さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

ヤンキー岩本くん。【4】

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ドテッ



『ってぇ〜〜…』

『…うわっ』


踊り場に着いて何もないところで
転んだあたしをふっかが少し引き気味によける。


『なんで何もないのに転けるの』

『何かあったんだよ、きっと』

『どう見てもないよ』

『心が綺麗な人にしか見えない何かなの』

『○○ちゃん絶対綺麗じゃないでしょ』


笑いながら階段に座るふっか。

1発殴ってやろーかなこいつ。


岩本くんは今日も購買に寄ってから
来るみたいで、途中で会ったふっかと
一緒に歩いてここまで来た。


…確かにあたしは性格良いとは
言えないかもしれないけど!!!!


汚れたスカートをパンパン
叩きながらふっかを睨んでいると、


『照も言ってたよ、よく転ぶって』

『…誰が?』

『照が』

『…誰を?』

『○○ちゃんを』

『…なんて?』

『よく転ぶって』


あたしがいないところで
あたしの話をされていた事に驚く。


『あいつ可愛いとこあるよな、とも言ってた』

『え!?なんて!?』

『あいつ可愛いとこあるよなって』

『もっと不機嫌っぽくして言って!!
もっと声低くして言って!!
もっと岩本くんっぽく言って!!
ハイ!!』

『…もうやだこの人。』


デカイ声でそう呼びかけるあたしに
ふっかがなよなよと項垂れながら言う。


…なんだよ、ヤンキーめ。

女らしいところ感じたことない
みたいな言い方しやがって!

あたしのこと可愛いと
思ってんじゃねーか!


やーい!

やーいやーい!

ヤンキーやーい!


『てゆーか、○○ちゃん。
いつからそんなに照のこと好きだったの?』

『…は?』


岩本くんが購買から帰ってきたら
しこたま馬鹿にしてやろうと思ってた
あたしにかけられた
いきなりのふっかのその発言に、

口も目も鼻の穴も
まん丸に開けたまま動けなくなった。


『え!?気づいてなかったの!?』

『は!?え!?何が!?』

『そんなに分かりやすくしといて!?』


あたしと同じくらいに
口も目も鼻の穴も
まん丸に開けたふっかと見つめ合う。



あたし、が?


好き?


誰、を?


好き?


岩本くん、を?


好き?




『はぁぁぁああんんん!!??』
『えぇぇぇえええええ!!??』



踊り場にこだまするあたしとふっかの
重なった大声。


目の前にいるふっかの
あんぐり開いた口の中に
咀嚼されたポテチが見える。


汚い。


でもそんなこと今はどうだっていい。


にわかには信じがたい。


本当にありえない。

そんなんありえない。
そう思うけど、


『何してんだ?お前ら。』


今日も購買でチョコプリンを
買ってきた岩本くんが、


目の前に立って
あたしの顔を覗き込んでくる岩本くんが、


『2人ともスゲー顔してんぞ。』


キラキラして見えて仕方ない。






…嘘だ。

いつからだ?


いつから…いつから…


ダメだ!思い出せねぇ!


