さう日和。

ファニーフェイスなオナゴ。ジャニーズ中心生活。

後輩の宮舘くん 〜冬〜


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風の匂いが、
少し冬を感じさせて来た頃。


宮舘くんから、
大学合格の報告が入った。




ちょうど1年前、
私が喉から手が出るほど欲しかった
指定校推薦をもらえた彼は

宣言した通り、
私と同じ大学に見事に合格した。


夏に会った時は、
『指定校欲しいんですよね』
なんて軽く言ってたのに…


まぁきっと本人は私の知らないところで
とんでもなく努力してたんだろうけど。




合格を確認した宮舘くんは
すぐに電話してくれたみたいで、

興奮気味の声は
少し聞き取りにくかったけど


『先輩、会いたいです』


って言葉だけはハッキリと聞こえた。


その言葉に、珍しく素直に


『私も会いたい』


って言った私に
ふふっ、
と笑ったその声はいつもの通り
私を少しバカにする
いつもの宮舘くんだったけれど


『いつ会えます?今週末とか…』

『ごめん!もう電車乗っちゃった』

『え…?』

『そっち行くね!』


私の突拍子のない行動には
さすがに絶句していた。


宮舘くんからの電話を受けた瞬間

私はすぐ近くの肩掛けバックに
財布だけ詰めて

コートを手に持って
弾かれるように家から飛び出した。

電話の向こうの宮舘くんの
興奮した声を聞きながら
駅まで全速力で走って、

ちょうど運良く停車していた
自分の地元へと向かう電車に乗った。


『ごめんッとりあえず切るね』

『え?ちょっ、』


電車に乗ってすぐに、
それだけ言って一方的に電話を切る。


どんな状況にいても
マナーだけは守りたい。


でも、私の手元のケータイは
久しぶりの全力疾走で
切れた息を整えて、
空いている座席に腰掛けるまで
ずっとブーブー鳴りっぱなしだった。





連絡自体はおやつの時間の
前くらいに来たんだけれど、

勢いだけで乗り込んだ電車だったから
地元に着くまで何回も乗り換えさせられて


“着く時間分かったら連絡ください”


って送って来てくれた宮舘くんに


“あと15分くらいで着きます”


って返事をする頃には
もう外は真っ暗になっていた。



今年の夏はめんどくさくて
帰らなかったから…

すごく久しぶりの地元。


改札を抜けて左に曲がって、
“西口”って書かれている文字を横目に
階段を降りて向かうのは…


“西口側にあるカフェで待ってます”


