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さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

不器用なアイツ。【7】

ジャニーズ 妄想 長編




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“なら明日行く”


彼女に昨日そう告げた通り、
店に来た。



1番最初に頭に浮かんだマツを誘おうと
ケータイを手にしたんだけど、


…あれ?こないだもマツと行ったな…


ふとそんな事を思ったから
辰巳に電話したらちょうど
コッシーと一緒にいたらしく

結局マツも誘って
4人で店に行くことにした。





『いらっしゃいませ!ご案内します!』


店に入った瞬間に
若い女の子が迎えてくれた。

後輩くんが迎えてくれるのを
当たり前だと思ってたから
少し変な違和感を感じながら


後輩くんに、俺と彼女が会うところ
見届けてほしかったな(笑)


本気で悔しそうにポコポコと
マツのことを猫パンチしてた後輩くんの
優しさを思い出して
案内された個室に入った。




『飲み物お決まりでしたら
先にお伺いします!』


新人だからなのか
張り切って注文をとる若い女の子に辰巳が


『生4つ』


と言ったあとに、


『今日って○○ちゃんいるの?』


笑顔でその子に聞く。

一瞬、ん?と首を傾げる女の子。


『友達なの、俺ら。』

『そうなんですか!?
○○さん、今日いますよ!
呼んできましょうか?』

『ううん、大丈夫。
ありがとね!』


笑顔で若い子が卓から出て行った後に


『○○ちゃん出勤みたいだね〜』


って呑気に言う辰巳に

だから今日来たんだよ、とは
言わないでおいた。



頼んだ飲み物が運ばれて来る前に
トイレに行って用を足して、


彼女にはっきりシャアのこと
言った方がいいのかなぁ…


でもいきなりそんな事を
俺から言われても彼女きっと困るよなぁ…


とか考えながら卓に戻ると、

扉の前に彼女がいた。


…おお、


声を掛けようとしたけど
…様子が変。

ピクリとも動かないで立ちすくんでいる。


やっと扉に手をかけたかと思っても、
そのまま動かない。


口に手を当てたまま
1人でボソボソ呟いて
こっちに気づきもしない。


近づいて肩を叩くと


『ッッ!!???』


ものすごい勢いで振り返られた。


『え、そんなに驚く?』


結構悲惨な顔で振り返るもんだから
思わず笑ってしまう。


未だにびっくりし続けている彼女は
小さく『…福田くん…』と、
俺の名前を呼ぶだけで
跳ね上がった肩はそのまま。


『トイレから帰ってきたら
扉の前で立ち尽くしてるから。
どうしたのかと思った』


彼女の肩に手を置いたままそう喋ると、
今までビックリ顔だった彼女は
今度はムスッとした顔になって


『…別にどうもしないし…』


誰が聞いても、
120%どうもしてない訳がない
口調でそう言った。


『…昨日ごめんね?』

『…』

『許して?』

『…』

『…ね?』


昨日は確かに彼女の危機感のなさに
イラついたけども、

何も知らない彼女に俺の気持ちの問題で
八つ当たりしちゃったから
謝ろうとは思っていた。


しゃがんで俺より少しだけ低い
彼女の目線に合わせて謝った俺に、


『ちょっと、怖かった…』


彼女はどうもしてないしって
言っておきながら
やっぱり拗ねていたみたい。


『うん、ごめんね』

『…』

『俺まだガキだからさ』


目の前にいる彼女を可愛いと思うのは
容姿云々の話ではなくて

きっと“実は素直”な彼女の内面を
知ってしまったからで、


『許すも何も最初から怒ってないし…』


頬を膨らます何気ない仕草まで
可愛いと思うのは俺だけだと思う。


ここまで分かりやすく
表情を変える彼女とは反対に