でも、確かあたしのタイプは、

カッコいいというより可愛い感じで、
あんまり背も高くなくて、
周りから愛されるような愛嬌のある…


『何見てんだよ』


間違いなくこんなヤンキーでは
なかったはず。


『チョコプリン狙ってんじゃないの?』


頼むからちょっと黙ってくれ深澤。
あたしは今感情の処理が追いついてないんだよ。


『お前いつもくれくれ言うなら
自分で買ってこいよ』


そう言って一口だけだぞって
岩本くんが差し出してきたチョコプリンを
いつもなら二口食べて怒られるけど

岩本くんを意識しまくる今のあたしには
食べることなんて出来なくて
いらないって断った。


断られると思ってなかったらしい岩本くんは、
その後も下を向きながら
黙々とお弁当を口に運ぶあたしに


『腹いてぇのか?』


って聞いてくるんだけど
顔覗き込みながら聞いてくるから
その近さに、また余計無口になった。







なんか最近、岩本くんが変。

何が変なの?って聞かれたら
答えられないんだけど

とりあえずなんか変。

いつも通りの岩本くんに違和感を感じる。



そんな岩本くんが気になって、


『今日どーせ暇でしょ?カフェ行こ』

『なんて可愛げのない誘い方』


放課後岩本くんには内緒で
ふっかと2人でカフェに来た。



やっぱりソファ側がいいらしいふっかのために
最初から椅子側に座ってあげて、
注文した飲み物が届いてから
あたしは口を開いた。


『ねぇ、ふっか。』

『なんでしょ』

『岩本くん大丈夫?』


あたしのその言葉に、
身体がピクンとゆれたふっかに

マズイこと聞いたかも…

って不安になって、
なんか最近岩本くん変じゃない?
って聞こうとしたら、


『照、○○ちゃんに話したのかぁ…』


ふっかが話し始めたから
言葉を飲み込んで耳を傾けた。


『まぁなかなかありえない話だよね』

『……』

『確かに昔付き合ってたって言っても』

『……』

『あんなのほっとけばいいのに』

『……』

『優しいっていうか優しすぎるっていうか』

『……』

『それが照のいいとこでもあるけどさ』

『……』

『さすがにねぇ』

『……』

『○○ちゃんもそう思わない?』


ストローをくわえながら
ふっかがこっちを見てくる。


話してる意味が、
分からないようで分かる。

て言うか、分かりたくないのに
分かっちゃう。


ふっかが口にした


“昔付き合ってた”


元カノ。

岩本くんの、元カノ。



それが、岩本くんが最近変な理由。



『○○ちゃん?』

『…なに?』


不機嫌さ丸出しで聞き返す。


『どういう風に照から聞いたの?』


岩本くんが自分のそういう類の話を
ふっか以外にするのは珍しいらしく、
どんな風に話したのか聞きたがる。


『聞いてないよ』

『…へ?』

『岩本くんから何も聞いてない』

『…え?』

『ただ最近変だなって思ったから
ふっか呼び出したの。』

『…え、何も言われてないのに
照が様子変って気づいたの?』

『うん』

『…へーぇ…』

『明らかに変だったもん』

『…そう、だねぇ…』


何かを考え込むように
ストローをつまんで氷を突くふっかは


『てか元カノが何?』


あたしの声にビクッと
思いっきり体を震わせた。


『…ん?』

『元カノが何?』

『…あれ?俺なんか言った?』

『ここまで来てソレは無しね』

『…うぅ…』

『元カノが何?』

『……』

『……』

『…そんなに睨まないで…』


あたしの強い視線に
ついに観念したのか、

ただでさえ狭い肩幅をもっと狭くして


『俺から話していいか分からないけど…』


って小さく前置きをして
ふっかが話してくれたその話は




おおきな岩本くんの、

ちいさな恋のお話だった。





岩本くんには、
高校1年から2年にかけて
半年ほど付き合っていた子がいたらしい。


その子は中学の時の同級生で、
岩本くんはその女の子のことを
中学の頃からずっと好きだったらしい。


高校に進んでそれぞれ別の高校に
進学してからも
岩本くんのその子への想いは続いていて

高1の冬にやっと想いが届いて
付き合えることになったらしい。


やっと想いが届いた岩本くんは
それはそれはその子を大切にして、
周りからも

“お似合いだね”
“そんなに大切にしてもらえて羨ましい”

