は動きを止めた。


『ヤれるし』

『あんたはヤらない』

『てめ…』

『とりあえずどいて。
あたし今パンツ丸見えなの。』


勢いよく押し倒された衝撃で
あたしはマジでスカートがめくれて
パンツが丸見えになってた。

角度的に自分からも、
えーくんにも見えてないけれど

スカートがめくれているのは
気分が良いものじゃない。


えーくんの肩を押しながらそう頼むと、


『お前、良い女だな』


当たり前のことを言ってきた。


『よく言われる』

『少しは謙遜しろや』

『じゃあ最初から褒めないでよ』

『良いな、お前』

『なにが?』

『岩本なんかにはもったいねーわ』

『“なんか”なんて言わないでよ、
岩本くんのこと』

『あー、まじで良いわお前』


少し笑みをこぼしながらそう言うと、
あたしの腕を引っ張って
勢いよく起こされる。

勢い余ってえーくんの身体に
思いっきりダイブさせられた
あたしの体を、

彼はギュッと抱き締めた。


『何すん…』

『嫌いだよ、あんな奴』


あたしの声に被せながら
小さい声でそう言った。


『なにが?』

『岩本のこと』

『あぁ、』


自嘲的に笑いながら
あたしの髪に顔を埋める。


『あいつと喧嘩して
一回も勝てたことねぇんだよ』

『……』

『今まで負けなしだったのに
あいつにはマジで勝てねぇ』

『……』

『涼しい顔して喧嘩に勝つあいつ見て、
めちゃくちゃカッコいいって思った…』


抱き締められてるから顔は見えないけど、
ゆっくり話すえーくんの声は
低くて切なかった。


『あいつ、俺にないものみんな持ってんだよ』

『ないもの?』


きっと今、えーくんの目に
あたしは写ってない。

あたしに話してるんじゃない。

彼が今までずっと心に隠してた
岩本くんへの想いを
声に出してるだけ。


『無愛想にしてるくせに人が寄ってきて
誰からも一目置かれてて

自分貫いてて。

あいつの中身知った奴は
全員あいつのこと好きになる。

男も女も関係なく。
あいつの人間性に惚れる。

あいつのそういうところ
見せられるたびに劣等感感じるようになった。

“俺は岩本みたいになんてなれない”
ただただ痛感させられた。』


えーくんの言いたい事が
痛いほど分かった。

あたしも、そうだったから。

岩本くんの近くにいて
“あたしだったらこんな風に出来ない”

って何度も思ったことがある。


あたしはえーくんと違って女だし、
プライドも高くないから

そんな岩本くんの人間性を
素直に受け入れることが出来たけど

男である上に自尊心があったえーくんは
劣等感を感じちゃったんだと思う。


『ライバルなんて言えないくらい、
俺にあいつは眩しすぎた。』


背中に回されたえーくんの腕は
痛いくらいにあたしを締め付ける。


『だから嫌いなんだ。あいつのこと。』

『……』

『いろんな魅力があるあいつが』

『……』

『俺にないもの全部持ってるあいつが』

『……』

『大嫌いなんだ』


嫌いになれないと、やってけなかったんだ。


尊敬にも近いその気持ちを
受け入れるには大きすぎて、

嫌いになれないと

やってけなかったんだね。


『…でも』


今まで黙りこくってたあたしの声に
えーくんの腕の力が少しゆるまって、


『えーくんにはえーくんの
魅力あるじゃん』


ピタリと身体が固まった。


『…なんだよ』

『へ?』

『俺の魅力って』

『……』

『言ってみろよ』

『優しいじゃん』


あまりにも意外だったのか
今まで抱きしめてたあたしの身体を
離すと同時に、
大きく見開いた目であたしを見た。


『俺が?』

『うん』

『ど、こが?』

『攫ってきたことはまぁ置いといて…

普通ならその辺に転がしとけばいいのに
ちゃんとソファに寝かしといてくれたり、
マフラー貸してくれたり、
こうやってちゃんと話してくれたり…』

『……』

『えーくんは優しいよ』


今にも泣き出しそうな彼の頭を
優しく撫でると、
彼はまたあたしの腕を引っ張って
力強く抱きしめた。


『よしよし』


頭をポンポンしてやると、
小さく舌打ちする音が聞こえる。


『ヤんぞコラ』

『出来ないくせに』

『ムカつく女』


やっぱりプライドが高い。

手に取るように分かる
えーくんの心情に
クスクス笑うあたしに、

えーくんが問いかける。


『なぁ』

『ん?』

『お前、俺と付き合わない?』









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特技はタイトル詐欺です。

岩本くん出てきてないネ。


(土下座)



【下】に続きます。