さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

ヤンキー岩本くん【3】


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放課後、掃除を終わらせて教室に戻ると
岩本くんは机に頬杖をついて
あたしを待っていた。


『おせーよ』


そんなこと言われても掃除してたんだから
仕方ないじゃん。


あっかんべーしながら
カバンを取って岩本くんと一緒に
教室を出る。


同級生と2人で歩いてるだけなんだけど…

すれ違う人たち全員にガン見される。

え!?って声を出す人もいるくらい。


あたしが。

っていうか“ヤンキー”な岩本くんが
女子と普通に話して歩いているのが
とても珍しいって感じで…


『…岩本くんがヤンキーってこと忘れてた』

『は?』

『あたしも周りからヤンキーの手下
とか思われてたりして』

『何言ってんだ?』

『親ビン!岩本親ビン!』

『お前頭大丈夫か?』


岩本くんは本気で呆れた
目をしながらあたしを見た。




下駄箱に近付くと、ふっかが何人かと
喋りながら待っていた。


男女が集まる軍団の中心で
笑顔で話すふっかは
本当に岩本くんとは正反対。


『お!遅いよー!』


こっちに気づいたふっかが
片手を上げながら呼びかける。

今まで笑顔で喋っていた
ふっかを取り囲む集団たちが
岩本くんを見た瞬間にバラバラと
解散していく。


…すげぇな、ヤンキー威力。


『コイツが遅かったんだよ』


自分の周りに与える影響なんて
全く気にしていない岩本くんは
なんというか、メンタルがすごい。

あたしだったら気にしちゃう。

周りの目気にしまくって、
こんなに堂々としてらんない。


俺のせいじゃねぇって言いながら
あたしに視線を向ける岩本くんに


『…岩本くんって無敵?』


そう問いかけたら


『お前、本当に頭おかしいな』


って、また蔑んだ目をされた。






ふっかが連れてきてくれたのは
隠れ家的なおしゃれなカフェだった。

奢りって聞いてたから
その辺にある適当な
ファーストフード店とかに連れて行かれると
思ってたからちょっとビックリした。


店内に入ってすぐに
ソファに座りたい!
って一目散にソファ側に座るふっか。


その向かいの椅子側に
岩本くんが座るから、
どっちの隣に座ればいいか分からなくて
一瞬考えたあたしに

岩本くんが
自分が座った隣の椅子を引いて
私に視線を向けてきた。


…なんでこの人こんなに優しいんだろ。

こんな見た目なのに。

まっきんきんの髪色に
足広げて不機嫌そうな顔で座ってるくせに。


椅子を引いてもらった分際で
超失礼なこと考えながら
岩本くんの隣の椅子に座った。


趣味はカフェ巡り♪

なんていう女子を


なーにがカフェ巡りだよwww


ってちょっと馬鹿にしていたけど…

その趣味…
分からなくもないかもしれない。


木のぬくもり溢れる店内は
オシャレなんだけどどこか落ち着きがあって、
間接照明ひとつにしても
すごく可愛い。


お店の内装が可愛くて
キョロキョロしまくってたあたしに、


『口閉めろ馬鹿』


って言いながら岩本くんが
渡してきてくれたメニューも
オシャレさ満点。


『BLTサンドドリンクセットで!』


可愛いカフェにテンションが上がって
ルンルンでそう注文するあたしに、


『てゆーか普通に一緒に来たけど
○○ちゃんも俺に奢ってもらう前提なんだね』


ってふっかがボヤくから


『んふっ♡』


って超笑顔でかわい子ぶってみた。


横から岩本くんに


『きめぇ』


って、言われた。



ガッツリ系のBLTとパスタを頼んだ
あたしとふっかをよそに、

岩本くんはチョコレートパフェを頼んだ。


全部まとめてふっかが店員さんに
注文をしたからか、
店員さんが料理を運んで来た時に
チョコレートパフェをあたしの前に置いた。


笑顔で、
ごゆっくりどうぞ!
って言って店員さんが去って行った後に
ゲラゲラ笑いながら


『まぁ岩本くんの見た目からして
どう見てもチョコパフェ食べるなんて
思わないよね』


って言って岩本くんの目の前に
チョコレートパフェを差し出してあげる。


『お前は人を苛立たせる天才だな』

『ありがとョ』

『褒めてねぇ』

『ありがとョ』


どんなに睨まれても
全然怖くない上に長いスプーンで
可愛くチョコレートパフェを食べる岩本くんに
あたしはいつまで経っても
笑いが止まらなかった。




毎日踊り場にご飯を食べに行った。

お母さんが、朝ごはん食べてる
あたしの横にお弁当を置いて来ても

憂鬱と感じることなんてなくなった。


むしろお昼休みが楽しみで。

毎日お昼休みに
あの、人通りの少ない
踊り場に行くのが楽しみで。

ふっかを馬鹿にして
イジるのが楽しみで。

お昼食べた後に筋トレする
岩本くんに対して
鬼コーチごっこするのが楽しみで。


鼻歌交じりにカバンにお弁当を
詰めるあたしを、
お母さんが少しだけホッとした顔で
見ていたような気がした。