笑顔になった俺は
未だに不貞腐れている彼女の頭を
1度ポンとしてから扉を開けた。




『○○ちゃん!』


扉を開けて顔を出した彼女に、
1番最初に声をかけたのは
やっぱり辰巳だった。


『こんばんは!』


笑顔でそう答える彼女は
どこか嬉しそうにも見える。


『○○ちゃん久しぶりー!元気だった?』

『今日お店混んでるね〜』

『追加注文していいー?』


席について、俺がトイレに行ってた間に
運ばれてきていた生を一口飲む間に
みんなして一気に彼女に話しかける。


『ちょっとだけ太りました』


笑顔でそう報告する彼女に、
嫉妬心と共に加虐心が生まれる。


虐めてやりたい。
困らせてやりたい。


『ちょっとだけじゃねーだろ、この顎(笑)』


前より少しタプっとした
顎を引っ張ると、
俺と彼女以外の3人は
目を丸くして一瞬固まる。


『そこ、いつの間にそんなに仲良くなったの?』


俺と彼女に目線を行き来させながら
聞いてくる辰巳に、
少しの優越感を感じながら


『え〜、秘密。』


と、言うと彼女が顔を赤くしながら
俺の手からスッと逃げた。


逃げられて宙ぶらりんになった
俺の手なんてお構いなしに
辰巳に話しかける彼女。


なんだよ…さっきまであんなに拗ねて
可愛かったのに。

辰巳に一生懸命話しかける彼女の横顔を
見ながら、ビールをあおった。




『○○ちゃんと福ちゃん、仲良いんだね』


彼女が卓から出て行ったあとに、
辰巳が笑顔で聞いてきた。


『んー?』


しらばっくれる俺。


『福ちゃんが女の子に構うなんて
珍しいからビックリしちゃったよ』

『…え、そう?』

『福ちゃんがあんなに馬鹿にして
構ってるの、マツ以外で初めて見た(笑)』


自分じゃ分からなかったところを
突っつかれた。

無意識のうちに
周りから見ても分かるほどに
彼女への対応が変わりつつある。


ひねくれ者だと思ってた自分も
彼女と同じ“実は素直”な人間なのかも…


彼女にしてあげてるつもりが、
素直にさせられてるのはどっちだよ、
なんて思った。



自分のことを人に話すのは苦手。


ふざけてると思われていたい。


俺にスポットを当てないで欲しい。


周りからガヤを入れる担当でありたい。



そんな俺にとって、
それからの時間は地獄だった。


『○○ちゃんと何でそんなに
仲良くなったの?』

『そう言えばこの間の誘拐事件、
ちゃんと詳しく聞いてないよ!』

『誘拐事件って何!?』

『なんだ!その物騒な事件はッ!』

『いつの間にそんな関係に!?』

『てゆーか福ちゃんだけ○○って
呼び捨てだよね!?』

『○○ちゃんも福ちゃんに対してだけ
敬語使わないで喋ってるし!!』

『ちょっと福ちゃん!聞いてんの!?』


辰巳を筆頭に、
体に穴が開くほど
矢継ぎ早に質問されまくった。


もう本当に勘弁して欲しい。

四方八方から飛び出す問いかけを
交わしまくって、

まだろくにモノも入れてなかった胃に
酒を無理やり流し込む羽目になった俺は


『ちょっと外の空気吸ってくる…』


逃げんのかよー!
と言う不満げな声を背中に浴びながら
フラフラと立ち上がって、
扉を開けた。



やっと訪れた開放感から
ゲッソリしながら
入り口へ向かうと、
会計をするレジの前に彼女がいた。


…お前のせいだコノヤロー。


って思いながら
話しかけに行こうとしたら、


金髪が目に入って思わず息を飲んだ。


知ってはいても
初めて目の当たりにするその光景に
動けなくなる。


分かっていても、
体は動かないもので
あそこまで行動的に彼女を守れてた
後輩くんがすげぇなって思う。


固まって呆然とその光景を見ていたら

シャアが彼女の腕を引っ張って
顔を近づけた。


『…ッ…!』


あからさまに嫌がる彼女と、
ニヤニヤした顔のシャア。


彼女の耳元で何やらボソボソと
言ったシャアは、
連れと一緒に店を出て行った。


一旦静かに深呼吸をして、
