読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

不器用なアイツ。【11】

ジャニーズ 妄想 長編


---------------






嫌な目に合わせてしまったことを
謝りたくて、

午後の仕事が始まる前に
彼女に電話をかけた。


走り出した時の彼女の怯えた顔が
忘れられなくて
早く声を聞きたかったのに
彼女は電話に出てくれなかった。


もう午後の仕事始まったのかな…


不安な気持ちも少しあったけれど
仕事の邪魔をしたくなくて


また夜にかければいいや


と思って俺も仕事に戻った。



夜に電話して出てくれたら、
また公園に呼び出そう。

直接会って。顔見て。

安心させてあげよう。


なんなのあの人って怒るかな?

私すごい睨まれたよって
不貞腐れるかな?

怖かったって泣くかな?


くるくると変わる彼女の表情と、

平謝りする自分を想像しながら
少しだけ笑った。








でも…



彼女は

電話に出てくれなかった。










『…もう何日目だよ』


彼女は今日も電話に出てくれない。


あんなに毎日電話していたのに
パッタリと出てくれなくなった。


最初の何日間は、
仕事が忙しいのかな?とか
何か予定があったのかな?とか


思っていたけれど…


彼女は自分発信で
俺に電話をかけてくることはないけど、

俺からの電話に出られなかった時は
必ず折り返しかけてきてくれる。



“ごめんね”


って、謝りながら
律儀に折り返し電話をくれる。



だからこんなにも
電話に出てくれないのはきっと


彼女が故意的に俺からの電話を
取らないようにしてるから。



…なんで?


…俺なんかしたか?



ファミレスで同期が
感じ悪かったかもしれないけれど、

電話に出ない理由としては
不十分過ぎる。


何が原因だ?

なんで電話に出ない?


