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さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

Love Liar 【2】

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基本的にあまり運は良くない方。


別に悪いってわけじゃないけど
ラッキーガール☆
とか言えるほど良くはない。

そんな私なのに


こんな事ってあるんだぁ…



目をパチパチさせるしか出来ない
私の前で手を振りながら


「おーい、戻っておいで〜」


なんて笑顔で言う彼は
やっぱりあの結婚式の日と変わらず
モテそうなイケメン。


「…は、はい」


彼は、気の抜けた返事をかます私に
「なんだよその返事」って
呆れるように笑った。


「ニカからよく聞く
○○ちゃんって君のことだったんだ」

「た、たつ…みさんも
ニカからよく聞いてます…」

「雄大でいいよ」

「…へっ?」

「ニカは?」

「あ、まだ、お店の中に」


え?いま雄大でいいって言った?

呼び捨て?

呼び捨てでいいって事?

え?ちょっと待って。

…え?

…マジか。


口を“ゆ”の形のまま
動けなくなる私をよそに

彼はガラガラと音を鳴らしながら
お店の扉を開けた。


「席どこ?」

「突き当たり、右です」

「りょーかい」


彼は脱いだ靴を靴箱に入れず
隅っこの方に揃えて置く。

きっとそれはニカを連れ出して
すぐにお店を出るから。


2人掛けの小さな個室に入ると
ニカは私が個室を出た時と変わらず
突っ伏したまま一ミリも動いてなかった。


「ニカ〜帰るよ〜」


ニカの頬をさっきの私と同じように
ペチペチと叩いた彼は
ニカのバックから黒の財布を取り出して
私に渡してきた。


「お会計、お願いしてもいい?
俺ニカおぶっちゃうから」

「え?」

「ここから出して」

「え?」

「よろしくね」


さすがにニカのだったとしても
人の財布からお金を出すのは気が引ける。

ためらいの気持ちを隠せない私に
彼は「ん?」って言いながら
大きい目をもっと見開いて私の顔を見る。


「…えっと、」

「どうしたの?」

「ニカ、寝てるし…」

「うん?」

「いつも奢ってもらってるから…」

「ニカに言われてるから」


歯切れ悪くモゴモゴと喋る私に
彼は被せ気味にそう言った。


「…へ?」

「○○にお金払わせないでって」


いきなり呼ばれた呼び捨てに
心臓がドクンと鳴った。

彼は私の手を取って
ニカの財布を握らせる。


「だから大丈夫だよ」

「でも…
いつもご馳走してもらってるから今日は…」


握られたせいで
手にびっしゃりとかいた私の汗を
気にすることなく彼はにっこり笑う。


「うん、でもニカに出させてあげて?」

「……」

「じゃないと俺が怒られちゃうから」


その言葉に何も言えなくなって
大人しくニカの財布を受け取った。


彼の手が握らせてくれた
ニカの財布だけど…


やっぱり、どうしても人の財布から
お金を出すのは気が引ける。

それに一緒に飲むと、
毎回全額出してくれるニカに
お返しをしたいと思っていたところだし…

私はレジにいるスタッフに伝票を渡して
白い財布を開いた。










「ちゃんとニカの財布から出した?」


個室に戻った私に
彼は第一声でそう言ってきた。


「…出させてもらいました」

「ありがとね」


もうすでにニカをおぶっていた彼の手には
私のカバンとニカのカバン
2つが持たれていて、
慌ててその2つのカバンに手を伸ばす。

ちょっと強引に彼の腕から
カバンを取ったから
取っ手が彼の腕に引っかかって
痛そうだったけど彼は、


「イケるかと思ったんだけど
やっぱり厳しかった!」


って笑った。


その笑顔のまま
「ごめんね〜」と、言った彼は
ニカをおぶり直して
お店の出入り口まで向かう。


もう夢の中でぐっすりのニカは
気持ちよさそうにアヒル口
むにゃむにゃと口を動かしながら
彼に身を委ねていて

ニカが彼を信頼してるが故の
そのだらしない顔が笑えた。



…にしても。

視覚効果というのは
とても大切なことらしい。


やっぱり私は現金な奴で
男の人が苦手だと言っておきながら
イケメンにはめっぽう弱いらしい。


どこからどう見ても、彼はイケメンだ。

身長は高くないかもしれないけど
低くはない。

その辺の女子より顔は小さいし
目はおっきいし

6:4くらいの割合で可愛さとかっこよさを
兼ねそろえている上に
オシャレときたもんだ。


男の人は苦手。

でもイケメンに話しかけられるのは嬉しい。


私は救えないほどに自分勝手。