腹の中から湧き上がる気持ちを抑え込んで

エプロンにさっき掴まれていた手を
ゴシゴシと擦りつけて
文句を垂れている彼女の元に近づく。


『心の声丸出し』

『ぎゃッッ…!!!』


またしても肩を跳ね上げて
驚く彼女。


『…なんだまた福田くんか…』

『俺じゃ不満か』

『お願いだから普通に出てきてよ』

『普通にしてるつもりですが』


本当に普通にしてるつもり。


昨日の電話だって、
ちょっと怖かったって言われたし…

さっきまで矢継ぎ早に質問されて
疲れているのを隠してるし…

今だって苛立つ感情を抑え込んでるし…


俺は普通にしてるつもりだ。


なのに彼女はげんなりした顔で
そんなことを言う。


ほんっとに。
彼女といたら色んな事に処理が追いつかなくて
頭がハゲそうだ。


『え、何?』


考え過ぎて彼女の顔を
凝視しすぎた俺に、
彼女は困惑気味に問いかけてくる。


何?じゃねーよ。


『…さっきの人が昨日電話で言ってた人?』


答えなんて分かりきってるけど、
聞いてみる。


『…さっきの見てたの?』

『…ねぇ、あの人がそうなの?』

『そうだよ…』


あー、ダメだ。
どんどん器が小さくなる。


ふーん、と相槌を打つと、
彼女は、なんなの?と
少し面倒くさそうな顔をした。


『気をつけなよ』


本気でもっと危機感を持って
気をつけて欲しいのに

俺の言葉に適当に返事して
背中を向けた彼女の肩を思いっきり掴む。


彼女の体を無理やり自分の方に向かせて


『…冗談抜きで。気をつけて。』


肩を掴む手に自然と力が入る。

半分睨むように
彼女の顔をじっと見つめて
もう一度“気をつけて”と口にした俺に

彼女は半泣きになりながら
小さく返事をした。


掴んでいた肩を離すと、
逃げるように俺から距離をとる彼女に


…彼女のことビビらせて…
俺とシャア、
やってること変わんねーかも(笑)


って自嘲的な笑いが出た。










***






夜遅い時間のコンビニは結構好き。


よく分からないイントネーションで
歓迎してくれる外国人店員さんの
ラッシャイマセー!って声を聞きながら
店内に入る。


毎週買ってる少年漫画の週刊誌が、
毎週月曜日に発売するんだけど

今週は月曜が祝日だから
土曜に発売する。

だから金曜の深夜にコンビニにくれば
読めるわけで…


『うぇい〜』


独り言を呟きながら、
本コーナーの一角に
予想通りフライング気味に置いてあった
週刊誌を手に取る。


もうずっと昔から愛読してるけど
今週も安定に面白い。


一冊まるまる立ち読みする勢いで
週刊誌を読んでいると、


『……あれ、?』


コンビニの前をズンズンと大股で
歩いていく1人の女の子が視界に入った。


…すげぇ歩き方…


あまりに豪快なその歩き方に
思わず週刊誌を読む手を止めて
目を向けると、

その大股で歩く女の子が
肩から下げているのは
見たことのある肩掛けバックで…


…何してんだあいつ(笑)


間違いなく彼女。


家とは逆方向に歩いていった彼女。


その先にある場所で
彼女が用がある場所といえば
駅くらいしかない訳で。


…今からバイト?
だとしても遅くないか?


まぁ居酒屋のバイトとかなら
あり得るのかな。


駅まで送っていければいいな、
なんて思いながら残りのページを
パラ読みして、

またよく分からないイントネーションで
アリガトゴザイマシター!と、
見送ってくれた外国人店員さんの
声を聞きながらコンビニを出る。


でもさっき見かけたスピードを
緩めることなく歩いて行ったであろう
彼女は、コンビニを出た瞬間には
もう見えないところまで
行っちゃったみたいで


『どんだけ(笑)』


大股で歩いていた彼女を
思い出し笑いしながら自分も家に
向かって歩き出した。






家の近くにまで来たけど、
彼女の姿は一向に見えなくて


…もう電車乗ったか?