岩本くんは毎日近く購買に
チョコプリンを買いに行く。

珍しく買いに行かない日があっても、
その日は必ずチョコレートを持参して来ている。


一緒にお昼を食べるようになって気づいたけど
岩本くんは相当チョコレートが好きらしい。



だからその日もいつも通り岩本くんは
あたしに一言、


『先に行ってろ』


って言った。


『了解でやんす親ビン』


実は気に入ってたりする
親ビン呼びで返事したあたしを
“馬鹿だな”って顔をしながら
鼻で笑った岩本くんが教室から
出て行ったのを確認して、

あたしも教室を出て
岩本くんが歩いて行った方向とは
逆方向にある踊り場へと向かう。


もうお昼休みはそこに行くのが
当たり前になってるあたしの体は
何も考えなくてもスタスタと歩いて…


『ねぇ』


いたのに、止められた。




歩みを止めて、振り返った先には


『…ん?』


1ヶ月ほど前まで
一緒にお昼を食べていた友人がいた。


お昼を食べることがなかったら
こんなに話す事もないほどの
間柄だったことに今更驚いた。


『ひ、さし…ぶり…?』


半笑いでそう言ったあたしに
友人はムッと眉間にシワを寄せた。


なんだかすごい不機嫌そう。


そう言えば急に踊り場に行きだしたから
あたしこの子にちゃんと


“彼氏と2人で楽しんで♡”

って言うの忘れてたわ。


『…あんた今岩本とかとお昼食べてんの?』


嫌味を言い忘れていた事を
ムフムフしながら考えるあたしに
友人のトゲ満載の言葉が飛んでくる。


『…ん?』

『あんなヤンキーといて楽しい?』

『……』

『変な噂回されても知らないよ』

『……』

『ウチらと食べたほうがいいのに』


……なんでこの人はこんなにあたしを
隣に置いとく事にこだわるんだろう。

まぁきっと
自慢話をわざと聞こえるように話して
優越感に浸るためなんだろうけど。


ただ自分が気持ち良くなる為に
使われるなんて絶対嫌。


そんなお前になんで岩本くんが
悪く言われなきゃなんないんだよ。


岩本くんだけじゃない。
ふっかだってすごくいい人。

見た目だけで判断して。

変な噂ってなんだよ。



ふざけんな…


『…岩本くんナメんな』


気づいたら友人を睨みつけながら
そう言ってた。


『はぁ?』


友人の顔がみるみるうちに
赤く染まっていく。


ただ、一言。

一言だけ言い返して
相手をジッと睨む。


いつも隣で何されてもスルーしていたから、
あたしがハッキリと
口答えしたのがつまらなかったのか

友人は真っ赤になった顔で
あたしを突き飛ばした。


バランスを崩してその場に転けたあたしを
上から睨みつけて


『一生話しかけんな!!!』


って怒鳴り散らして帰って行く。


…いや、今も話しかけてきたの
あんただろーがよ。


って思っていると、
友人と入れ違いに岩本くんが
ひょこっと曲がり角から顔を出してきた。

購買に寄ってきた岩本くんは
予想通りチョコプリンを買ってきたみたいで、
購買のビニール袋を片手に下げながら
こっちに歩いてくる。


『女怖ぇな』


自分の見た目の方が何十倍も怖いくせに
そんな事を言ってくる岩本くんは
何故だか少しだけ面白そうに笑う。


『聞いてたの?』

『声は聞こえたけど
何話してたかまでは聞こえねぇ』


本当かどうか分からないけど
岩本くんはそう言いながら
いつまでも転けてるあたしに手を差し出してきた。


『大丈夫か?』

『クソ痛い。多分死ぬ。』

『大丈夫みたいだな』


差し出された手を掴む。

右手1本でヒョイと
あたしを立たせる岩本くんの筋肉は
今日も元気に健在中。


『岩本くんのせいで友情壊れた』


ポケットに手突っ込みながら
踊り場に向かって歩き出した
岩本くんに、笑いながらそう言うと


『壊れるようなら最初から
友情でもなんでもなかったんだよ』


超正論が返ってくる。


…確かに、最初からあの人とあたしの間に
友情なんてなかったけど。


友人のあんな顔を見て、
少し面白くなってニヤニヤしちゃうあたしは
岩本くんに対しても
テンション高くやたら絡んでしまう。


『許さない』

『勝手に言ってろ』

『そのチョコプリンくれたら許してあげるよ』

『一生1人で拗ねてろ』


踊り場に着いて、階段に座るふっかに
軽く挨拶して腰を下ろした岩本くんは

一口くらいくれるかと思ったのに
買ってきたチョコプリンを全部1人で食べて
どんだけチョコ好きなんだよって思った。



いつの間にかあたしの定位置になった
ふっかと岩本くんの間に座って
お弁当箱を開くあたしは、

初めて人目を気にしないで
自分の意見を発した事に


あたしやれば出来んじゃんって
自分自身いつまでも感動していた。







『やっぱ先輩尊敬します…』


目の前には両手で拝みながら
あたしのことを見る後輩。


『大げさだから』


照れ隠しにそう笑うけれど、
可愛い後輩にこんな風に言われれば
もちろん嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。