なんて言われてて、
岩本くんの親友であるふっかも
それを見ててすごく嬉しかったらしい。


…でも、彼女を大切にしてた
優しい岩本くんはその子に



二股をかけられた上に振られたらしい。




ーーーそして本題はここから。



もう昔のことだし、
それなりに踏ん切りつけて
立ち直った岩本くんに、


その元カノが最近連絡してきてるらしい。



『相談したいことがある』


って、
連絡がきてるらしい。


何の相談かは分からないけど、
優しい岩本くんはしっかりとその子の話を
聞いてあげているらしい。


ふっかも最近岩本くんが変な感じがして
どうしたか聞いてみたら、

その子から最近連絡が来ていて、
相談に乗っている…と、

そう返事が返ってきたらしい。





…どこのビッチだ、おい。




『……』

『……』

『…○○ちゃん…?』

『なに』

『顔怖い…』



目の前のオレンジジュースを
ストローを使わずに一気飲みして、
空のグラスを勢いよく
テーブルに置いたあたし見て


ふっかは白い顔をもっと白くさせた。




あんなに優しい岩本くんを、
そんな目に合わせたビッチを

あたしは絶対好きになれない。



岩本くんが昔好きだった人だとしても

あたしは絶対好きになれない。




ふっかに奢ってもらって、
家に帰ってからも

顔も見たことない、

岩本くんの元カノとやらに
あたしははらわたが煮えくり返って
仕方なかった。










朝、教室に入ってきた岩本くんに


『おはよう』


って挨拶した。

そしたら優しく笑って


『はよ、』


って言ってきてくれた。


その笑顔に1度はフワッと
心が軽くなったけれど、

すぐ自分の席に着いた岩本くんは
ずーっとケータイをいじってて

またあたしの心に影が差した。


違うかもしんない。

ふっかとかと連絡とってんのかもしんない。


そう思おうとするんだけど、
ケータイを見つめる岩本くんの顔が
少し険しくて…


朝のHRが終わった瞬間に
ケータイ片手に教室を出て行く岩本くんを見て

ケータイの向こうの相手が
ふっかではないと思わざる終えなかった。



ヤンキーな岩本くんだけど、
根は真面目な彼は
授業をサボるなんてしない。

なのに授業が始まるってのに
教室を出て行ったことが気になって

1時間目の英語担当の先生が
入ってくるのと入れ違いに
バレないようにコッソリ教室から出た。


廊下に出ても、岩本くんの姿は
もう見えなかったけど
どこにいるのか何となくわかった。


各教室からもれる
授業をする先生たちの声が小さくなって
聞こえなくなってきた時に、


『泣いてちゃ分かんねーだろ』


そんな声が聞こえて、
慌てて足を止めた。

あと数歩だけ歩いて左を向けば、
いつものあの踊り場に出る。


でもあたしはそこで止まって
壁にもたれて耳をすます。


『ゆっくりでいいから』


静かな踊り場にこだまする
岩本くんのその声は、


聞いたことある声なのに、
聞いたことがないくらいに優しい。



何の話してるのか気になって、
その場に立ったまま
岩本くんの声を聞いていたけど

相槌を打つばっかりで、
会話の内容は何か分からなかった。


ただ、岩本くんの声が
その優しい声がやけにイラついた。



何十分間もその声をボーッと
聞き続けていたらしいあたしは、


『…じゃあな』


っていう声にハッと我に帰った。




何も考えないで追いかけて来ちゃったから
え、このあとどうしよう…

と思いながらも。


とりあえず今ここに来ましたよ、
的な雰囲気を装いながら


『岩本く〜〜ん??』


って、声を出しながら
顔を出してみた。


そこには階段に座って
消沈する岩本くんがいて、


あたしの心臓がドクンって
大きくなった。



『…岩本、くん?』

『…あぁ』

『…どうしたの…?』

『お前こそどうした』

『教室にいなかったから…探しに来た』


本当は追いかけて来た上に
盗み聞きもしたけど、嘘をついた。


『…そうか』


今ついたあたしの嘘には
いろいろと通じない部分があるのに
岩本くんはそんな事も気にする
余裕がないってくらいの雰囲気を醸し出す。


ゆっくり歩き出したあたしが
岩本くんの横に座っても、

岩本くんは一度あたしに目を向けたけど
それでも頭を抱えたまま座ってて、


…本当に耐えられない。

…見ていられない。



元カノの相手なんてするからじゃん。

元カノなんてほっとけばいいのに。

大切にされてた事知っておきながら
二股した上に振る元カノなんて

ほっとけばいいのに。


あたしの相手だけしてればいいのに。



岩本くん隣で、
彼にとっての自分の無力さを感じていたら


『…え、』


岩本くんがいきなり
あたしの肩にもたれかかってきた。


『悪い、ちょっと肩貸して』


小さな声でそう言う岩本くんから
香水のいい匂いがする。


何でそこまでして、
こんなになってまで元カノの相手するの?


…きっとそれは、

岩本くんが今でもその子に気持ちがあるから。



どうにもならないその事実が悔しくて、
あたしは目の前にある
岩本くんの大きな手を上から包んだ。



1時間目終了のチャイムが鳴ると、
岩本くんはあっさりあたしから離れた。

同時に包んでいた手も離れる。


さっきまで感じていた温もりが離れて
少し寂しく思う。


『…悪い』


申し訳なさそうに言った岩本くんに、


『チョコプリン1個ね』


って言ったら、
思いっきり吹き出して、

ありがとなって言いながら笑って
さっきまでもたれていたあたしの肩を叩いた。

それがすごく嬉しかった。


『お前も授業遅刻すんなよ』


って言って、先に教室に戻っていく
岩本くんを見送ってから

ゴロンとその場に寝っ転がる。


背中に当たる階段が痛い。


…授業なんて、受けられる心境じゃない。



どうやらあたしはやっぱり
岩本くんの事が好きみたい。

それも、相当に好きみたい。



『…既に失恋じゃん…』



呟いたあたしの声は
思った以上に弱々しかった。




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次回、「私、ケータイのメモ機能のところにお話書き溜めておいてるんです。それでそのメモ見ながらはてなブログに文章にしながら書く。って言うのが流れなんですけど、今回のこの岩本くん書いてる最中になんかバグって全部吹っ飛んじゃったんですよ。それはそれは頭真っ白で、え?嘘。全部飛んだ…?え、え、え、どうしよ、まだ書いてないお話ゴマンとあったのに…嘘でしょ…??え…え…。ってなってるところです。辛いです。ガチで泣いてます。えーーー全然メモに書いた内容覚えてないよーーー。どーしよーーー。しぬーーーーーー。ぎゃーーーす。スペシャル!」やります。