ちょっと残念な気持ちと、
まぁこんなもんだよね〜
と思う気持ちで自分も家に帰ろうとした時に、


『……す……ます、…』


微かに公園から人の
話し声が聞こえた。


何の気なしに歩きながら横目で
公園に目を向けると、



彼女が男にキスされていた。




『…ッ……』



自分でも分かるくらいに
声を出して息を飲んだのが分かった。


…彼氏、いんのかよ…


予想もしてなかった展開に
鼻の奥がツンとする。


確かに、彼女の口からハッキリと
“付き合ってる人はいない”とは
聞いてなかった。


でも、普通にいないと思うじゃん。

あんなにバイトしまくって。

夜は頻繁に電話してれば。


いないと思うじゃん。



泣きそうになりながら
見たくないけれど
もう一度公園の方に視線を移す。


俺の願望からなる勝手な勘違いかも
しれないけれど…

よくよく見たら彼女が
嫌がってるように見えて、



…え?と思った瞬間に


彼女が、殴られた。



そこからはよく覚えてない。



気付いたら肩で息しながら男のこと殴ってた。


胸ぐら掴んで思いっきり右ストかましてた。



『お前誰だよ!!!!!』


ものすごい形相で俺を睨みつけて
掴みかかってこようとする
その男をもう一度殴ったところで、


その男が金髪なのに気付いた。


目の前で鼻血を垂らしながら
地面で丸くなって
痛みに顔を歪めるそいつは
間違いなく


…シャア…



遂にシャアが彼女に手出しやがった。

1番恐れていた事。

1番防ぎたかった事。



鼻血で真っ赤に染まった顔を
さらに泥まみれにした奴は
俺に向かって何て言ってるか
分からないくらいの大声で罵声を浴びせて
走って逃げていく。


『…おい…!』


追いかけようとした瞬間に、
ピタリと止まる俺の身体。


…あんな奴いい。


あんな奴ほっとばいい。


もっと大切な事がある。


振り返ると、
丸くなりながら泥に濡れる彼女がいた。



彼女の変わり果てた姿に
全身の毛穴が開く。

こみ上げる感情に息を切らしながら
彼女の前にしゃがんで


『○○!○○!』


耳を塞いで、目もギュッと
瞑る彼女の肩を揺する。


彼女がゆっくりと目を開けて
俺の顔を見た。


『…ふくだ、くん…』


いつもなら特別に感じるくらいに
嬉しい、俺の名前を呼ぶ彼女の声。


でも、今はもう
聞いていられないくらいに


弱くて…小さくて…


『○○…もう大丈夫だから。』

『…福田くん』

『うん』


俺だよ。

今お前の目の前にいるのは
俺だよ。


そんな気持ちを込めて頷いた。


『…大丈夫だよ』


自分が出せる最大限の優しい声で
彼女に声をかけながら
手を差し出した。


自分から触れていいかどうかさえ
分からない。

さっきの出来事を思い出させて、
余計に傷つける事だけはしたくなかった。


だから俺の差し出した手に
ゆっくり手を乗せてきた彼女に
すごく安心して、
少し震えるその手を強く握った。


ボロ雑巾のようになった彼女に
立てる?と、聞くと
全然身体に力が入ってないくせに
強がって立ち上がろうとするから

すかさず肩を抱いて支えた。


離したら今にも消えそうなくらい
俺の目に弱く映る彼女の手を引いて
歩き出すと、


『ケーキ…』


小さく腕を引っ張られた。


…ケーキ?

…なにが?