考えても分からないから

ただただ、
彼女に電話をかけるしかなかった。

留守番に接続されない
彼女の携帯の呼び出し音を
しつこいくらい長い時間鳴らし続けた。


毎日毎日。

夜電話をかけた。



それでも彼女は出てくれなかった。



駅で待ち伏せもした。


残業なしに帰ってこれた日は
駅の改札の前で彼女を待った。


利用者が絶対に通る改札。


その前で待ってれば会えると思った。



それでも、彼女に会えなかった。







何かがおかしい。


絶対に何かがおかしい。




嫌な予感しかしなかった。



そして遂に、




ーーおかけになった電話番号は
現在使われておりませんーー



機械的な音声が、
俺の耳に届いた。



全身の毛穴が一気に開いて、
家から飛び出した。


最初からこうすればよかった。

何でしなかったんだろう。


焦りと胸騒ぎ。

それに加えて日々の運動不足で
息を切らしながらダッシュして

階段を駆け上がって

2階の1番奥の角部屋。


扉の前に立ち尽くす。



無機質な扉。


何だろうか…


生活感が感じられない。

人が暮らしてる感じがしない。



前にシャアに殴られた彼女を送って
部屋に上がり込んだ時に見て

玄関のすぐ横にある窓は
浴室の窓だった事は覚えてる。

そのすりガラスの向こうに
シャンプーとかリンスっぽいものが
置いてあるから


人は住んでいるんだろうけど…




本当に嫌な予感しかしない。


絶対…
今この家に、

人は住んでない。



彼女が俺の前から消えた。


姿を消した。




震える手で
砕けるんじゃないかってくらいの力で
携帯を握りしめた。


『…ふざけんなよ…ッ』


握りしめた携帯を額にあてる。



俺は初めて、

人を想って涙を流した。







***





目の前にはいぶりがっこ

枝豆。

串焼き。

刺身盛り合わせ。


そして生4つ。


『はい、お疲れ〜〜』


4人でガツンとジョッキを合わせる。


『やっぱり仕事終わりは生だな!うん!』

『マツ今日仕事休みじゃん』

『わざわざ有給とって何してたの?』

『寝てた!!』

『有給をもっと有意義に消化しろよ(笑)』


仲の良いいつもの4人で、
久しぶりに飲みに来た。


なんだかんだ4人揃うのは
結構久しぶりだったりする。

何故なら、


『福ちゃん最近付き合い悪かったよね〜』


完全に俺のせい。


『身に覚えがありませんね』

『嘘言えよ』


ここんところずっと仕事ばっかで
全然遊べてなかったから
本当に楽しい。

何気なく酒を飲んで
喋ってるだけだけど

嫌なことが忘れられて
頭がスーッとしていくのが分かる。



仕事はやっと落ち着いてきたけど、
考えることがありすぎて

頭パンパンだったから
今日来れて本当に良かった。

こいつらに会えて
本当に助かった。


4人の存在に感謝しながら
酒を喉に流し込んだ。










俺はいつも飲みすぎる。


今日も飲みすぎた。

そんな時はいつも一旦店を出て、
外の空気を吸いに行く。


『…ふぅ…』


胸いっぱいに吸い込んだ空気を
吐いて、ボーッとする。


どのくらいの時間そうしていたのか、

店のドアが開く音と、
人の足音が聞こえた方に目を向けると

辰巳がこっちに歩いてきてた。


『わり、もう戻るよ』


小さく謝って、
座っていた石段から腰を上げようとすると、

辰巳は笑いながら


『俺も外の空気吸いに来たの』


って言って俺の隣に座った。


『福ちゃん連休何してたの?』

『仕事と釣り』

『極端だね』

『んなもんだろ』

『デートでもしなよ』

『誰とだよ』

『んー?マツ?』

『なんでだよ!』

『あははっ
釣り、おっきいの釣れた?』

『兄ちゃんが釣ってた』


そう言いながら、
ケータイを操作して

兄ちゃんが釣った魚を
自分が釣ったかのように
ドヤ顔で持って映る自分の写メを
辰巳に見せた。


『我が物顔だね(笑)』

『まーね』


ケータイの画面をスライドして
釣れた魚の写真を見ながら
しゃべる辰巳と会話する。


『最近さ、釣り堀行ってみたんだよね』

『あー辰巳ん家の近くにできたとこ?』

『そうそう』

『どうだった?』

『ちょっとハマった』

『マジで?』

『うん、釣り楽しいね』

『俺がハマりまくってる理由、
分かってもらえました?』

『少しね(笑)
だから今度俺も連れてってよ』

『いーよ、行こうよ』

『でもルアーとか…あッ…、』


隣に座っていた辰巳が
いきなり跳ね上がった声を出した。


『え、何?』

『いや、何でも…』

『何だよ』


笑いながら問いかけても、

苦笑いをしながら
煮え切らない態度をとる辰巳に
疑問は膨らむばかり


『え、本当になんなの?』


なんだかもどかしくなって
少し強めの口調になってしまった俺に


『…コレ、さ…』


辰巳が目の前に差し出してくるのは
さっき辰巳に渡した俺のケータイで、


そのケータイの画面に映っているのは…


『○○ちゃん…だよね?』



紛れもなく彼女だった。



首から社員証をぶら下げて
月明かりの下でドヤ顔でピースする
笑顔の彼女。




魚の写真に紛れて、
表示されてしまったらしい。


『写真暗くてよく分からなかったけど
コレ、○○ちゃんだよ…ね?』


辰巳の視線から逃げる俺の口元に
意味不明な笑みが現れる。


『こんなのもあるよ』


原因不明の笑みのまま、
辰巳にまたケータイを渡す。


その画面に映るのは


『○○ちゃん…』


白ワンピースで真っ赤な海の前に立つ、



彼女。



『福ちゃん…』


彼女の写真を眺めていた辰巳が口を開く。


『言おうか悩んでたんだけどさ…』

『ん?』

『福ちゃん、今日ずーっと
ケータイ気にしてるよ?』

『…え?』

『やっぱり自覚なかったんだ…』

『……』


本当に全く自覚がなかったから驚いた。


辰巳が返してきた
自分のケータイを強く握る。


『…福ちゃん…?』

『……』

『誰からの連絡待ってるの…?』

『……』

『どうしたの?』

『……』

『…ケンカ』

『……』

『…ケンカでもしたの…?』

『……』

『…○○ちゃんと、』

『…違う』

『…ん?』

『消えたんだよ』

『…なに?』

『急に消えたの、あいつ。』

