さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

後輩の宮舘くん 〜春〜 【下】


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美味しいって噂の料理は
確かに美味しかったかも知れないけど

全然食べる気になれなくて
ほとんど手をつけずに残した。


幹事をしてくれたゼミ長に
お会計を任せてお店の外に出る。
会費はもう渡してある。


やっと解放される。


そう思うと自然と気持ちが緩んでくる。

お店の看板のライトで照らされた
夜桜が綺麗…

宮舘くんと今度夜桜、見たいなぁ…


「なぁ」


不快な声はシカトしよう。


「無視かよ」

「……」

「聞いてんのかよ!」


また肩を掴まれる。

さっきよりも掴む力が強くなってるのは
きっとお酒のせい。


「お前二次会行くだろ?」


痛みに顔を歪めながら
その手をどかそうと腕を回す。


「…行かない」

「はぁ?ノリ悪!来いよ!」

「行かない」

「なにお前怒ってんの!?
こっちが気分悪くなってくんだけど!」

「…離してよ…ッ」

「俺は場を盛り上げるために
お前に話しかけてやってたんだよ!
んな事も分かんねぇの?」


周りのみんなが私を
『可哀想に…』とでも言いたげな目で見てる。


本当に…なんで私だけ
こんな目に合わなきゃならないのよ…!

肩を掴まれていた腕を振り払う。

キッと相手を睨みつけて、
息を吸い込んだ瞬間…


「○○」


決して大きくはないけど、
大好きな声が私に届いた。


声のする方に振り返ると、
宮舘くんが右手を軽く上げながら立っていた。


ひどい顔をしていたと思う。

ものすごくひどい顔をしていたと思う。


みかんくらいなら丸々一個
入るくらい口が開いてたと思う。


そのくらいに間抜け全開な顔をした私を見て
口元に手を当てながら少しだけ笑った宮舘くんは


「○○」


って、もう一度私の名前を呼んだ。


こっちに向かって
一歩ずつ近づいてくる宮舘くんが
この場から救い出してくれる
ヒーローみたいに見えた。


「…み…」

「迎えに来たよ」

「…宮舘くん…」

「帰ろうか」


嬉しすぎて宮舘くんに抱きつきたい気持ちを
グッとこらえて
差し出された彼の右手に
自分の左手を乗せようとしたら、


「なんだよ!彼氏迎えに来てんじゃん!!」


バンッ!と突然背中を叩かれて
思わず少し転びそうになった。

前のめりに転びそうになった私を
すかさず手を出して支えてくれた宮舘くんは

私を自分の背中に隠して
右手で私の右手を握りながら、


「こいつか…」


って私にしか聞こえないくらいの
小さい声で呟いた。

その声の低さにゾッと身震いした。


「こんばんは。」

「ん?あ、こ、こんばん…」

「先輩?」


宮舘くんの放つただならぬ空気に
吃りながら挨拶を返そうとしたあいつに
重ね気味に喋り出す。


「女の子の身体、
そんなに強く叩いちゃダメですよ?」

「……」

「弱いんですから、女の子はみんな」

「はあ?」


宮舘くんの背中越しに聞くあいつの声は
明らかにキレていた。

守ってくれるのは嬉しいけど、
喧嘩なんてして欲しくない。

さっき私に言ったみたいな言葉で
宮舘くんを傷つけて欲しくない。

宮舘くんのジャケットの背中部分を
ぎゅっと握りながら
「もういいよ、もう帰ろう」
ちっちゃい声で懇願する私を
宮舘くんは無視した。


「特に○○は、我慢しまくって
内側に溜め込んじゃうタイプなんで
傷つけたりしないでください」

「てめ、」

「俺の彼女です。
傷つけたりしないでください。」


私だけじゃなくて店先に出ていた
ゼミのみんなが
ゴクリと息を飲んだのが分かった。


一触即発


まさにそんな感じ。


バチバチの空気の中で
含み笑う声だけがいきなり響いた。


もちろんその声はあいつのもので、


「いやー、悪い悪い!
俺が悪かったよな!ごめんな!」


ごめんと言いながら
何一つ反省してなさそうな顔のまま
両手をパンッと合わせた。


「俺はその気全くなかったんだけどさぁ、
こいつが勘違いさせるような態度とったんでしょ?

ごめんねー、マジで。
でも俺はこいつとなんもないから!
口説いてるつもりもないし!

むしろある方が不思議ってゆーか?
本当本当!何もない!
だから安心してよ!