『先輩のこと追ってこの高校入ったかいが
ありました、本当に。』

『ねぇ、それいつも言うけど本当なの?』

『本当ですって!』


いつも踊り場に行っている昼休み、
今日だけは音楽室に来ていた。

部活現役の頃に、
先輩先輩と慕ってくれていた後輩から
伸び悩んでいる。と連絡が来たのだ。


『先輩と一緒に吹きたくて
この高校入ったんです!!』


昼休みが始まった頃は
沈みまくってた後輩が
晴れやかな顔になっていて安心する。


『はいはい、ありがとっ』


でもやっぱり照れ臭くて
適当に流しながら楽器を片付けるあたしに


『もうっ!本当なのにっ!』


って後輩は口を尖らせた。


『先輩もっと部活に顔出して下さいよぉ〜』


いつまでも口を尖らせたまま
あたしに視線を向ける後輩。


んー、でもあたし楽器吹くと
本気モード入っちゃうからなぁ…


なんて思いながら後輩に目を向けると、
もう廊下に出ていた後輩は
一点を見つめたまま
ピタリと動かなくなっていた。


『ん?どうした?』


固まった後輩の後を追って
あたしも音楽室から出ると、


『…あれ?岩本くん?』


なぜか岩本くんがいた。


壁に背中をつけて廊下にヤンキー座りする
岩本くんは、本当いかにも“ヤンキー”で。

超ゴリゴリガタイMAXの
金髪ヤンキーを前にガクガク震える後輩は


『何してんの?こんなとこで』


平然と話すあたしと岩本くんを
交互に何回も見る。


『いや、昼こっち来ねぇで
音楽室行くって言うから
何してんのかと思って…』


立ち上がってこっちに歩いてくる
岩本くんに、後輩はもう気絶しそうなくらい
顔が真っ青になっている。


可哀想すぎるくらいに目を白黒させる後輩に


『またなんかあったら連絡ちょうだい』


って言ったら


『ご、ごめんなさい!!!』


って言いながら走るように
その場を去って行った。

岩本くんがそんな後輩の様子を
不思議そうに見ていたけど、


…あんたのせいだよ(笑)

とは言えなかった。



『お前、吹奏楽部だったの?』

『そうだよ?知らなかったの?』

『今知ったわ』

『知っとけや』

『お前が楽器吹けるとか
意外すぎて想像もつかなかったわ』

『は?』

『そんな女らしい一面あったんだな』


ニヤニヤ笑いながら
そう言うこのヤンキーはあたしに
女と言うものを感じたことがないらしい。


それがちょっとムカついて、
ついついあたしは口を開く。


『中学から高校まで全く休みなしでやってた
バリバリの吹奏楽部よ』

『…あ?』

『担当はクラリネット
中学の頃は県トップだったんだから』

『…は…』

『県トップの吹奏楽部で1stっていう
1番難しい楽譜担当してたんだから』

『おま…』

『soloもしてたんだから』


一気に喋ったあたしを
ポカンとした顔で見る岩本くん。


『誰にも負けたくないって思って
必死で練習しまくってたんだから』

『…なん、』

『中2の時2ndから1stに昇進して
先輩を1stから2ndに
下げさせたことだってあるんだから』

『…え、』

『高2の大会も先輩からsolo奪ってやったんだから』

『…おい』

『まだ聞きたい?』

『分かった、分かった。
俺が悪かった。』


フフンって聞こえるくらいのドヤ顔で
そう言ったあたしを
岩本くんは爆笑しながら制した。


『…少しは見直した?』

『お前、本当はすげぇ奴なんだな』


目がなくなるくらいに笑う岩本くんに
急に褒められたもんだから

さっきまでの勢いを無くして
逆に少し恥ずかしくなってきたあたしは


『そ、あたし性格悪いから』


って誤魔化した。

なのに、


『努力家なんだろ?』


…やっぱりこんな時も
岩本くんは優しい。


恥ずかしがってるのがバレないように
プイッとそっぽを向いて
教室に歩き出したあたしの
横に並んできた岩本くんは


『カッコいいな、お前。』


って言ってきて、


本気で照れまくって
もうどんなリアクションとっていいか
分からなくなったあたしの
教室に向かう足が、少しだけ早くなった。





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次回、「院長先生の意向で29日の祝日が出勤になる代わりに2日を休みにして5連休にして貰えたよヒャッホウ!ってなわけで、お話無限に書けそう!おら無敵!とか言う謎のテンションで福田くんも岩本くん書いてみたらもう頭ん中ごっちゃごちゃのぐっちゃぐちゃでハゲそうになったよ。一日中キンキ兄さん聞きながらケータイとにらめっこしちゃったよ。0.01くらいしかない視力がもっと無くなっちゃったかもよスペシャル」やります!


サンキューサンキューでーす。