『…消えたって?』

『そのまんまー』


笑いながら答えるしかなかった。


『大事にしてやろうと思ってたのになぁ』


項垂れながらも、
やっぱり手の中のケータイを
気にする俺に
辰巳はそれ以上何も言わなかった。









辰巳に言われて気づいた。

本当はずっと彼女から連絡が来るかもって
思っていたことに。


『ごめんね、福田くん』


って言いながら電話をかけてきて…


番号変えたんだ、

ちょっとここしばらく忙しかったんだ、


って言ってくれるんじゃないかって

女々しく待っていた
自分がいた事に気づいた。



でも、もう3ヶ月近く経つ。

そうなると、

淡い期待も薄れていく。


もう彼女から
俺に連絡が来ることはない。

そう思うようになってきた。


だから、


『福ちゃん、人数合わせでいいから
来てくれないかな?』

『全然いいっすよー』


先輩からの合コンの誘いに
そう返事したのは、

彼女への当て付けと
他に目を向けるための
自分なりの精一杯の強がりだった。







だけど…



笑えるくらいにつまらない。


笑えるくらいに馴染めない。


笑えるくらいに酒が美味くない。


気を使いながら女の子と会話して
好きな酒も飲めなくて

これで金とられるなんて
なんか腑に落ちねぇなー

普段ほとんど行かない合コン。

やっぱりいつもの4人と
飲むのが1番楽しいな…

なんて思いながら
テーブルの隅っこで
一人で酒を飲む俺のところに


『…隣、いいかな?』


1人の女の子が声をかけてきた。


『1人で寂しくない?』


こっちが返事する前に笑いながら
俺の隣に座ってきたその女の子は
グラスにオレンジが刺さった
グラデーションが綺麗な
いかにも“可愛らしい”お酒を飲んでいた。


こういう場で飲むべき
飲み物を知ってる…って感じ。


そんな印象を受けた。


『名前なんて言うの?』

『福田です』

『それはさっき自己紹介で聞いたよぉ、
下の名前!』

『……悠太』

『ゆうた?』

『…ん』

『ふーん、じゃあゆうちゃんだ!』


…あぁ、ダメだ。

気が滅入る。



こんな事するなんてどんな女だろうって
興味本位で女の子の顔を見てみると

案の定男にモテそうな可愛い顔をしていた。


自分の方を見てきた俺に
何かを勘違いしたのか、
その女の子はにこやかに笑って
俺に身を寄せてきた。


『お酒強いんだね』


その近さに少しだけ身を引く。


…なんでこんな簡単に
人にくっつけるんだ。


無表情のまま、女の子に


『俺、帰ろうかな〜』


と、伝えると


『え、』


と小さく漏らして
2秒ほどフリーズした。


『せんぱーい、俺失礼していいですか?』


ノリの悪さ全開で
誘ってくれた先輩に声をかける。


元から先輩は、俺が合コンに
あまり参加しない人間だって知ってたから
いーよいーよ、
来てくれてありがとー!
なんて軽く言いながら手を振ってくれた。


店の外に出て、
駅までの道のりを歩いていると

いきなりチリンと
チャリのベルを鳴らされた。


振り返るとそこには、
サビだらけのチャリに乗った
コンビニ帰りであろうマツがいた。


『イエイイエイイエイ』


そのマツのテンションに
少しだけ気が緩む。


『…うるせぇよ(笑)』


言われてみれば今日飲んでた場所は
マツの地元がある場所だった。


『何福ちゃん、飲んでたの?』

『おー』

『のくせに全然酔ってないね』

『まーね』

『飲むなら誘ってよ!
今日俺暇だったのに!』


と、言うマツの自転車のカゴに
バックをぶち込みながら


『今日合コンだから誘えなかったんだよ』


と、笑いながら言うと

マツがいきなりその場に止まった。


『…ん?』


マツが止まった事に気づかず、
数歩歩いてしまった俺は
後ろに振り返りながら


『どした?マツ?』


声をかける。


すると、マツがハンドルを握る手を
震わせながら


『合コンなんて行ってんなよ!!!』


いきなり叫んだ。


『…は?』

『辰巳から聞いたよ!
福ちゃんには言うなって言われてたけどな!』

『…なにを』

『○○ちゃん見つけたら
とっ捕まえといてって!!』

『…え…』

『また2人が仲良く出来たらいいねって!
話してたのに!!!』

『……』

『なのになんで福ちゃん本人が
そんなことしてんだよぉ!!』


どんどん声が大きくなるマツは、
カゴに入っていた俺の鞄を
地面に投げ付けた。


『福ちゃんなんて知らねえ!!!』


そう叫んでチャリで爆走していく。


その場に残された俺は、
少しの間ポカンとしてから

地面に投げ付けられた
自分の鞄を拾い上げた。

パンパンと、鞄についた砂を叩き落とす。


…俺、そんな気使われてたんだ…


なんとも言えない気持ちになって
また立ち尽くす俺のケータイが震える。

画面に表示されてるのは
さっきチャリで爆走していったマツの名前で、


『ごめん!福ちゃん!
鞄投げちゃったけど中になんか
大切なものとか入ってた!!??』


電話の向こう側で
めっちゃ慌ててた。


大爆笑の俺。


『ないよ』

『あー良かったぁ!良かったぁ!』

『ははは』

『……』

『……』

『…福ちゃん』

『なんだよ』

『言いすぎた、ごめん。』

『マツは何も悪くねぇだろ。
俺だよ。』

『…グズッ』


鼻水をすする音が聞こえて、
またしても俺は笑う。


『マツ、お前泣いてんの?』

『福ちゃん、俺ね、』

『おー』

『福ちゃんと○○ちゃんが
仲良くしてるの見てるのが
大好きだったんだよ…』


涙声のマツにそう言われて
何も言い返せなくなった。


『……』

『だから早く○○ちゃん見つけたい』

『……』

『俺頑張るから…』


マツの気持ちをありがたく思いながら
申し訳なく思う。


俺だって彼女を
思い出なんかにするつもりはない。



でも、もう俺はどうしたらいいか
分からない。


だからマツにも特に何も言えなくて
とりあえず小さく

『サンキュ…』

って
お礼を言ってから電話を切った。



最寄りの駅について、
改札を抜けると、

ふと公園が目に入った。


…あいつどこにいんだよ…

会いてぇなー…



星が嫌味なくらいに
明るく光る夜空に向かって

フォー、と吠えてみた。






--------------