ニカを背中におぶったままの
彼の後に続いて歩く。

暖簾をくぐって外に出る。

思いがけない再会のせいで
体温が上がっていたのか、

さっきは寒いと感じていた外の空気も
体を冷ましてくれるには
ちょうどいいくらいだった。


はー、と白い息を吐いて
くるりと振り返ってくる彼。


「じゃあニカの荷物預かるよ」

「あ、いや…」

「ありがと」

「あの…私、持ちます。」

「ん?」

「ニカと飲んでたの私だし…
責任あるんでニカのこと
家まで一緒に送らせてください。」


元はと言えば私がちゃんと
ニカのペースを見ていれば
ここまで酔いつぶれることは無かった。

その申し訳なさを
実はさっきから感じていた。

だからそう言っただけなのに…


「やっぱり」


彼はしたり顔で私を見る。


「ニカの言ってた通りだ」

「…え?」

「ニカがいつも言ってる。
○○は優しいって。」

「そ、それは…」


褒められることなんて滅多にないから
どう反応していいか分からず目を泳がせる。


「でも、そのせいで損してるとも言ってた」

「…損…」

「詳しい事は知らないけど」


詳しく知られていたら困る。

特に私の秘密のコンプレックスなんて
知られていたりなんてしたら。


「じゃあ荷物頼もうかな!
すぐそこなんだウチの家」


あーん。

やっぱりイケメン…。



第三者から見た私は
“優しいせいで損してる”らしい。

本当は腹の中でこんな事考えてるのに。


彼がニカを迎えにきてから
改めて痛感させられている
自分勝手さに思わず笑ってしまった。


私の腹の中なんて知る由もない
彼は、私の笑った顔を見て

何を勘違いしたのか楽しそうに笑って
「こっち」と言って歩き出した。





言ってた通り、彼の家は
歩いて5分も経たない場所にあった。


「ここの角部屋なんだよね」


って言って1番手前の
101号室と書かれた玄関ドアを横目に
奥へと歩いていく。


102…103…

と、数字順に並んだ
ドアを何個か通り過ぎて…


「ここがウチ」


1番端の玄関ドアの前でそう言った。


「本当に近いんですね…」

「言ったじゃん」


訳のわからないドヤ顔をしていたけれど、
私は彼が手にしている鍵が
今まで見たことないような
鍵だったからそこにばっかり気を取られた。


だからかもしれない。


鍵の形が普通の…

っていうか私が使い慣れた
シリンダー型のものじゃなくて

電子マネーみたいな形のやつを
差し込んだだけで開くタイプの鍵に
気を取られていたからかもしれない。


「上がってって〜」


ナチュラル過ぎる誘いに
「あ、はい」って返事しちゃったのは
絶対にそのせいだと思った。


自分の口から出た言葉に
後悔した瞬間にはもう遅くて、

私が家に入ってくると
信じて疑っていない様子の彼は
玄関を開けっぱなしにしたまま
部屋の奥に進んでいく。


私、帰ります。

ニカのこと迎えに来てくれて
ありがとうございました。


って伝えて帰らなきゃ…


「寒いから早く入ってきな〜」

「あ、はい」


1回目の“あ、はい”
は、鍵に気を取られたせいではなく
自分の反射的に出した言葉ってことと、

後悔したくせにすぐ同じ失敗を
繰り返した自分の愚かさを呪いながら


「内鍵よろしくね」


って言って来た彼に向かって


「あ、はい」


ってまたしても同じ失敗をした自分に

私ってとことんどうしようもない…

って小さくヘコんだ。







会って2回目。

って言っても名前以外
ほとんど何も知らない人の家に
入るなんて緊張しかしない。

しかも男の人の一人暮らしの家なんて…

しかもしかもイケメンの家なんて…

私にはハードルが高過ぎる。


「おじゃましまんもす」


少しでも自分を落ち着かせようと
面白くもないギャグを小声で
発しながら靴を脱ごうとすると


「いらっしゃいまんもす」


ってクスクス笑いながら返されて
聞こえてたのかよ!!!って、
気絶しそうなくらい恥ずかしくなった。



言われた通り内鍵を閉める。

自分の脱いだ靴と、
彼の脱いだ靴を揃えて、
振り返った目線の先には

すりガラス製のオシャレな
両開きの引き戸を閉めながら
こっちを見ている彼がいた。


きっとその引き戸の奥にある
寝室にニカを寝かせてきたんだろう。


「コーヒー飲める?」

「飲めます…」

「寒い?」

「…え?」

「ごめんね、暖房効くまでもう少し待ってね」

「いえ、全然…」

「その辺座ってて〜」


その辺って言われて
座るところを探してみるけど…


迷う。


キッチンでコーヒーを淹れる
彼のすぐ後ろには
4人掛けのダイニングテーブル。

そしてその奥に
2人掛けのソファ。


4人掛けの方がいいの?