てかお前も!
彼氏に勘違いさせるような事すんなよ!
こっちが迷惑だっつーの!」


もしこいつの今の態度が、
“謝罪”っていう意味があるのだったら

人に対しての謝り方を
小学生に戻って学びなおしたほうがいいと思う

そのくらい威圧的で
反省の念なんて微塵とも感じられない。


しかもなんで私がいけない事したみたいに
言われなきゃなんないの…



今までずっと我慢していた涙が
ポロっとこぼれた。

さっきからずっと黙っている宮舘くんの
背中におでこをくっ付ける。

泣いている姿を周りの人に見られたくない。


「…ぅ…ッ…」


ちっちゃく漏れた嗚咽が
聞こえたらしい宮舘くんは
握っていた私の右手を一度強く握る。


「お前お前って
俺の前で自分のものみたいに
言わないでもらえますか?」

「は?」

「別に最初から先輩と○○の仲は
勘違いしてないんで大丈夫ですよ」


ハッキリとあいつにそう言ってみせた。


「それから、口説いてくれたって
構わないですよ?
○○が俺以外の男になびくわけないんで」


周りのみんなが一瞬騒然とした。


…だって、こんな風にまっすぐ
こいつに意見した人なんて
今まで誰1人いなかったから。


「すっげー自信だな」

「えぇ、まぁ」

「でもよぉ」

「はい」

「それって独りよがりの可能性はねぇの?」

「どういう意味ですか?」

「そんな事ばっか言ってると
嫌われるぜって意味だよ」


その言葉についに私はブチ切れた。


もういい。

ゼミのみんなに引かれても。

宮舘くんに引かれても。


こいつだけは許せない!!!