彼女の声に困惑しながらも
周りを見渡すと、
俺が今入ってきた公園入り口の近くに
白い箱が落ちていた。


その白い箱まで近付いて拾い上げると
中で何かが動く感覚がした。


彼女の手を引いて
家に向かって歩き出す。



さっきから、俺が握っている
彼女の手が少し震えてるのが分かる。

でもどうしてやることも出来ない。


彼女がこんなに震えてるのに、
俺は彼女に何もしてあげられない。


自分という存在の無力さを痛感して
悔しくて悔しくて堪らない俺に


『…福田くん…なんで、あそこにいたの?』


平然を装って話しかけてくる彼女に
もっと心が痛くなる。


『コンビニ』


シャアへの怒りと
自分への怒りで、

声が低くなった俺に
彼女はそれ以上話しかけてこなかった。





彼女の家に着いて、
俺が家に上がったことに
少し慌てた彼女を風呂場に入れて…


シャワーの水音が聞こえてきた瞬間に、
その場にため息をつきながら
しゃがみ込んだ。


いつも人に弱みを見せないで、
あまり表情も変えない彼女が

ここまで傷ついて怯えているところを
初めて目の当たりにした。


いつも1人で凛とした空気をまとって…


でも本当はどこまでも弱くて、
頼れる人なんて彼女にはいなくて。


そんなこと分かってたはずなのに。


だから頼られる存在でありたいと、

俺には素直なままでいて欲しいと、


思いっきり泣かせたいと、


そう思っていたはずなのに。



苛立ちを抑えきれずに
髪の毛をかきむしった俺の視界に、
さっき公園で拾い上げた
白い箱が入ってきた。


…ケーキ…?
って言ってたよな…


その箱を持ってキッチンに歩く。

シンクの上で白い箱を開けると、


『…うわ… 、』


ぐっちゃぐちゃになった、
いちごのケーキが入っていた。


これは食べられる状態じゃねぇな…


そっと箱を閉じようとした時に、

箱の隅の方に
生クリームまみれになった
チョコのプレートが見えた。


『……嘘だろ…』


HAPPY BIRTHDAY!!
○○ちゃん


そう描かれたチョコのプレートに
目に映るものがすべてぐるぐる回って
立っているのがやっとだった…


だからあんな状況でも、
ケーキの箱を拾おうとしたんだ。

誕生日ケーキだったから。

自分がお祝いしてもらえたケーキだったから。



『…ふざけんなよ…』


もう見ることなんて出来なくて、
ケーキの入った白い箱をそっと閉じる。


頭を押さえながら
フラフラと歩いてソファに座れば、
ほんのり香る彼女の香り。


その香りにまた胸が締め付けられる。


彼女が今何を思ってるか、
そんなの想像出来ない。

辛すぎて、想像出来ない。


少し赤くなった右手を見つめていると、

カラカラカラ、と浴室のドアが開く音がした。


音がしたのになかなかリビングに
現れない彼女に声を掛けると、

小さく返事をしながら、

ラグワン袖のロンTを着た
ラフな格好の彼女が風呂場から出てきた。


左頬を真っ赤に腫らした
彼女の顔を見ることが出来なくて
視線を下にそらして、


『ケーキ、さ』


いきなり口を開いた俺に、
彼女が『…?』と首をかしげる。


『中見てみたんだけど、
ちょっと食べられる状態じゃなかった』

『そっか…』

『一応キッチンの上に置いといたけど、』

『うん…分かった。捨てとくから大丈夫…』


…大丈夫なんかじゃねーだろ。

そんなにTシャツの裾ギュッと握って…
小さく震えて…


あのケーキ、誕生日祝いで
貰ったんだろ…?