でもなんかテーブルの上に
色々乗ってる…

わざわざ私なんかがコーヒー飲むだけのために
テーブルの上片付けてもらうのは申し訳ない。


でもソファ…?

確かにソファの前に置かれてる
ローテーブルの上は
綺麗に片付いてるけど
2人掛けって密着度高くない…?


どうしよう。

どっちが正解?

一体全体どっちが…


「…何してんの?」


マグカップを両手に
振り返った彼の言葉はごもっとも。


「え、と…どっちに、座れば…」

「あー!ごめんごめん!
もしかして迷ってた?
こっちのテーブル汚いからソファ行こっか!」


密着度の高い方を指定されて、
やっと私はその場から動くことが出来た。


「どうぞ」って言われた声に促されて
先にソファに向かう。


「失礼します…」


身を屈めながらソファに座ると、
さっきからずっと笑いを堪える
顔をしていた彼がついに吹き出した。


「○○ちゃん、いま猫被ってるよね?」

「え!?」


なんでバレた!?と言わんばかりの
大声で驚いた私の前に
マグカップを置きながら隣に座ってくる。


「ニカから聞いてるって」

「な、何を!?」


今までニカの前でやらかした事は
星の数ほどある。

そのうちどれを聞いたの!?

あいつは一体そのうちのどれを
このイケメンに話したの!?


背中に冷や汗をかきまくる私に、


「俺あれ好き!鼻からそうめん事件!」


彼が楽しそうにそう言った。


「あとね、サブウェイ事件とか〜
飛行機事件とか〜」

「え!?ちょっと待って!
どこまで知ってんの!?」

「結構聞いてるよ(笑)」


若気の至り…
でも確かに私の黒歴史

友達に全部事件扱いされるくらい
若気の至りの黒歴史


もうこの人の前で
猫被っても仕方ない…


大きなため息を吐く私を
楽しそうに眺める彼。


男の人への苦手意識やら
さっきまでの緊張やら

ポーンっとどっかに飛んでく音がして…


「くそニカ…」


低い声でニカが寝てる
すりガラスの向こうを睨む。


骨付きカルビ事件も
聞いたときは爆笑したな〜」


その話まで知ってんのかよ!
って心の中で叫んで、

恥ずかしさをごまかすために
目の前に置かれたコーヒーに
砂糖を2杯ぶち込んで思いっきり飲み干した。



どうやら私の場合、

素を出せるって事は、
“男の人が苦手”っていう垣根も越えるらしい。


彼の家をおいとましようとする頃には
彼の面白い話に、手を叩きながら
ゲラゲラ笑うほどにまでなっていた。


私が歩いてフローリングが軋んだ時は
“こいつ体重重いな”
って思われたりしないかな…

とか思うほどに緊張してたのが
嘘かなってくらい
奥歯までしっかり見えちゃうくらい
口を大きく開けてゲラゲラ笑った。


「本当に駅まで送らなくていいの?」

「うん、全然平気。すぐそこだし」

「じゃあ気をつけてね」

「うん、ニカにもよろしくね」

「うん。おやすみ」

「雄大くんもおやすみ」


玄関を開けながら
見送りしてくれている彼に
手を振って歩き出そうとすると、


「あ、そーだ」

「ん?」


夜に、しかもアパートだからか、
少し小さめの声で呼び止められた。


「おっきい道出たら右じゃなくて…」

「左でしょ?」

「ん?あ、そう…なんだけど…
あれ?ん?」

「病院の裏から行くと
駅にすぐ着くよね」

「あれ?俺さっき教えたっけ?」


不思議そうな顔をする彼に、


「私、あそこの病院勤めてるの」

「…ん?」

「あそこの病院で看護師してるの」


11時の方向に見える
自分の勤め先でもある病院を指差しながら
そう言うと、

最初はぽかんとしていた彼だけれど


「マジで?俺先週
風邪引いてお世話になったよ」


と、笑ってから


「またウチ遊びにおいで」


と、付け足した。



その顔はやっぱりカッコよかった。






【続】
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タイトルはジャニーズ知識皆無の友達と
お茶をした時にちょっとお願いして、

どうでも良さそうな顔で
考えてくれたものを頂戴しました。


その時のお茶代は私持ちでした。
大体千円くらいでした。

つまり千円のタイトルです。


横文字なんてオシャレ過ぎて
恥ずかし死にしそうだけど
あえてチャレンジ。

だって千円もしたんだもん。


「タイトル考えてあげたんだから奢ってよ」


って言われた時はびっくりしたけど
さすが私の友達やってるだけあるなこいつ。


って思いました。




あ、お話はまだまだ続きます。


よろしくでございます。