そう言っていた宮舘くんの元。


緊張と恥ずかしさを抱いたまま、
少しずつ早歩きになる私の足。


冷えて冷たくなった階段の手すりに
手を滑らせながら
最後の一段を跳ねながら降りる。





早く


早く早く







『ぎゃあ!』


走り出そうとした私の体に
いきなり後ろから誰かが抱きついてきた。


…でも、誰かなんて分かってる。


いつの間に後ろにいたのか、


中越しに感じる温もり。

私の肩に顔を埋めたせいで
頬に当たる柔らかい髪。

そして、バニラの香り。


『宮舘くん…?』


分かってはいても、
いきなり抱きつかれた衝撃で
ドクドクと音がする心臓を抑えながら
そう聞く。


『先輩』

『宮舘くん?』

『……』

『宮舘くん、どうしたの?』

『先輩…』


さっきまでとは違う意味で
心臓がドクドクと音を立てる。


『待たせちゃってごめんね』

『いえ』

『か、カフェにいるんじゃなかったんだね…』

『……』

『寒く、なかった…?』


宮舘くんの様子がおかしい。

私に巻きつける腕の力が
強くなる一方で
全然会話してくれない。


幸いにも駅には人は少なく、
私たちの行動に目を向けてる人なんて
1人もいない。


でも、この状況はさすがに
なんとかしたい。


『みや、』

『やべ、離したくない』


彼のそんな甘い言葉と共に
首筋に熱い吐息がかかって
鼻血が出そうになった。


『宮舘くん…』

『はい』

『ちょっと…1回離して…』

『なんで?』

『な、なんでって…』

『嫌です』

『…え』

『……』

『宮舘くん…』

『嫌って言ってるじゃないですか』

『あの』

『……』

『顔見たい…から、離して…』


首に回された宮舘くんの腕を
掴みながらそう言うと


『本当にずるいっすよね…』


って言いながら離れた宮舘くんは
私の体をくるっと回した。


目の前に現れた宮舘くんは、
ふてくされた顔をしていて
鼻が少しだけ赤くなってた。


『寒かったでしょ?ごめんね?』

『先輩こそ、
そんな薄着で寒くなかったですか?』

『全然平気』


夏には無くなっていた
外ハネがまた復活していて

それを見つけた途端少し嬉しくなる。


やっぱり宮舘くんといえば
外ハネだなぁ…


なんて思いながら
彼の髪型を眺めていると


『ぐぇっ』


今度は真っ正面から強く抱き締められた。


『もう顔見たからいいですよね』

『そう言うことでは』


ドキドキからなのか

宮舘くんの腕の力強さからなのか


息苦しくなって
すぴすぴと鼻息を荒くしながら
宮舘くんの背中にそっと手を回した。


『先輩が…待ってくれるなんて、
保証どこにもなかったから…』


宮舘くんがポツリポツリと話し出す。


『いつ先輩から“迷惑”とか“待ってられない”とか
言われるかすげぇ怖かった…』

『……』

『もっと会いに行きたかったし、
電話もたくさんしたかったけど…
それよりまず勉強しなきゃ
俺の成績じゃほんと無理で…』

『……』

『先輩の周りには俺なんかよりも大人で
すげーかっこいい人達がいるんだろうなとか…』

『……』

『いろいろ考えてたところに
先輩の方から来てくれたりするから…』


いつも余裕綽々で、
私を馬鹿にする態度をとる宮舘くん。

フフンって笑う宮舘くん。


そんな彼が小さく小さく
聞き取れないくらいの声で話す。


私は思わず体を少し離して
もう一度宮舘くんの顔を見た。


『宮舘くん、泣いてる…?』

『泣いてないっすよ』

『でもまつ毛すごい光ってるよ』

『泣いてない』

『鼻声だし』

『泣かせたの誰だと思って…ッ』

『あ、認めた』


私のその一言に、
宮舘くんは手で顔を抑えながら
私に背中を向けた。


私の想像なんて足元にも及んでなかった。

宮舘くんは、すごい努力してた。


不安になったりした事もあったのに
私には一つもそんな素振り見せないで。


未だに私に背を向けたままの
宮舘くんの黒のコートを
きゅっと握る。


『宮舘くん…』


もうすっかり人がいなくなった駅は、
怖いくらいに静かで、
自分の声がやたら鮮明に聞こえる。


『私、迷惑だなんて
一度も思ったことないよ』

『……』

『待ってられないなんて思ったこともない』

『……』

『それに、宮舘くん
ちゃんと毎日連絡くれてたじゃん』

『……』

『人の食生活に
ケチつけてばっかだったけど…』


手を伸ばして、腕を掴むと
宮舘くんは素直にこっちに振り返ってくれた。


『宮舘くん』

『…はい』

『大学合格おめでとうございます。』

『……』

『よく頑張りました』


この言葉は、
去年私が宮舘くんからもらった言葉。

すごくすごく嬉しかった言葉。


そっくりそのまま拝借してみた。


もうどんなに言い繕っても
完全に“泣き顔”の彼の顔に
思わず笑いがこみ上げる。


『宮舘くんでも泣くんだね』

『先輩俺のことなんだと思ってるんですか?』

『んー、ロボットかなんか?』

『何言ってるんですか』

『あははっ』

『俺より早く生まれたくせに…
しっかりしてくださいよ』


泣いたことが恥ずかしいのか、
どんどん憎まれ口になる。

そしてそれがまたおかしくて
ニヤニヤする私を
宮舘くんがまた抱き締めた。


初めてこんなに宮舘くんに触れられて
なにをどうすればいいのか

恋愛経験がゼロに等しい私は
てんてこ舞いになる。


そんなことお構いなしの宮舘くんは
左手で私の背中を強く抱き締めて
右手で私の頭を優しく撫でて


『先輩』


今まで聞いた中で1番と言っていいほど
甘くてとろける声で、


『好きです』


想いを告げてくれた。


『大好きです』

『……』

『待っててくれてありがとう』

『……』


もうメロメロに溶かされて
ぽわんぽわんしている私の顔を
宮舘くんが覗き込んでくる。


『先輩…』

『…ふぁい…』

『キスしていいですか?』

『へ!?』

『キス』

『ここで!?』

『ここで』


いいですか?って聞いてきたくせに
もう決定事項のようで、

彼は私の髪を耳にかけて
その力強い瞳に私を映す。


『え、ちょっと…あの、』

『先輩』

『は、はい!』

『目、つぶってください』





もう逃げられない状態。


周りに人はいない。


もう少ししたらまた電車が到着して
人で溢れてしまうかも。


ていうか今もこの状況を
どこかで誰かが見てるかも。


しかもここは地元。


知ってる人に見られてるかも。


中学の同級生とか。


近所のおばさんとか。


仕事から帰って来た
ウチのお父さんとか。




なーんて、

たくさんのことが頭を駆け巡ったけど…



私はもう一度、
宮舘くんの背中に手を回して

ゆっくりまぶたを下ろした。


真っ暗になった視界の中で

優しく笑う声

バニラの甘い香り

身体に触れる腕


たくさんの宮舘くんを感じる私の唇に

彼の唇が重ねられた。



すごく長い間だったかもしれない。

でも本当は

すごく短い間だったかもしれない。


全然記憶にないけれど、
宮舘くんの唇が離れた瞬間に

私は


『…ふぁぁ…』


とか何とか、

情けなすぎる声を出しながら
腰から砕けそうになった。


『あぶねっ…!』


抱きとめながら支えてくれた
宮舘くんにしがみつく。


『先輩…?』

『ごめん、なんか力抜けちゃって…』

『何それ。可愛すぎません?』

『私は情けないです』

『可愛いからいいですよ』


どこまでも甘い宮舘くんは、
私の手を握りながら歩き出す。


『本当にまさか先輩の方から来てくれると
思わなかった。』

『なんか…衝動的に…』

『嬉しかったです、すごく』

『あ、ははは…』

『送ります。帰りましょ!』

『うん、ありがと…』


夏の時とは違う、
指を絡めた繋ぎ方…

いわゆる、恋人つなぎで歩く。


『宮舘くん』

『はい?』

『私も宮舘くん大好きです…』


これだけは伝えとかなきゃ…

と思ったけど完全にタイミングを間違えた。


それでも宮舘くんは優しく笑って、


『俺の彼女になってくれますか?』


って聞いてくれた。


ヘドバン並みに頷くと、


『めっちゃ可愛い彼女出来ちゃった』


なんて言うから
ただただ、顔が赤くなった。



来年からは

宮舘くんと

どんな生活が待っているんだろう。


真っ黒な空に綺麗に映える月を見て

緩む口元がおさえられなかった。









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宮舘クーーーン!!!

亀梨ゲストに来たねぇ!

良かったねぇ!嬉しかったねぇ!


だーっしゃっしゃっしゃっ!