一発殴ってやろうと、
意気込んだ瞬間…


「嫌いになったって構わないです。
好きにさせる自信があるんで」



この言葉を、私は一生忘れないと思った。



「○○、帰ろ」


宮舘くんの声でハッと我に返る。

同じ目線に屈んできた宮舘くんは
私の顔を見て笑いかけると
優しく手を握り直した。


「お、お疲れ様…!」


宮舘くんに引っ張られる形で
みんなから離れていく私の背中に
ゼミ長からの声が聞こえて


「あ、お疲れ様!また月曜…」


って言いながら声のする方に視線を向けると、
さっきまで宮舘くんに
威圧的な態度を取っていたあいつが

放心状態で動けなくなっていたのが見えた。




しばらく歩いて
お店から結構離れた辺りで
腕を引っ張って彼を引き止めた。


「宮舘くん…」

「ん?どうしたの?」

「いつから、お店の外で待ってたの?」


彼の手を握る両手に思わず力が入る。


「内緒」

「…ちょ、」

「だから言ったでしょ?大丈夫だって」

「……」

「俺を信じてって」

「……」


押し黙った私に反して、
宮舘くんは何やら楽しくて仕方ない感じで


「あははっ、喧嘩しちゃった」


って笑い出すから
さっきまで頬を膨らましてた
私までおかしくなって
2人でいつまでもケタケタ笑った。








“帰ろう”って言われて
一緒に歩いてきたけれど、

着いた場所は私の家じゃなくて
宮舘くんの家だった。


「…ふぅ…」


家に入って早々に
宮舘くんはソファに深く座り込んだ。


「…ちょっと気疲れしちゃった…」


照れるように笑いながら
右手で目をこする。

その仕草が子供みたいで
思わず口元に笑みが浮かんだ。


空けられた
彼の隣のスペースに腰をかける。


「…宮舘くん…」

「ん?」

「ありがとう」

「どういたしまして」

「すごいカッコよかった…」


フッと頭に温かいものを感じた。


「それは嬉しいな」


宮舘くんは私の頭に手を乗せて
穏やかな声を落とす。


なんとも言えない気持ちがこみ上げて
涙がたまるまぶたに宮舘くんがキスをする。


宮舘くんの唇がまぶたから
離れると同時に視線を上げると、

すんごくフェロモン全開の
彼の顔が目の前にあった。

右手がスルッと私の左頬に伸びてきて、
その手にドキドキと胸が鳴り始める。

宮舘くんの全てが私をドキドキさせる。


「…宮舘くん…」

「すぐに終わらせてあげられないかも」

「…え…」

「ごめんね」


力強い両腕に抱きしめられ、
唇を塞がれた。


唇を割って入ってくる宮舘くんの舌は
びっくりするくらい熱くて、
でもすごく優しい。

背中に回される腕の力強さに安心する。


「…んッ…」


思わず漏れる声は私の声なんだけど
聞いたこともないくらい甘い声。


宮舘くんは、さっきから私に
恥ずかしがる隙も与えてくれない。

角度を変えて
たくさんのキスが落ちてくる。


私の首後ろに回った宮舘くんの骨ばった指が
うなじあたりを往復する。


その感覚にゾクゾクする。


宮舘くんの舌の動きに翻弄されて
頭がクラクラしてきた瞬間に
膝の裏と脇の下に腕が回って
いきなりお姫様抱っこされた。


「…わッ…」


ビックリして思わず彼の体を押しのける。


「宮舘く…下ろし、て…」


逃さないと言うかのように
力強い目で私の目を捉えた彼は、


「…黙って…」


と、一言囁いてから
私の口をその唇で塞いだ。

私を抱き上げてキスしたまま
ベッドまで歩いて行って
優しくその場に寝かせる。


下されたベッドの軋む音に
緊張感が増す。


「○○ちゃん」


不意に落とされた声に閉じていた目を開くと
宮舘くんが私の顔を挟むように両腕を付いてて、

あまりの近さに
呼吸の仕方も忘れそうになった。


よく見たことある。

漫画とかドラマとかで。

この格好。


…あぁ、私…ついに…



すごく緊張する。

…でも、

初めての人が

宮舘くんで良かった。


大好きな人で、良かった。


髪を撫でて、優しいキスをしてくれる
宮舘くんに身を委ねてた。


背中に回された手に
一気に緊張がピークになって…


「寝よっか」

「へ?」


一瞬離れた唇から紡がれた言葉に
素っ頓狂な声が出てしまった。


「あれ?足りなかった?」

「ち、違ッッ!」


体をバタバタさせる私に
宮舘くんは楽しそうに笑った。


「しないよ」

「……」

「しない」

「…な、んで…」


本当は少し怖い気持ちがある。

でも、“しない”なんてハッキリ言われてしまうと
それはそれでちょっと寂しい。

女子としては複雑な気持ちになる。


「○○ちゃんが怖がってる内はしない」

「……」


握りしめていた手を開くと、
私の手のひらは
手汗でびっしゃりと濡れていた。


手のひらを見つめる私の左隣に
ゴロンと寝転んだ宮舘くんは
左手を伸ばして私を抱き寄せた。


「今日泊まってってね」

「…う、うん」

「お泊り初めてだね」

「…うん…」

「せっかく初めてのお泊りだから
なんか話そっか」

「何を…?」


手汗を服にゴシゴシとなすりつけて
何事もなかったかのように振る舞う。


「好きな人の話とか」

「…何言ってんの?」

「俺の好きな人はね〜」

「え?始まっちゃうの!?」


慌てる私に宮舘くんは意地悪な顔で笑った。


「頑張り屋さんなんだよね」

「……」

「それから、明らかに自分に向けられてる
人からの好意にぜーんぜん気づかないの。

んで、その人が自分のこと
気にくわない存在だと思ってる…
ってまで思っちゃうの。」

「…え…それって。」

「うん。あのゼミの男の人
○○ちゃんのこと好きだよ、絶対。」

「…え?は?」

「だからあんなに○○ちゃんに絡んできてたの。
そんで俺には敵意むき出し。」

「それは違うと思…」

「違くないんだよ、コレが」

「…あの…」

「鈍感」

「…はぁ…」

「まぁ、俺の気持ちも
告白するまで全然気づかなかったもんね」

「…あぅッ…」


何か反論を言いたかったけど
何を言っても意味不明な言葉にしか
ならないような気がして、

喉までせり上がった言葉を飲み込んだ。


「でもそのままでいいから」

「…う、うん…?」

「俺以外の男からの好意なんて
気付かなくていいから」


そう言ってもっと強く私を抱きしめる宮舘くんを

今度からは「涼太くん」って
呼ぼうって心の中で密かに誓った。







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そして後に、
宮舘くんはゼミの中で
伝説扱いされるのであった…まる。






スランプ中に伴い、
宮舘くんに助けを求めました。

そして宮舘くんは私を助けてくれました。

サンキュー舘様。

(`ё´)ヒェアッ!



でも無駄に長くなりました。

1話分だけで終わらせようと思って
書き始めたつもりなのにな。

まとまった文が書けないから
こんな事になるのでした。


てへっ


こんな長い文を
読んでくれてありがとうございます。



基本私はしょっぱめの
せつなーいかなしーいお話ばっかりだけど
宮舘くんを書くときだけは甘く書けるので

ダブルで助けられてます。


このまま辰巳くんのお話も書けるようになりたい…


それまで他の方達の力を借りて
辰巳くんも書けるように頑張ります。

何卒よろしくお願い致します(笑)