少しの沈黙が流れてから、


『…こっち座って』


彼女を自分の方に呼ぶと、
素直にこっちに歩いてくる。


俺の隣でピタリと止まった彼女の
肩を押してソファに座らせた。

彼女の目の前に床にあぐらをかいて座って、
膝の上に乗っていた、
未だに小さく震えている
彼女の手を握る。


『…今日、誕生日だったの?』


こんなこと聞きたくない。

出来れば違う答えであって欲しい。


そんな俺の願いは


『…うん…』


彼女の肯定の返事で消された。


『…やっぱり。さっき見たケーキにチョコの
プレートのってたから…そうかなって』


彼女の手を握る手に力が入る。

どんどん身体が熱くなる。


本当に許せない。


でも、彼女がこうなってしまったのは
ちゃんと彼女にシャアのことを
伝えなかった自分のせいでもあって…

それが1番許せない。


シャアでもない。

自分が1番許せない。

自分が1番腹が立つ。


『俺さ、あの人知ってるんだよね』

『あの人?』

『さっきの…公園の…』


さっきとは打って変わって、
彼女よりも俺の声の方が小さくなる。


『同じ会社なんだよ、あの人と俺。』


その言葉を口にした瞬間に、
彼女の手がピクッと反応した。


もっと早く伝えるべきだった…


今さらしても遅い後悔をしながら、

自分の知っている事実を口にしたけど
彼女はボーッと一点を見つめるだけで
話にも適当に相づちを打つだけだった。


でも、彼女の手は
ずっと自分の唇を擦っていて…


『強くこすりすぎだから』


思わずその手を掴んでしまった。


『○○さぁ…』

『…』

『…なんで泣かないの?』

『…ぇ?』

『いつもはすぐビービー泣くくせに』

『…』

『…なんで泣かないの?』



彼女の肩に触れて
顔を下から覗き込めば、

零れ落ちそうなくらい
涙をいっぱい目にためて
平然を装う顔が見える。


『…』

『…』

『…泣きたくないから』

『…ん?』


既にどこかで聞いた事のある
その言葉に、一瞬耳を疑って聞き返す。


『あんな奴のせいで泣きたくないから…』


その言葉は、
俺が彼女本人から3年前に聞いた言葉
そのものだった。


そこまで我慢する彼女。


なんでだよ。

俺いんじゃん。


まだかよ。


いい加減甘えてきてくれよ。


泣いてくれよ。


『…本当頑固』


思わずそう口にすると、
彼女は下唇を噛んでさらに俯いた。


もうなんでもいい。


彼女が泣けるなら、
何でもいい。


彼女の為なら、
何でもいい。


彼女の隣に座り直した俺は、


『じゃあさ、俺のせいで泣いてよ』


自分でも笑えるくらいに
意味分からない言葉を彼女に告げた。


『…は?』

『俺のせい』

『…意味わかんな…ッ』


案の定俺の意味不明な言葉に
顔を上げた彼女の頬に
平手打ちをした。


目をまん丸に見開いて、
俺の顔を見る彼女。


赤く腫れた左頬は、
近くで見るともっと痛々しくて…


『痛い?痛いよね。
俺が今叩いちゃったんだもん』

『…』

『俺のせいでほっぺこんなに腫れちゃったね』

『…』

『泣いていいよ?』

『…ッ…』

『俺のせいだから』


優しく彼女の腫れた頬を撫でると、

彼女の目から大粒の涙が
ボロボロとこぼれ出した。


あぁ、これだ。

俺の見たかった顔。

彼女の泣いた顔。


どんなにすくっても
止まることなく溢れる
彼女の涙を撫でていた手で拭う。


『…怖かった…』

『うん』

『…怖かった…あ…』

『うん、怖かったね』


頬を撫でていた手を背中に回して、
彼女の身体を引き寄せて、

彼女が痛いって感じるくらいに
力を入れてきつく抱きしめた。


さっきのやつの事なんて
俺が上書きする。

思い出させてなんてやらない。


俺の首に回った彼女の
両腕の感覚を感じながら

もっと強く彼女を抱き締めて、


彼女の泣いた声を
いつまでも聞いていたいと思った。




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次回!「周りがどんどん結婚していくョ!自分が彼氏もいない現状への焦りよりも、ご祝儀についてと参戦日と結婚式当日がかぶることに焦っている自分がある意味すげぇなって思ってるョ!腐ってもジャニヲタ!ジャニヲタ最高!いやっふぅ!スペシャル!」やります。


サンキューサンキューでーす。